瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

白馬岳の雪女(12)

辺見じゅん「十六人谷」(5)こわでん①
 辺見じゅん「十六人谷」とこれを原作とする「まんが日本昔ばなし」の「十六人谷」について一通りの確認を終えたところで、本題である白馬岳の雪女に話を戻そうと思ったのだが、最近、やはり辺見版を元とするTV番組が制作されていたことを知った。但し衛星放送(NHKBSプレミアム)なので私の家では見られない。いや、そもそも私の一連の確認作業の切っ掛けとなった青木純二『山の傳説』を、私が某市立中央図書館の書架で手にした、ちょうどその日の放送だったので、見られる環境にあっても見なかっただろう。
 番組ホームページも現在閲覧出来ないので詳細は不明ながら、「NHKオンデマンド」では、次のように紹介されている。

こわでん~怖い伝説~
「日本は伝説の驚くほど多い国」(柳田國男)。中でも怖い伝説はそこに込められた教えとともに全国各地に残っている。ただ怖いだけではない。その裏には日本人独特の道徳心や死生観など、人々がよりよく生きるための大切な教えが詰まっていた。旅人がその物語の生まれた地を訪ね、怖い伝説とその裏側にある真実をかみしめる。

 しかし十六人谷伝説を取り上げた第1弾(2019年8月7日放送)は現在NHKオンデマンドに入っていない。現在有料で視聴出来るのは第2弾(2020年9月11日放送)と第3弾(2021年1月22日放送)の2回だけである。何か差し障りがあってお蔵入りしたのかと思ったら、8月13日 23:45 から再放送されることになっていた。2020年8月6日 16:52 にも再放送されている、――しかしやはりNHKBSプレミアムでの放送なので私は見ることが出来ない。
 もう少し詳しい番組の意図は「NHK_PR2020.09.07「ゾクッとして、教訓を学ぶ!日本各地に伝わる怖い伝説」に説明されている。これは第2弾放送に際してのPR記事で、第1弾放送に際しては、2019.08.05「日本に残る怖い伝説にはさまざまな教訓が!?」が投稿されていた。ディレクター加地克也(株式会社トスプランニング代表取締役社長)のインタビューで、その一節に、

──今回紹介する4本の話には、それぞれ何かテーマがあるんですか?
1本目の富山県黒部峡谷に伝わる「舌を抜かれた十六人の男たち」は、環境破壊について。また、福井県・飯降山の「崖から突き落とす女」は、共有財産の一人占め。長野市犀川の「人柱伝説」は、人として言っていいことと悪いことがあるという教え。石川県・金沢市の「鬼母と姉妹」は、幼児虐待にまつわる伝説です。大体30本ぐらいリストアップして、その中からこの4本を選びました。

とある。その下に再現ドラマの小さい写真が2つあるのだが、そのキャプションには、

富山県のとある谷に伝わる「舌を抜かれた十六番目の男」。地元で伝わる原題は「十六人谷」という(左)/福井県・飯降山の「崖から突き落とす女」は、山で修行中の尼さん3人のお話。地元で伝わる原題は「飯降山」。

とある。インタビューに「舌を抜かれた十六人の男たち」とあるのは仮題か単なる間違いで、放送ではキャプションと同じ「舌を抜かれた十六番目の男」だったようだ。そして「十六人の男たち」では確定しづらいが「十六番目の男」ならば、辺見版「十六人谷」か、これに基づくものに拠っていることは間違いないだろう。8月1日付(05)に引いた遠田勝の「科学研究費助成事業 研究成果報告書」よりの後の例になるが、辺見版「十六人谷」が「富山伝説の定番となり、後に出版される伝説集などにも、この辺見版が採用されていくことになる」実例として位置付けられそうである。だとするともう少ししっかりリサーチしてくれよ、と言いたくなって来る。
 注目すべきはこの「黒部峡谷」編では、声優の小野賢章(1989.10.5生)が旅人として現地を訪ねていることである。ただ「ここから先は素人では無理だというギリギリのところまで行ったんですけど、‥‥」とのことで、十六人谷には行き着けなかったらしい。そう言えば検索しても現地の画像がヒットしないし、登山家の踏破リポートみたいなものも見当たらない。――そう言えば「まんが日本昔ばなし〜データベース〜 ­⁃ 十六人谷」にも「地図:十六人谷(地図は適当)」と断ってあった。
 なお、Wikipedia「十六谷」項に、

別名を十六人谷(じゅうろくにんだに)と言う。
その昔、十六人の樵が谷にあった夫婦柳の夫柳を伐り倒した所、夜半、婦柳の精に襲われ、舌を抜かれて死んでしまったという伝承が由来。
伝承をアニメ化したものが『まんが日本昔ばなし』で、「十六人谷」というタイトルで放送され、全国的に有名になった。

とあって「十六谷」ならば地理院地図にも記載がある。黒薙川は北又堰堤の上で北又谷と柳又谷に分かれるが、その北又谷を少し遡った右岸に、猪頭山(1353m)の東南腹を流れ下って合流している谷である。しかしながらこの辺りであれば、地形図を見る限り下流の黒薙温泉から「関西電力黒部専用鉄道黒薙支線」のトロッコ軌道を歩行すれば「素人で」も(時間は掛かりそうだが)行き着けそうな場所である。もちろん谷筋に分け入るのは「無理だ」ろうけれども、北又谷との合流点までなら難なく行けそうである。――確認のためにも「こわでん」が見たくなって来た。地上波で放送してくれませんかね?(以下続稿)