瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

校舎屋上の焼身自殺(6)

・鶴川学「恐怖の"焼身自殺実況ビデオテープ"」(4)
 昨日の続きで、前回触れた、2項めに引かれている「東京近郊のG大」に伝わる話を見て置きましょう。153頁3〜8行め、

‥‥。東京近郊のG大(こちら/も美術系大学)を卒業した女性は、かつて、T大学で語られる自殺ビデオと、細部のディティールの/似た話を在学中耳にしたという。
 「卒業制作を苦にして焼身自殺したという話は、私の通っていた大学でもありました。自分の通/う校舎とは別の都内の校舎から絵画をやっていた生徒が悩んで自殺したということでした。10年/以上前だと思いますけれど」。‥‥


 前回引用した中にも「ディティール」とありましたが、detail は普通ディテールで、発音に寄せるとすればディーテイルとするべきでしょう。それはともかく、続いて鶴川氏は前回引用した時期についての見当を示した後、この項を次のように纏めます。153頁11〜13行め、

 しかし、自殺ビデオとの関連を想起させるような事件がT大で起こった形跡は確認できなかっ/た。だが、その矛先を他大学へと向けると、事情は変わってくる。前出の女性の出身校であるG/大で、自殺ビデオを想起させる事件が実際に起きていた。

として、これがもちろん、例の女子美術大学の事件なのです。――この女性がいつ頃在籍していたのか、やっぱり分からないのですが、事件後に開校した相模原校舎で4年間を過ごしたので杉並校舎のこの事件について、本当に要点しか聞いていない(或いは、聞いても忘れてしまった)もののようです。そして、鶴川氏は女子美術大学でこの事件がどのように伝承されて行ったのか、については興味がなかったらしく、女子美術大学の、杉並校舎の方の卒業生や在校生に取材を試みた形跡がありません。飽くまでも多摩美術大学の「都市伝説」の検証が主題で、女子美術大学の方はそのきっかけとなったと思しき実際の事件があった場所以上の位置を与えられておりません。
 その実際の事件についてですが、本稿の最後、153頁14行め「一人の女子学生が屋上で灯油をかぶった……」と題する3項め(〜155頁11行め)に紹介されています。153頁15行め〜154頁6行め、

 86年1月末日――新聞報道によれば、真冬の深夜、一人の女子学生が学校の校舎屋上で灯油【153】をかぶり、火をつけ焼身自殺を図った。消防隊員が消/し止めた際に女性を発見したが、その際には絶命して/いたということだった。
 自殺した学生は周囲に「自分の目指す方向と違う」「絵/が描けなくなった」としきりにもらしていた。卒業制作/を苦にした自殺だった。


 154頁になってからの1行の字数が少ないのは、10行めまで下部に「女子学生の焼身自殺を /報じる記事      /(朝日新聞・86年1月27日)」とのキャプションを附して、新聞記事の複写が2点、掲載されているからです。ゴシック体の見出しは「女子美大屋上で/女性が焼身自殺」と「焼身女子美大生」で、本文は前者は9行、後者は10行、前者が恐らく27日朝刊でこれは154頁3行めまでの内容に、後者が恐らく27日夕刊で154頁6行めまでの内容の元になっています。
 この記事の詳細については、別に他紙の記事や、出来れば週刊誌に載ったと云う記事と比較しつつ及びたいと思っていますが、差当り、鶴川氏(及び編集部)が掲載に際して行った配慮について述べて置くと、記事本文では前者の大学名や住所、それから後者の自殺した学生の住所と氏名・年齢が、暈かしてあります。
 しかしながら、それぞれ見出しの「女子美大」がそのままになっているのはわざとなのでしょうか。(以下続稿)