瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

吉田悠軌『禁足地帯の歩き方』(1)

・吉田悠軌『禁足地帯の歩き方』2017年11月7日 第1刷発行・定価1,000円・学研プラス・175頁・四六判並製本

 本書の由来は174~175頁「封じられた場所を熱き続けるために」と云う後書きに当たる文章に説明されている。冒頭部を抜いて置こう。174頁1~7行め、

 本書は月刊ムーの連載から一部をピックアップし、加筆修正したものだ。/3年に渡る連載においては、前々から取材していたテーマを使うことも/あったが、当月の記事のためにあちこちへ飛ぶ場合もあった。
 そういった場合の元ネタは、ムー編集局宛に読者や団体から寄せられた/情報だったりするのだが、これがまた相当にオカルト・マニアックな案件/が多いのだ。自分のアンテナではひっかからない情報が多いため助かるし、/オカルトというジャンルの裾野の広さを実感できる。‥‥


 Amazon レビューに標題と内容が齟齬しているとの批判が複数投じられている。「禁足地(帯)」と云うのは吉田氏の造語なのか、以前には見なかった言葉だが、前書きに当たる2~3頁「禁断の場所へ行くということ」に拠れば「行ってはいけない」場所、と云うことになる。その「禁足地」に、私の若い時分から海外旅行ガイドの代名詞だった「地球の歩き方」みたいに「‥‥の歩き方」と付けた標題にしているので、多くのホラースポットを探訪して来た著者が、「禁足地」巡りの留意点を説明した実践的な旅行ガイドを出したのだ、と思った人が少なからずいたらしい。なぜ元になった連載のタイトル「吉田悠軌の怪処探訪」をそのまま使わなかったのかと思う。なお『地球の歩き方』は現在、学研プラス発売となっているが、本書刊行時には無関係であった。
 4~7頁(頁付なし)「目次」を見るに5章、1つの章に3~4節、合計17節が掲載されている。それから三章と四章の間、97~112頁にカラー頁「原色ルポ/奇祭」がある。用紙は本文に同じ。
 細目は、初出と対照する機会があったときに見ることとして、道了堂に関する記述と、その背景と云った辺りを見て置こう。すなわち63~95頁「三章 怪談」は4節から成るが、前半2節、64~71頁「本当にあった「消えた乗客」事件 [三和交通の怪談タクシー・横浜]」と72~79頁「不幸が連鎖する郊外の現在 [三和交通の怪談タクシー・多摩]」を取り上げて見たい。
 これは横浜市のタクシー会社のツアー企画を取り上げたものである。65頁2~10行め、

 タクシー会社・三和交通が2015年から開催している「心霊スポッ/ト巡礼ツアー」は、由緒あるタクシー怪談の歴史から生まれた企画だ。/地元の怪奇・心霊スポットに詳しいタクシードライバーを案内人に、解/説付きで様々な場所を移動していく。初回から評判は高まり、現在では/予約もすぐに埋まってしまう、私は幸運なことに、ムー編集部の取材と/して、ツアー開始前のプレ体験を味わうことができたのだった。
 ……とはいえ取材前の思惑としては「俺は『ホラースポット探訪ナビ』/の著者だよ? たいていの心霊スポットなんか知ってるもんね」といっ/た上から目線があったことは否めない。


 『ホラースポット探訪ナビ』は2017年1月25日付「吉田悠軌『ホラースポット探訪ナビ』(1)」に取り上げたが、確かに、実に多くの場所を、実地に取材している。
 それはともかく、72頁3~4行めに、

 横浜における恐怖の夜から数日後、私はまた三和交通タクシーによる/心霊スポット巡礼ツアー「多摩バージョン」に参加することとなった。

とあって、三和交通「心霊スポット巡礼ツアー」は2015年に横浜(新横浜駅発着)のみで始められ、多摩(八王子駅もしくは高尾駅発着)は2016年から開始されたので、吉田氏が取材したのは2016年夏のことと思われる。
 もちろん目下、私が注意しているのは「多摩バージョン」の方だけれども、横浜バージョンの方も一通り眺めて置こう。
・65頁「某城跡」は小机城、「トンネル」は城山トンネル、「踏切」は小机城址の東側の城山踏切(もしくは西側の水流踏切)。
・66頁「N駅」は長津田駅、67頁「H斎場」は横浜市北部斎場。
・68~69頁「裏山」はH斎場の裏山で、「東名高速」を「高架橋」で渡るとあるから山は高尾山(100.4m)である。
・69頁「若手俳優Tが事故死した現場」「若手俳優が事故死したテレビスタジオ近くの峠道」は緑山スタジオ近くの緑山峠であろう。
 この他の場所は手懸かりとなる記述に乏しく、心霊スポットに詳しくない私には良く分からなかった。
 少々気になるのは68頁上左のキャプション「 ↑ 集団自決の山へと続く高架橋。下を/東名高速が走っている。‥‥」や69頁2行め「‥‥山道入口への高架橋を‥‥」の「高架橋」の使い方で、高架橋は鉄道や道路を高いところにそれなりに長い距離、鉄筋コンクリートの支柱の上を架け渡したもので、高速道路をまたぐ、支柱もない普通の橋のことではない。これは「陸橋」である。(以下続稿)