瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

ビートたけし『たけしくん、ハイ!』(11)

銀河テレビ小説たけしくんハイ!」シナリオとの異同(4)
 昨日の続き。
・第3回
 第2回の最後、グローブ代を稼ぐために*1父・竹次郎(林隆三)の仕事を手伝いに行った先が、好意を抱いている宮森圭子(岡崎由喜枝)の家で、圭子がピアノの稽古をしている姿を垣間見たまでは良かったが、圭子に汚れた服でペンキ屋の手伝いをしている姿を見られてしまったことでいたたまれなくなったたけし(小磯勝弥)は、父の自転車を勝手に借りて土堤で自棄気味に弁当を食べていたところ、少し離れたところに横倒しに置いていた自転車を盗まれてしまう。ちなみに自転車泥棒大泉滉)は『シナリオ』46頁下段11行め~47頁下段3行めでは「高山」と云う苗字で呼ばれている。
 宮森家に戻って来て自転車を盗られたことを竹次郎に打ち明けて、竹次郎はたけしを叱るとともに途方に暮れるのだけれども、『シナリオ』ではたけしは、37頁下段18行め「泣きながら、チラチラと圭子を見る。」ことになっているのだが、TVドラマではそんな余裕もなく、ただ情けなく泣くのである。
 そして、翌日、小学校に行かずに一日自転車を探して町を歩き回るのだが、TVドラマでは、松原組に掛かって来た電話を真利子(木の実ナナ)が受けて、たけしが学校に行っていないことを視聴者も初めて知らされるのだが、『シナリオ』ではその前に学校の場面があった。40頁下段1~17行め、

●小学校・教室

  山口先生が出席をとっている。
山 口「中岡京子さん。」
京 子「はい。」
山 口「西尾明彦くん。」
明 彦「はい。」
山 口「西野たけし君。」
  返事がない。
山 口「西野たけし君――お休みですか。」
  手をあげる太田よし江。
よし江「私、学校の近くで西野君を見ました。」
山 口「学校の近くで?」
よし江「はい。」
  牧野久が立ち上がる。
久  「ぼくも見ました。ランドセルを背負って歩い/ ていました。」
山 口「あら。じゃ……病気じゃないのかな?」


 よし江(高橋美聡)と京子(遠藤千鶴)は第6回・第8回・第13回・第14回のオープニングクレジットに揃って名前が見えており、よし江のみ第2回にも見えている。しかし、名前が呼ばれる訳でもなく、繰り返して見ることが出来ないため(私には)判別が難しい。――この、省略された場面の『シナリオ』によって、太田よし江と中岡京子と云うフルネームが判明する。牧野久がTVドラマでは伊藤久(伊藤環)となっていることは1月6日付(09)に注意した。西尾明彦君は他には登場しない。もし、この場面が撮影されていて、編集に際して省かれたのだとしたらちょっと可哀想だ。いや、太田よし江と中岡京子の2人も、はっきりそれと分かるように登場す*2るのはこの場面だけだから、もし撮影されていて、この放送を見たらがっかりしたことだろう。
 ところで、たけしのクラスだが、第2回で、学校の廊下を歩いている宮森圭子の脇にスライディングして、34頁上段11行め「見えた」と騒いだとき、圭子は12~13行め「先生 二組の西野君はいけないんでーす/(と、走り去る。)」と、――TVドラマでは台詞回し等少し違っていたかも知れないが、確かに「二組の西野君」だった。――これが何年二組なのかが、ちょっと問題になって来るのである。
 それはともかく、学校からたけしが来ていないとの電話があって、松原定子(今井和子)に用件を尋ねられて真利子が、41頁下段13~15行め、

真利子「行ってないんだって、学校に。校門の近くで/ 会った子がいるって言うから、近くまでは行った/ らしいんですけどね。(不安。)」

と言う台詞も、たけしの目撃情報も含めて省かれていた(と思う)。なくても構わないシーンであることには違いない。
 『シナリオ』では土堤でリヤカーの男に逢う場面があって、その後、兄が女友達の吉岡和子と歩いているのに出くわすが、TVドラマでは明るいうちに兄たちに会い、その後、夕方の土堤でリヤカーの男に気にされる場面になる。
 その後、竹次郎とたけしで夜の街を探し歩き、自転車泥棒の家を見付ける。『シナリオ』には、46頁上段9~11行め、

●駅裏のスラム街
  掘っ立て小屋が並び、煮込みの店の赤い提灯な/  どが目に入る。

とあるが、もっとうらぶれた町外れのスラムといった風情である。
 竹次郎が警察に突き出すと凄むと、47頁上段18行め「  女房がノロノロと起き上がる。」とあるが、TVドラマではノロノロ起き上がってはいない。(以下続稿)

*1:グローブのことは追って記事にする予定。

*2:1月12日追記】「映」としていたのを修正。