・岡本綺堂「影」(6)
9月18日付(59)に述べたように、本作を初出誌で読んだとき私はかなりがっかりしました。そして9月17日付(58)にも言及した安藤鶴夫の「凡作」との評に納得したものでしたが、一旦本作についての記事を切り上げるに当たり、本作のどこがいけないのか、メモして置こうと思います。参考までに幽Classics『飛驒の怪談 新編 綺堂怪奇名作選』の位置(頁・行)を添えました。
理由の第一は、場違いに炭焼小屋に姿を現す「芸妓おつや」です。
華やかな女形を出そうと考えて、木曾ではなく、熱海に近く236頁8行め「山の中と云っても、里は近い」場所が設定されたようですが、やはり全く場違いな存在です。――何故、夜、炭焼小屋に熱海の芸妓が訪ねて来たのかは、243頁11行め「主人と衝突し」て、244頁1〜2行め「稼ぎ時に五六日も家をあけて、些っと/主人を困らせて遣*1」ろうと思い付いたからで、4行め「小田原」の「自分の家」では、5行め「直ぐに追手がかかる*2」し、余所に行く金もないので、249頁8行め「遠縁にあたる」重兵衛の炭焼小屋で「五六日隠まって貰*3」おうと云う事情が設定されてはいます。そして、こんなことを本人にぺらぺらと説明させることで、おつやが気が強く、口数が多く、思ったことをすぐ喋ってしまうような人物であることが、観客にも分かります。
しかし、相当鬱陶しいです。重兵衛にも、250頁7行め「(苦々しそうに。)どうも騒々しいな。‥‥*4」と煩がられる始末です。
第二は、目に見える形で怪異を演出してしまったことです。確かに昨日引いた東雅夫「編者解説」に云うように「なんら具体的な怪異」は「登場し」ません。しかしながら、一瞬ですがはっきり見せています(多分)。(以下続稿)
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鬱陶しい女性登場人物と云うことで、2015年12月17日付「Agatha Christie “Death on the Nile”(2)」の前置きに述べた Tuppence を思い出してしまいました。さすがにおつやは Tuppence ほどではないのですが。
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【9月23日追記】
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