瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

伊藤正一『黒部の山賊』(8)

 今回も私の手許にある②新版、③定本、④文庫版について。
・見返し(2)
 それでは②裏表紙見返しの「山賊たちのプロフィール」について、③220~221頁④300~301頁と比較して見よう。前回注意したように②には(昭和三十九年当時)と註記してあって、基本的に4人中3人が生きていた①当時の書き方のままなのだけれども、以下に示すようにそれ以降の情報を含んでいる。このそれ以降の状況に基づいた書き替えが③ではなされている。③④は改行位置と句読点の全角半角に異同があるのみ。改行位置を②「/」③「|」④「\」で示し、②の本文を元に、③及び④で書き換えられている箇所を灰色太字で示し③④の本文は註に示した。③で加筆された箇所は桃色太字で示す。③④では獲物の数は「二〇〇〇頭」のように「〇」を用いているが一々註記しなかった。また③で追加された西暦の括弧は全て半角であるが、④では鬼窪善一郎以外の3人は全角になっている。これも一々註記しなかった。
 まづ遠山富士弥(1887~1968)。

山賊の頭。名猟師品衛門の三男として、幼少のこ/ろから黒部を舞台\にして猟を教|えこまれ、今まで*1カモシカ約二千頭、熊約百頭を獲る*2。黒部の旧/日電*3歩道は|彼が兄の兵三郎とともに人夫を指揮し/てつくらせたものである*4。\黒部の奥地でひとり*5で/越冬するという*6|世人にできないことをし\たため、/黒部の山賊として恐れられた。大町市老人会|長を/つとめた*7。\明治二十(一八八七)年生まれ。昭和四十三(一九六八)歿。


 次に遠山林平(1901~1974)。

富士弥のいとこ*8にあたる。猟の技術や獲った獲物/の*9など、富士弥\にまさるともおと*10|らない。とく/に彼のイワナ*11釣りの技術のすばらしさは、*12\まさに/芸術の域に達して|いたといえよう*13。体格は大きく/顔つきは丸顔\でこっけい味をおび*14、話しぶりはす/こ|ぶるおもしろかった。その後、*15大町市平区猟友/会長などをつとめたが、*16昭和四十九(一九七四)年秋、病没*17。明治三十四|(一九〇一)大\町市平区生まれ。


 以上が見開きの右側。以下左側。
 3人め、鬼窪善一郎(1914~1996)。

小男だが足は速く、常人の三、*18四倍を平気で歩き/数キロ*19先にいる熊\をよく発見する*20。|今までに*21カモ/シカ二百頭、熊百頭を獲っている*22
現在、*23北アル\プス遭難救助隊員をつとめ*24、大町|案/内人組合の有力メンバーでもある*25。夏季は三俣山/荘にいて、多くの登山者た|ちに親しまれている*26。/\大正三(一九一四)大町市池田町広津の生まれ。*27現住所は長野県北安曇郡松川町*28


 最後、倉繁勝太郎(1887~1953)。

新潟県出身だが、松本市近郊明科に住んでいた。/のち、遠山富士弥\から猟を伝授|され、大町に移り/住む。根っからの正直者で富士弥に\可愛がられた。*29/小男で丸|顔、いつもニコニコして古い民謡などを/口\ずさんでいた。とくに熊獲りにすぐれ、*30|カモシ/カ百頭*31、熊三百頭*32仕止めている*33
明治二十(一八八七)年生まれ*34|昭和\二十八(一九五三)中風で死んだ*35。/二人の娘と孫たちが大町に住んでいる。*36


 倉繁氏の紹介のみ、④での書き替えがある。また、歿年についても5月25日付(2)に見たように疑問もある。
 ③で遠山林平のみ「没」となっているのは②の加筆箇所を踏襲したためであろう。(以下続稿)

*1:③④なし。

*2:③④「獲っ\た」。④の2行めの読点2箇所半角。

*3:③④「東信」。

*4:③④「た」④の次の句点は半角。

*5:③④「独り」。

*6:④はここまで2箇所の読点全角。

*7:③④「務めた」④の次の句点は半角。

*8:③④「従兄弟」。しかし「従弟」とすべきである。

*9:③④「数」。

*10:③④「勝るとも劣」。

*11:③④「岩魚」。

*12:④はこの読点半角。

*13:③④「いえる」。

*14:③④「帯び」。

*15:④はこの行の読点2箇所とも半角。

*16:③④「務めた。」。③④は生まれを先にして、病没を最後に並べ替えている。

*17:③④なし。④「病歿」。

*18:③④はこの読点半角。

*19:③「㌔」。

*20:③④「した」③は次の句点半角。

*21:③④なし。

*22:③④「獲った」。③④はここで改行せずに続ける。

*23:③④なし。

*24:③④「務め」。

*25:③④「あっ\た」。

*26:③④「いた」。④は次の句点半角

*27:④はこの句点とその前の読点が半角。

*28:③④「平成|八(一九九六)\年十月、病歿」。

*29:③④は以上2つの句点全角。

*30:③はこの行の読点2箇所とも半角。

*31:④「三〇〇頭」。

*32:④「約\一〇〇頭」。

*33:③④「仕留めている」。③④はここで改行せずに続ける。

*34:③④は句点(③は半角)。

*35:③④「歿」。

*36:③④なし。