瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

祖母の蔵書(05)和田はつ子

 私には美食の趣味がない。だからコロナで行動制限が云々されても、全く精神的なストレスを感じなかった。――バブル期に大阪で勤めていた父が連日の接待で、交際費だけでなく私費でも派手に飲み食いしていて、月の小遣いが楽楽精算の部長の10倍だったらしく*1、元々が野菜と魚の好きな人なのだが、そういう店ではそんな料理は出ないので、家では母に野菜と魚中心の料理を作らせて、だから10代の私は余り牛肉を食べたことがなく、別に食べたいとも思わなかった。小学生の頃は地方都市勤務で、自家用車(カローラ)があって、週末にはドライブに出掛け、その帰りには(もうどんな店だったか、余り覚えていないが)飲食店で夕食を摂ったものだったが、それ以降は東京もしくは大阪で勤務するようになり連日帰りが遅く、週末に家族でドライブなどと云う余裕もなくなって、自家用車のバッテリーが上がってしまうので古い知人に譲ってしまった。もちろん家族で外食などといったことはまるでなく、私も別に行きたいとも思わなかった。料理上手の母の薄味の家庭料理に慣れたせいか、味付けの濃い外食を余り美味いと思わなかったせいかも知れない。
 別に、そういうことがまるで嫌だとか、宗教的(?)信念があるとか、そんなことでは全くなくて、機会があれば、そういうところに行って、美味しく飲み食いする。でも、機会がなければ、別に行きたいと思わない。大体、大学院に進学するときに、文学研究では将来金持ちになる見込みはないだろうからなるべく食べ物の贅沢はしないと決めたのだった。酒も煙草も、健康のためと云うこともあるが金が掛かるから嗜まなかったのである*2。それでも職場の飲み会などには食べる方専業だが努めて参加するようにしていたのだが、もう年だし、これからは参加しないつもりである。やっぱり金はないし、コロナも収まらないまま経過しそうだし。
 だから、料理に着眼した時代小説が流行っているらしいことは知っていたが、TVドラマになっても見なかった(そもそも時代小説を読んでいないのだけれども)。しかし、祖母は美食家で、馴染みの料理屋で食事をするのが好きで、元気だった頃には月に1度、御相伴に与っていた。しかし、何が食べたいと云うこともなく、一通り注文して、少食の祖母の食べ残しまで引き受けてとにかく満腹になっていたのであった。
 それはともかく、そんな祖母は昨日取り上げた高田郁『みをつくし料理帖』と、次のシリーズを揃いで持っていた。尤も、これも通し番号を分かり易く打っていないのでカバー裏表紙の紹介文で確認するしかない。――「わ 1-1」がないので最初、不揃いなのかと焦ってしまった。
・ハルキ文庫時代小説文庫『料理人季蔵捕物控』角川春樹事務所
わ 1-2『雛の鮨』2007年 6月18日第 一 刷発行・2011年 12月28日第二十刷発行・定価590円・255頁

※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「粋でいなせな/捕物帖シリーズ、遂に登場!」
わ 1-3『悲桜餅』2007年12月18日第 一 刷発行・2011年12月28日第十五刷発行・定価560円・237頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「書き下/ろしシリーズ第二弾、ますます絶好調!」
わ 1-4『あおば鰹』2008年6月18日第一刷発行・2011年1月18日第十刷発行・定価560円・219頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「/義理と人情の捕物帖シリーズ第三弾、ますます絶好調。」
わ 1-5『お宝食積』2008年12月18日第 一 刷発行・2012年3月18日第十二刷発行・定価552円・227頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「義理と人情の人気捕物帖シリーズ、第四弾。」
わ 1-6『旅うなぎ』2009年6月18日第 一 刷発行・2012年1月28日第十一刷発行・定価552円・231頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「美味しい料理に義理と/人情が息づく大人気捕物帖シリーズ、待望の第五弾。」
わ 1-7『時そば2009年12月8日第 一 刷発行・2012年1月28日第十一刷発行・定価552円・225頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「義理と人情が息づく人気捕物帖シリーズ、/第六弾、ますます快調!」
わ 1-8『おとぎ菓子』2010年6月18日第一刷発行・定価552円・222頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「大人気シリーズ、/待望の第七弾。」
わ 1-9『へっつい飯』2010年8月18日第一刷発行・定価552円・225頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「涼やかでおいしい料理と人情が息づ/く大人気季蔵捕物控シリーズ、第八弾。」
わ 1-10『菊花酒』2010年10月18日第一刷発行・2010年11月18日第四刷発行・定価552円・224頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「秋の美味しい料理と市井の/人びとの喜怒哀楽を鮮やかに描いた大人気シリーズ第九弾、ま/すます絶好調。」
わ 1-11『思い出鍋』2010年 12月8日第一刷発行・定価571円・226※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「人を想う気持ちを美味しい料理にこめた人気シ/リーズ、記念すべき第十弾!」
わ 1-12『ひとり膳』2011年3月18日第一刷発行・定価571円・227頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「人を想う切なさと/あたたかさに溢れた大人気シリーズ第十一弾!」
わ 1-13『涼み菓子』2011年6月18日第一刷発行・定価571円・231頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「シリーズ第十二弾!」
わ 1-14『祝い飯』2011年9月18日第一刷発行・定価571円・223頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「大人気シリーズ第十三弾。」
わ 1-15『大江戸料理競べ』2011年12月18日第一刷発行・定価571円・227頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「大ベストセラーシリーズ、待望の第十四弾!」
わ 1-15『大江戸料理競べ』2011年12月18日第一刷発行・定価571円・227頁
わ 1-16『春恋魚』2012年3月18日第一刷発行・定価590円・239頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「季蔵が旅に出る、大ベストセラーシリーズ、第十五弾。悪を/挫き、市井の人びとのささやかな幸せを守るために――。」
わ 1-17『夏まぐろ』2012年6月18日第一刷発行・定価590円・220頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「大ベストセラーシリーズ、待望の第/十六弾。」
わ 1-18『秋はまぐり』2012年9月18日第一刷発行・定価590円・216頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「季蔵の料理と推理と刀/さばきが冴えわたる大ベストセラーシリーズ、ますます絶好調。/待望の第十七弾。」
わ 1-19『冬うどん』2012年12月18日第一刷発行・定価590円・219頁※ カバー裏表紙の紹介文の末尾「大人気シリーズ、待望の第十八弾!」
 このシリーズは現在も継続中で、今年も新刊が出ている。しかし祖母が揃えていたのはここまでで、独居生活をしていた最後の1年である2013年にも4冊刊行されているのだけれども、見当たらなかった。但し『冬うどん』の裏表紙見返しに「ハルキ文庫 時代小説文庫 2013.6/料理人季蔵捕物控〈 シリーズ 最新刊〉」が挟まれている。表紙の書影は「〈大ベストセラー/シリーズ、〉第20弾」の『おやこ豆』で、内側に既刊19点の書影、裏表紙折返しには「料理人季蔵捕物控シリーズ/20冊目を迎えて 著者メッセージ」和田氏のカラー写真入り、裏表紙は『青子の宝石事件簿』の広告。――このシリーズはじきに増刷が掛かる人気シリーズだから、祖母が購入したときから挟まれていたとは思えない。実は祖母は続刊も買っていて、それが紛れ込んだのではないかと思われるのだけれども。
 ところで、順序からすると『料理人季蔵捕物控』の方が『みをつくし料理帖』より早いのだが「第一弾」を比べるに祖母は『みをつくし料理帖』の方を先に買ったことになりそうなので、この順番で取り上げて見た。しかしこちらの途中の巻から買い始めたのかも知れない。どんな買い方、読み方をしていたのか、今となっては確かめようがないのである。(以下続稿)

*1:だから1年めは単身赴任で、私がもし学区1番の進学校に進む見込みがあるなら更に3年間単身赴任を継続するつもりだったのだが、私に早々にその見込みがなくなったことと、余りにも父が金を遣い過ぎるのとで兄の高校卒業、私の中学卒業を機に、一家で関西に移ったのだった。

*2:そもそもは大学入学時に、当時は未成年でも飲酒・喫煙させられそうな雰囲気があって、生真面目な私はそれを断る口実として酒も煙草も苦手だと云うことにしていたのだった。――と思う。