瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

ビートたけし『たけしくん、ハイ!』(34)

銀河テレビ小説たけしくんハイ!」シナリオとの異同(27)
 昨日の続き。
・第9回(2)宮森圭子②
 第9回も第7回と同じく、TVドラマでは『シナリオ』の冒頭のシーンが省略されている。114頁上段2行め~下段4行め、

●西野家・中(昼)

  真利子が、たけしの服を洗って軒先に干してい/  る。
  そのうしろに寄って来る菊。
菊  「ねえ、どうする? 真利子さん明日、たけ/ しにさ、何着せたらいいのかしらねえ。」
真利子「そんな事言ったって、着せる物なんて何も/ ありゃしないんだから。英一郎のセーターを編み直/ したのがあるから、それでいいんじゃないかしら/ ねえ。」
菊  「だけど、女の子の家におよばれだよ。」
真利子「平気よ。子供同士のおつき合いだもの。
菊  「何でまた、女の子からたけしの所にお呼び/ がかかったのかしら。それも、他の組の女の子だっ/【114上】 て言うんだろ。」
真利子「暮にペンキ塗りに行った家らしいのよ。ピア/ ノがあって、いいお家なんだって。」
菊  「へえ、ピアノがねえ。」


 真利子(木の実ナナ)は大して気にしていない風だが、菊(千石規子)は訝しがっている。確かに「他の組の女の子」宮森圭子(岡崎由喜枝)がわざわざ招ぶについては何か理由がありそうだと思いそうなものだ。「暮にペンキ塗りに行った」くらいでは納得出来そうにない。
 TVドラマは、オモチャ屋のシーンから始まる。たけしがメンコを選んでいるところに、たけしと同じく(何故か)宮森圭子の誕生日会に招ばれている松本正彦(後根宣将)が来て、プレゼントとして「四百六十円」もする縫いぐるみを買う。「西野君、何も持って行かないのか?」と言われて、帰宅早々真利子たちにプレゼントのことを言うが、真利子は「子供はそんな事しなくたっていいの。」と、取り合わない。
 116頁上段~下段6行め「●道(翌日・午前)」の場面の冒頭、上段2~5行め、

  小ざっぱりしたセーター姿のたけしが歩いてい/  る。
  新聞紙でくるんだ花束らしきものを持っている。
  いたずら仲間の健一、敏夫、久、孝三達がベー/  ゴマをして遊んでいる。

とあって、確かに「小ざっぱりしたセーター」だったけれども、長兄のセーターの編み直しであることはTVドラマでは分からなかった。
 悪友たちには「およばれ」のことは隠しているので「花束らしきもの」を見付からないようにするのだが、『シナリオ』ではそのことは自明としてか、特に断っていない。――ベーゴマをしているのは5人、健一(浅野雅博)と孝三(田村淳一郎)はTVドラマのクレジットにあったが、敏夫(堀越太郎)と久(伊藤環)はクレジットされていない。もう1人は正敏(藤原暁彦)だとすると勘定が合うのだが、どうなのだろうか。大介(仙田信也)がそこに赤ン坊を背負って現れ、ベーゴマに誘われるがベーゴマを持っていないと言って断って、脇で見ている。
 宮森圭子の家は、初登場時、通学路で会っているところからして方角は同じなのだろうけど、上記、第2回から第3回に掛けての、小遣い目当ててで付いて行った竹次郎(林隆三)の仕事先がたまたま宮森圭子の家だったと云う辺りの描写からして、西野家とは余り近くではないらしい。白いペンキが似合う木造の洋風住宅で、自室でアップライトピアノを練習しているお嬢様なのである。
 さて、宮森家に着いて呼び鈴を鳴らすと「よそ行きの服を着て髪にリボンを飾った」圭子が出て来る。『シナリオ』116頁下段13~15行め、

  たけし、見ると、女の子達の靴が並んでいる。
  たけし、自分の足を見る。素足に下駄である。
  そこへ入って来る正彦。


 『シナリオ』では下駄履きになっているが、TVドラマでは汚れた靴である。――脚本の布勢博一としては、たけしは下駄履きと云う設定だったのであろう。『ドカベン』も下駄履きだった。しかし私らの世代は幼少時、下駄を殆ど体験しなかったはずである。私は大学時代下駄履きだったけれども、キャンパス内に他にいなかったと思う。もちろん高校までは靴で、下駄など履いたこともなかった。そこを考慮して、履き慣れない下駄を初めから避けたのか、それとも小磯氏が下駄を履きこなせるか、一応テストして止めたのか。少し興味のあるところである。
 それはともかく、私は素足に下駄で東海道を踏破しようと云う妙なことを思い付いて*1、しかし全部は無理で、青春18きっぷで始発で静岡県内まで行って、毎年夏に1回、袋井~藤枝、藤枝~静岡、静岡~富士川富士川~三島、三島~小田原と歩いて、そこで中絶してしまってもう再開出来そうにない。まぁ箱根山を下駄履きで越えた人間は現代に珍しかろう。帰りはもちろん青春18きっぷで帰るのだが、帰宅しても昔のように盥の準備はないから、廊下を汚さないように気を付けながら風呂場に行って足を洗ったものだった。――だから宮森家のような洋館に、そのまま上がってはいけないと思うのだけれども。夏ほどではないとしても廊下や絨毯を汚す可能性が高かろう。
 さて、続いて松本正彦も登場するのだが、宮森圭子は男子2人よりも背が高い。(以下続稿)

*1:この体験の回想を、2017年7月14日付「下駄履き東下り(1)」に書き掛けてそのまま滞っている。