瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

祖母の蔵書(179)源氏物語②

 祖母は『源氏物語』に関する本を少なからず持っていた。そこで、①校訂本、②現代語訳・評釈・概要、③主題別解説・評論・エッセイに分けて整理して見る。
 『源氏物語』は、高等女学校で教育を受けた世代の女流作家が好んで取り上げている。彼女たち女流作家については、既に個別に記事にしている人もいるが、源氏については別に一纏めにして置こう。
 次の2冊は日本古典文學大系(あるか確認)と同じ仏間の本棚に収まっていた。


 これは2022年9月16日に「祖母の蔵書()源氏物語③」と題して書き掛けていた草稿の前置きで、続いて田辺聖子『『源氏物語』男の世界』と、近藤富枝『服装で楽しむ源氏物語』を取り上げていた。うち田辺氏の1冊は、他の田辺氏の源氏物語関係の著書とともに2023年6月21日付(081)に取り上げた。
 なお、日本古典文學大系『源氏物語』全5冊は2023年6月11日付(073)に取り上げている。
 次の本は2023年8月1日にメモしていた。
・文春文庫449―1 尾崎左永子『源氏の恋文』1987年7月10日 第1刷・定価400円・文藝春秋・273頁

※ 帯あり「今月の新刊」書影に同じ
 これは寝間の書棚にあった。
 近藤氏の『服装で楽しむ源氏物語』は、確か仏間の硝子棚にあったかと思うのだが、実は元版(単行本)も祖母は買っていたのである。
近藤富枝『服装から見た源氏物語昭和五七年四月二五日 第一刷発行・定価 一五〇〇円・文化出版局・193頁・四六判上製本 これは寝間の本棚にあった。
・PHP文庫 こ 35 1 近藤富枝『服装で楽しむ源氏物語2002年5月15日 第1版第1刷・定価619円・PHP研究所・249頁※ 帯あり「PHP文庫 最新刊」
 比べて見たいところだが文庫版の方は既に処分してしまった。単行本は若い古本屋が採ってくれたので遅ればせながら持ち込むつもり。
 『源氏物語』の、ある面を取り上げて解説したような本は、メモを取って祖母宅に残して来た中に、或いは整理が追い付かなくて持ち帰ったものの中にまだあったと思うので、順次ここに追加、纏めて置こうと思う。(以下続稿)

祖母の蔵書(178)井伏鱒二

 祖母は戦争未亡人となって夫の郷里に疎開したもののやはり上手く行かずに親兄姉を頼って上京して、やがて父の元部下の口利きでGHQの地図局に職を得て久しく勤めることになるのだが、その前に三兄の紹介で「家庭文化」と云う雑誌の編集部に勤めて「アメリカ人のお宅訪問」と云う記事を書いた、と云う回想を聞いたことがある。

 この「家庭文化」と云う雑誌は国立国会図書館にも所蔵されていない。検閲用に蒐集した占領下の出版物を保管しているプランゲ文庫(メリーランド大学図書館ホーンベイク図書館)蔵本のマイクロフィルム国立国会図書館の憲政資料室で閲覧出来ると云うので、祖母の話を聞いてしばらくして国立国会図書館に出掛けた折に、憲政資料室に行って見たのだが、予め申し込んでおかないと閲覧出来ないとのことで、予約を取るかと言われたが私は予定通りに行動するのが苦手(!)なので、またの機会を考えることにして、結局未だに見ていない。
 プランゲ文庫には第1巻第1号(1945年12月)から第4巻第2号(1948年3月)までが所蔵されている(第2巻第1号は欠)。
 Amazon に出品されている第2巻第6号(1946年11月)の目次には「パレスハイツ」とあるようだが、これは千代田区隼町にあった米軍住宅で、或いは祖母が書いた記事かも知れない。他には第1巻第1号が長野県立長野図書館に所蔵、また日本の古本屋に出品されており、第3巻第1号(1947年1月)が別の古書店から日本の古本屋に出品されている。――この記事に注目して研究論文でも書いてくれる篤志家がいれば良いのだが、まだそんな人は現れないらしいので、いづれ折を見て国立国会図書館にて一通り眺めることとしたい。
 それはともかく、――その頃のことだろう、やはり戦争未亡人になった跡見の同級生が生活のために阿佐ヶ谷で居酒屋を始め、祖母も其処に手伝いに行っていたのだが、跡見出のお嬢様が飲み屋をやっていると云うので当時話題になったらしい。阿佐ヶ谷界隈に住んでいた文化人たちも面白がって良く来ていて、当然井伏鱒二(1898.2.15~1993.7.10)もいたのである。しかし私は阿佐ヶ谷会の面々に特に興味があった訳ではないので根掘り葉掘り聞くようなこともなかったから、祖母が特に語ってくれたのは、――角川源義(1917.10.9~1975.10.27)が祖母たちを酌婦と軽んずるような発言をするので、それを少し窘めるようなことを祖母が言ったところ、角川氏からじゃあこの漢字が読めるか、と「薔薇」の読みを出題されたのだが、祖母は100歳を越して認知症を発症してからも施設が脳のトレーニングに出した漢字テストで「青梗菜」以外全問正解、他の入所者の追随を許さない断トツの好成績だったくらいなのでもちろん直ちに読んで差し上げたところ、「エライもんだ」みたいに感心したことがあった、と云う出来事くらいである。
 そんな訳で、井伏氏の小説は、どうも好みではなかったらしく見当らなかったのだが、井伏氏の伝記や交遊に関する本は当時のことを思い出してか、若干所蔵していたのである。或いは自分たちのことが書いてあるかも知れないと思ったのかも知れぬ。しかし、井伏氏始め界隈の文化人が自分たちのことを書いていたのを見付けた、と云う話は聞かなかった。
新潮文庫3799/い-4-8荻窪風土記昭和六十二年 四 月十五日 印  刷・昭和六十二年 四 月二十日 発  行・定価320円・新潮社・267頁※ 帯あり「今月の新刊」
※ 二つ折チラシ「新潮/カセットブック」'87.4「【第4回】/4月22日/3点発売!」
 この本は客間クローゼット左側1段めにあった。
・福武文庫 い0302『文士の風貌』1993年6月10日 第1刷印刷・1993年6月15日 第1刷発行・定価631円・福武書店・301頁※ 帯(幅 5.0cm)あり、書影に同じ
 301頁の裏、奥付の前の頁、中央下寄せで小さく「単行本は一九九一年四月福武書店より刊行された。」とある。本書はその文庫版で生前の最後に刊行された著書になるのだと思う。296~301頁、松本武夫「解 説」の冒頭、296頁3行め「 井伏鱒二氏は今年(平成五年)二月、九十五歳になられた。」とあって「平」と「歳」は正字で現代仮名遣いである。但し全て正字が用いられている訳ではない。本文は正字歴史的仮名遣いである。新稿はなく、296頁7~8行め「 本書は、‥‥、月報文章や追悼文章等を集/成し編纂したものである。」
 寝間の本棚にあった。近隣の市の図書館にあるし、若い古本屋が採ってくれたので近々持って行くつもりである。ただ、図書館の蔵書では帯は保存されていないと思うので、その点のみメモして置こう。印刷は書影に示した白緑色で、背表紙側は「福 武 文 庫」のロゴと最下部に小さく★。裏表紙側は表紙側の続きで「彌・久保田万太郎武田麟太郎田中英光亀井勝一郎・中/村地平・瀧井孝作木山捷平上林暁三好達治・青柳瑞穂・/火野葦平中村光夫海音寺潮五郎・木下夕爾・藤原審爾・大/宅壮一・開高健・有島生馬・小杉天外徳冨蘆花広津和郎・広/津柳浪・久米正雄東海散士正宗白鳥巌谷小波谷崎精二/…」最後の1行分は空白。裏表紙側折返しの右上に明朝体縦組みで小さく「文士の風貌」とある。表紙側折返しには文字なし。
・文春文庫 か 18 1 川島勝『井伏鱒二 サヨナラダケガ人生1997年8月10日 第1刷・定価467円・文藝春秋・254頁※ 帯あり「今月の新刊」
 この本は寝間にあったと思う。(以下続稿)