・「不思議な世界を考える会会報」(8)
それでは、問題のある典拠について見て置きましょう。次いでに話の時期についても考えて見ることにします。
【D】典拠
②233頁下段6~8行め
同20号(90年7月)●「ヤングの知っているこわい/話」(4)上田渡編 信州豊南女子短大(2)――/壁の爪あと(1) ‥‥
本書の典拠は、2月1日付「『夢で田中にふりむくな』(4)」以下に確認したように、233〜235頁「話のもとになった資料」に列挙されています。この話はその1頁めに見えています。
③25頁16~17行め
(報告者は、長野の女子短期大学生。一九八六年、上田渡氏に提出したアンケート。上田渡編/「ヤングの知っているこわい話(4)」一九九〇年七月)
本文のすぐ後に添えてあります。大学名が明らかにされていませんが②を参照することで、長野県上伊那郡辰野町の信州豊南女子短期大学と分かります。昭和58年(1983)設立で、平成12年(2000)に共学化して信州豊南短期大学と改称しています。その際に設立以来の2学科、国文科と英文科を統合して言語コミュニケーション学科としております。上田氏は現在、この言語コミュニケーション学科の教授で学科長を務めております。開学以来勤務しているのでしょうか。検索しても年齢が分からないのですが、「信州豊南女子短期大学」HPの「言語コミュニケーション学科」のページの「●学科長」或いは「●教員紹介」を見るに「國學院大學大学院文学科日本文学専攻博士課程後期満期退学」とありますから、大学院に5年以上在籍して30歳くらいで専任講師として就職したとして昭和20年代の後半(1950年代前半)の生れでしょうか。
③のみに見られる情報として、レポートの提出年が昭和61年(1986)とされていることが注目されます。昭和60年度の最後・昭和61年1~3月か、昭和61年度の4~12月なのか、それから1年生か2年生かで幅が出て来ますが、昭和60年度として1年生ならば昭和60年(1985)4月入学の3期生、2年生なら昭和59年(1984)4月入学の2期生になります。昭和61年度であれば3期生が2年生、昭和61年4月入学の4期生が1年生。
短期大学に浪人して入学する人は殆どいないと思いますし、休学その他の事情があったとも考えないこととして、すなわち2期生は昭和40年度生、3期生は昭和41年度生、4期生は昭和42年度生と云うことになります。それが7月7日付(25)に見たように「高校一年生の時」と云うのですから、2期生は昭和56年(1981)高校入学、3期生は昭和57年(1982)、4期生は昭和58年(1983)入学の、その年に聞いたことになりましょう。
地方の短期大学には、なかなか県外から進学しないと思うのですが、当時はどうだったのでしょうか。「信州豊南短期大学」のデジタルパンフレットに紹介されている、卒業生を含む33人の出身高校は、1人が新潟県(高田)の他は全て長野県です。41頁に「先輩の暮らし方」すなわち在校生の住居・通学等タイムスケジュールについて紹介して「学生の7割が自宅」「学生の1割がアパート」「学生の2割が寮生活」としています。辰野は長野県のほぼ中央に位置し、上伊那や諏訪、塩尻、松本辺りからも中央本線や飯田線で電車通学出来そうです。それ以外の3割の学生も殆どが県内なのでしょう。当時も似たような感じだったと思うのですがどうでしょうか。
これに、渡辺節子は次のようなコメントを附しています。すなわち26頁2~3行め、1行めは22字下げの桜花のマークで空けて、
不幸な出来事はこの類話では細部まできっちり仕上げられており、大場久美子というその当時のア/イドルのポスターを使うことで信憑性を高めようとしている。
と、大場久美子(1960.1.6生)に注意しています。「この類話」と云うのは、7月7日付(25)に見たようにこの話は例話「壁の傷あと」に添えられた〔類話1〕なので、このように呼ばれている訳です。――私は大場氏のアイドル時代のことは、殆ど覚えておりません。TVドラマ『コメットさん』も、小学校低学年のときで、見たことがあるような記憶が微かにあるくらいです。
放送開始35周年記念企画 大場久美子の コメットさん HDリマスター DVD-BOX Part1【昭和の名作ライブラリー 第17集】
- 発売日: 2013/06/28
- メディア: DVD
放送開始35周年記念企画 大場久美子の コメットさん HDリマスター DVD-BOX Part2【昭和の名作ライブラリー 第17集】
- 発売日: 2013/07/26
- メディア: DVD
大場久美子の コメットさん HDリマスター スペシャルプライス版DVD vol.1<期間限定>【昭和の名作ライブラリー 第17集】
- 発売日: 2018/02/23
- メディア: DVD
大場久美子の コメットさん HDリマスター スペシャルプライス版DVD vol.2<期間限定>【昭和の名作ライブラリー 第17集】
- 発売日: 2018/03/30
- メディア: DVD
④122頁12行め
(女子短期大学生/報告 常光徹)
本文に続いて、下寄せで小さく1行、このようにあります。巻末、227~235頁「話名および出典」を見るに、231頁10~11行め、上欄に「五十五 壁の爪あと」漢数字は半角、下欄に、
「不思議な世界を考える会会報」20 常光徹「ヤングの知って|いるこわい話」4 不思議な世界を考える会 一九九〇
とあります(やはり漢数字は半角)。
本文から見て③と④は同じ話、②はその書き換えですが、何故か④のみ、報告者を常光徹としています。しかし、②③からして原資料は、上田氏が信州豊南女子短期大学で学生に書かせたレポートに違いないと思われるのですが、何故④は常光氏に変えたのでしょうか。或いは、上田氏が集めたレポートを、同じ大学の先輩に当たる常光氏(学部は違う)が預かって、そのまま整理を任されて、上田氏の名前で「不思議な世界を考える会会報」に載せたのでしょうか。
少々不可解な変更として、注意して置くこととします。(以下続稿)