今回も私の手許にある②新版、③定本、④文庫版について。
・見返し(2)
それでは②裏表紙見返しの「山賊たちのプロフィール」について、③220~221頁④300~301頁と比較して見よう。前回注意したように②には(昭和三十九年当時)と註記してあって、基本的に4人中3人が生きていた①当時の書き方のままなのだけれども、以下に示すようにそれ以降の情報を含んでいる。このそれ以降の状況に基づいた書き替えが③ではなされている。③④は改行位置と句読点の全角半角に異同があるのみ。改行位置を②「/」③「|」④「\」で示し、②の本文を元に、③及び④で書き換えられている箇所を灰色太字で示し③④の本文は註に示した。③で加筆された箇所は桃色太字で示す。③④では獲物の数は「二〇〇〇頭」のように「〇」を用いているが一々註記しなかった。また③で追加された西暦の括弧は全て半角であるが、④では鬼窪善一郎以外の3人は全角になっている。これも一々註記しなかった。
まづ遠山富士弥(1887~1968)。
山賊の頭。名猟師品衛門の三男として、幼少のこ/ろから黒部を舞台\にして猟を教|えこまれ、今まで/に*1カモシカ約二千頭、熊約百頭を獲る*2。黒部の旧/日電*3歩道は|彼が兄の兵三郎とともに人夫を指揮し/てつくらせたものである*4。\黒部の奥地で、ひとり*5で/越冬するという、*6|世人にはできないことをし\たため、/黒部の山賊として恐れられた。大町市老人会|長を/つとめた*7。\明治二十(一八八七)年生まれ。昭和四十三(一九六八)年、歿。
次に遠山林平(1901~1974)。
富士弥のいとこ*8にあたる。猟の技術や獲った獲物/の量*9など、富士弥\にまさるともおと*10|らない。とく/に彼のイワナ*11釣りの技術のすばらしさは、*12\まさに/芸術の域に達して|いたといえよう*13。体格は大きく/顔つきは丸顔\でこっけい味をおび*14、話しぶりはす/こ|ぶるおもしろかった。その後、*15\大町市平区猟友/会長などをつとめたが、*16昭和四十九(一九七四)年秋、病没し/た*17。明治三十四|(一九〇一)年、大\町市平区生まれ。
以上が見開きの右側。以下左側。
3人め、鬼窪善一郎(1914~1996)。
小男だが足は速く、常人の三、*18四倍を平気で歩き/数キロ*19先にいる熊\をよく発見する*20。|今までに*21カモ/シカ二百頭、熊百頭を獲っている*22。
現在、*23北アル\プス遭難救助隊員をつとめ*24、大町|案/内人組合の有力メンバーでもある*25。夏季は三俣山/荘にいて、多くの登山者た|ちに親しまれている*26。/\大正三(一九一四)年、大町市池田町広津の生まれ。*27現住所は長/野県北安曇郡松川町*28。
最後、倉繁勝太郎(1887~1953)。
新潟県出身だが、松本市近郊明科に住んでいた。/のち、遠山富士弥\から猟を伝授|され、大町に移り/住む。根っからの正直者で富士弥に\可愛がられた。*29/小男で丸|顔、いつもニコニコして古い民謡などを/口\ずさんでいた。とくに熊獲りにすぐれ、*30|カモシ/カ百頭*31、熊三百頭*32を仕止めている*33。
明治二十(一八八七)年生まれ、*34|昭和\二十八(一九五三)年、中風で死んだ*35。/二人の娘と孫たちが大町に住んでいる。*36
倉繁氏の紹介のみ、④での書き替えがある。また、歿年についても5月25日付(2)に見たように疑問もある。
③で遠山林平のみ「没」となっているのは②の加筆箇所を踏襲したためであろう。(以下続稿)
*1:③④なし。
*2:③④「獲っ\た」。④の2行めの読点2箇所半角。
*3:③④「東信」。
*4:③④「た」④の次の句点は半角。
*5:③④「独り」。
*6:④はここまで2箇所の読点全角。
*7:③④「務めた」④の次の句点は半角。
*8:③④「従兄弟」。しかし「従弟」とすべきである。
*9:③④「数」。
*10:③④「勝るとも劣」。
*11:③④「岩魚」。
*12:④はこの読点半角。
*13:③④「いえる」。
*14:③④「帯び」。
*15:④はこの行の読点2箇所とも半角。
*16:③④「務めた。」。③④は生まれを先にして、病没を最後に並べ替えている。
*17:③④なし。④「病歿」。
*18:③④はこの読点半角。
*19:③「㌔」。
*20:③④「した」③は次の句点半角。
*21:③④なし。
*22:③④「獲った」。③④はここで改行せずに続ける。
*23:③④なし。
*24:③④「務め」。
*25:③④「あっ\た」。
*26:③④「いた」。④は次の句点半角
*27:④はこの句点とその前の読点が半角。
*28:③④「平成|八(一九九六)\年十月、病歿」。
*29:③④は以上2つの句点全角。
*30:③はこの行の読点2箇所とも半角。
*31:④「三〇〇頭」。
*32:④「約\一〇〇頭」。
*33:③④「仕留めている」。③④はここで改行せずに続ける。
*34:③④は句点(③は半角)。
*35:③④「歿」。
*36:③④なし。