瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

大和田刑場跡(2)

 大和田刑場跡は心霊スポットとして、工場がなくなった後にむしろ有名になったらしい。
 しかし私は心霊スポットに興味がないので大和田刑場跡のことは知らなかった。11月4日付「東京都八王子市『ふるさと八王子』(4)」に述べたように八王子には縁がなかったので、偶然通り掛かるようなこともなく、心霊スポットに行こうと云う発想もないので、これからも多分行かないと思う。
 いや、2016年3月28日付「だーくプロ 編著『多摩の怪談ぞくぞくガイド』(4)」に見た、『多摩の怪談ぞくぞくガイド』の改訂版(2001年7月)に「苦しみ抜いて死んだ怨霊がさまよう和田河原刑場跡 ……………八王子市大和田町」と題して取り上げられていたのを読んだはずなのだが、すっかり忘れていた。
 この節は4つの項に分けられている。33頁右半分は見出しで下部に「~ぞくぞく度~」として人魂マークが5点満点の4つ。左半分から2段組で、隷書体3行取りで1項め「交通事故多発の急カーブ」とあって、本文は34頁上段3行めまで。33頁下段6行めまでを抜いて置こう。

 八王子市の中心部を流れる浅川にかか/る大和田橋*1。激しく車の行き交う甲州街/道(国道20号)は、この橋の北側で右に/大きくカーブしている。そこの信号で、/【33上】とくに深夜、交通事故が多発している。
 スピードを出しすぎた車が、カーブを/曲がりきれずにガードレールに激突した/り、反対車線に飛び出したりするからだ/という。本当に、それだけが事故の原因/なのだろうか?


 そして34頁下段は「事故が多発している大和田橋北側の急カーブ」とのキャプションのある写真。これは Google ストリートビューで閲覧出来る2021年4月の写真と変わりないように見える。
 本文に戻って、――他に何の原因があるのかと言いたくなるところだが、もちろん刑場跡だからだと云うのである。
 2項め、34頁上段4行め~35頁下段5行め「事故が多発した製紙工場」は34頁上段11行めから最後まで抜いて置こう。35頁上段左半分は「かつて刑場があったあたりの浅川土手」の写真。まづ鈴ヶ森と小塚原の都内の刑場跡を挙げてその現状を略述し、

 だが、大和田河原刑場の場合、今では/なんの痕跡もない。*2【34】
 以前、このあたりに建っていた製紙工/場にはたしかに処刑者を供養する慰霊碑*3/があったのである。この工場では、死亡/事故などの大事故が多かった。とくに、/二月二十八日には必ずといっていいほど/事故が起きた。
 祟りのせいじゃないかと恐れた工場で*4/【35上】は、昭和二十九年(一九五四)、慰霊碑/を建立した。その後、毎年二月二十八日/と春のお彼岸に供物をいっぱいお供えし*5/て供養をするようになった。すると、目/に見えて事故が減ったという。

とする。これは前回11月7日付(1)に引用した『ふるさと八王子』の記述に拠ったか、或いは同一の文献に基づいているか、であろう*6。尤も、『ふるさと八王子』では年に12回ある「二十八日」のうち何故「二月二十八日」が重視されたのかを説明していなかった。
 3項め、35頁下段6行め~36頁下段6行め「目を見開いたままのさらし首が……」は江戸時代の処刑方法の解説。
 4項め、36頁下段7行め~37頁上段「さびしい怨霊がさまよう」は3項めを踏まえて、江戸時代の怨霊が未だに祟りを為すのだと解釈を進めるのである。37頁上段2行めから最後まで抜いて置こう。

 そんな囚人たちの供養を欠かさなかっ/た製紙工場だったが、その後、大手の製/紙会社に吸収合併*7された。そして、その/大手の製紙会社も倒産してしまった。
 大和田刑場の跡には、今、ビルが立ち/並んでいる。ビルが建てられるときに慰/霊碑は取り壊されてしまった。
 供養されることのなくなった怨霊*8たち/が、さびしさのあまり、新しい死者を招/き寄せるので、交通事故が多いのかもし/れない。そうして、いよいよ死霊*9が増え/ていく……大和田橋の北側のカーブは、/よほど注意して運転しないと危ない。


 ここで不満があるのは、製紙工場がなくなった時期を書いていないことで、私もまだ詳しい経緯を確認していない。この記述を材料に、これから調べを進めて行くこととしたい。なお37頁下段は大和田橋付近の略地図で「浅川」に架かる「大和田橋」、その「大和田橋北詰」と「大和田橋南詰」に信号のマーク、この通りが「甲州街道」で「立川→」と「八王子→」の文字がある程度、どこが製紙工場の跡地なのか、示していない。わざと示さなかったのだろうけれども。(以下続稿)

*1:ルビ「あさかわ/おお わ だ ばし」。

*2:ルビ「こんせき」。

*3:ルビ「 い れい ひ 」。

*4:ルビ「たた」。

*5:ルビ「こんりゅう/ ひ がん」。

*6:本書は参考文献を殆ど挙げないので、何に拠ったかは分からない。

*7:ルビ「きゅうしゅうがっぺい」。

*8:ルビ「おんりょう」。

*9:ルビ「 し りょう」。