瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

石角春之助 編輯「江戸と東京」(2)

小木新造 監修/槌田満文大串夏身佐藤健二吉見俊哉 編集・解説『復刻『江戸と東京』』第四冊
 国立国会図書館にはこの復刻版しか所蔵されていない。この復刻版も9月12日付(1)に示した卷號を見るに不定期刊行で番号が飛んでいる。しかし、これで全部であるらしい。
 377~395頁、大串夏身「石角春之助年譜・著作目録*1」は石角春之助(1890.6.18~1939.7.31)の著作目録を兼ねた年譜が392頁まで、393~395頁は「付・『江戸と東京』簡単な書誌解題」である。393頁2~5行め、

①誌名は、一九三八年一月、第四巻第一号から『新文化』と改題、同年一二月、『江戸と東京』へともどっている。
②発行状況は、次の通り。欠号となっているところは、発行されなかったものと思われるが、はっきりと確認はでき/ていない。ただ、掲載論文の継続状態からみると休刊であったようだ。(中には、第二巻第九、一一号のように「休/刊」と記載はあるものもある)
 創刊号・第一巻第一号=一九三五年一〇月一日、‥‥


 以下13行めまで各号の発行日を列挙しているが省略。14~16行め「③特集号」394頁1~5行め「④江戸・東京研究のレファレンス資料として役立つもの」6~8行め「⑤編集人」9~13行め「⑥発行人」14行め「⑦判型は菊判。」15~16行め「価格」17行め~395頁2行め「⑨表紙」3~5行め「⑩所蔵状況」は「大宅壮一文庫」の欠号と「早稲田大学図書館」の所蔵を列挙する。CiNii で検索すると関西学院大学図書館には殆どの号が所蔵されているように見えるが、他にも慶應義塾大学三田メディアセンター、日本近代文学館、神奈川県立近代文学館などに所蔵されているが揃いではない。
 ただ、大串氏が指摘するように、連載記事の続き具合や、文中に「前に書いた」云々とあって見当たらない論考や記述は、私がちらちら見た限りでも存在しないらしいから、これが全てなのだろう。
 そして、3つある解説の3つめ(360~376頁)、佐藤健二解説3◉『江戸と東京』瞥見――巻頭言と広告を読みながら――」に言及される、復刻の底本に由来と状態からしても、これは裏付けられそうである。
 佐藤氏は360頁4~8行め「はじめに」で、7~8行め「‥‥、底本とした松尾禎三氏旧蔵の尾おそろいをパ/ラパラとめくるなかで、‥‥」とあって、底本を「大揃い」としている。そして360頁9行め~366頁2行め「」に石角春之助の巻頭言、366頁3行め~371頁12行め「」に広告を取り上げて副題に挙げたポイントについての概観を済ませ、371頁13行め「」として、371頁14行め~373頁11行、

 最後に、底本とした松尾禎三氏旧蔵本について、断片的ながら気がついたことを付け加えておきたい。この底本は/古本屋を通じて明石書店が手に入れたものであるが、旧蔵者松尾禎三は、石角が名古屋の後援者として編輯後記(㉓)/で感謝を表明している人物である。装丁は保存のための合本が目的であったと思われるが、あるいは自分の手で行っ/【371】たものかもしれない。そのデザインや素材の使い方に、明らかに書物展望社斎藤昌三の影響がある。基本は大和綴/じであるが、表紙などに江戸と東京社から送ってきた粗末な造りの封筒や、時代ものの刷り物などを貼り混ぜ、変わ/った装本を施している。追悼号の斎藤の回想(㉗)によれば、松尾と斎藤は面識がないが文通での交流はあり、松尾/は荷風のものを集めているコレクターだったらしい。「文献」へのこだわりという点で、斎藤・松尾・石角の三者が/つながるのかもしれない。それゆえに珍本に属するこの大揃いが保存されることになった。
 旧蔵本には、江戸と東京の会に関連する多くの有名人が、それぞれに識語を記した記念帖のような部分が綴じ込ま/れていた。それは石角の死後に作成されたものではないように思える。石角自身の書になる短歌も綴じられ、題簽の/字もまた石角のものではないかと思われるからである。とすると、石角の生前にそこに寄せ書きをした人物たちが集/まる会合があり(おそらく『江戸と東京』に関連する何らかの会であったと思われるが)、そこに松尾が自装の合本を持参し/て、それ用に綴じこんでおいたスペースを示し、それぞれに揮毫してもらったものではないか。追悼号にはじまる第/六巻が、別装丁になっていることからも裏づけられるように思われる。


 372頁は図版「合本の寄せ書きから」で、寄書きの墨書が4頁分影印で紹介されている。それから(㉓)や(㉗)は373頁15行め~375頁12行め「注」の、373頁16行め~374頁5行め(1)に拠れば佐藤氏が仮に附した通し番号で、㉓は『江戸と東京』復活第一号、㉗は六巻一号である。
 佐藤氏の推測で誤らないとすれば、この明石書店が入手し復刻の底本とした松尾禎三旧蔵本は、関係者と云って良い人物によって発行順に綴じられ、編輯・発行人の石角春之助本人がお墨付きを与えた「大揃い」と云うことになるのである。(以下続稿)

*1:ルビ「いしずみはる の すけ」。