瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

白馬岳の雪女(02)

 この問題に関しては、遠田氏もしくは牧野氏の論文を辿りながら確認して行くのが良さそうだけれども、その前に幾つか、手許にある資料を片付けて置こう。
 さて、昨日「「雪女」にそっくりな話が、白馬岳にも伝わっている(?)ことは、昭和50年代から問題になっていた」と書いたけれども、牧野氏が取り上げている1つは今野圓輔『日本怪談集 妖怪篇』で昭和56年(1981)刊、それからもう1つが中田賢次「「雪女」小考」である。中田氏の論考は、今の私には直ちに見ることが出来そうにないので、ここに書誌データだけ牧野氏の紹介よりも若干詳しく、富山大学附属図書館 編纂『富山大学ヘルン文庫所蔵小泉八雲関係文献目録*1』改訂版(1959(昭和34年)10月25日初版発行・1998(平成10年) 2月19日改訂版発行・非売品・富山大学附属図書館・x+182+A-91+T-92+M-06+N-03)*2によってメモして置こう。
・中田賢次「「雪女」小考」(「へるん」第19号・昭和57年6月・八雲会(松江)・46頁)
・中田賢次「「雪女」小考(つづき)付マルチニーク旅詠」(「へるん」第20号記念特別号・昭和58年7月・八雲会(松江)・55頁)
 なお、中田氏は昭和57年(1982)及び昭和58年(1983)の「小考」より前、昭和51年(1976)にも雪女を扱った論文を発表している。
・中田賢次「Lafcadio Hearn論考:怪談:YUKI-ONNA の成立をめぐって」(「茨城工業高等専門学校研究彙報」第11号9~30頁・昭和51年3月・茨城工業高等専門学校(勝田))
 これには牧野氏や遠田氏は触れていない。地方の高専の研究紀要で参照しづらかったため(存在にも気付かずに)見落としたのか、「小考」とは違いこの時点では白馬岳の雪女には触れていなかったのか。確かめたいところだけれども、都内の図書館には所蔵がないらしく、あったとしても中々出掛けられない。
 中田氏は「毎日新聞」2019年11月3日付の地方版(茨城)の記事「秋の叙勲 県内の受章者 /茨城」に「瑞宝小綬章(18人)」の1人として「海生正雄(中田賢次)80茨城工業高専名誉教授=ひたちなか」と見えている。海生正雄は筆名らしい。昭和14年(1939)生であろう。永年の Lafcadio Hearn 研究を1冊に纏める計画はないのであろうか*3
 それはともかく、私はこれに、1つ補足しようと思っている。2013年7月1日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(20)」に取り上げた星野五彦『近代文学とその源流―民話・民俗学との接点―(以文選書20)で、昭和57年(1982)7月刊である。その「第三部 近代編」の213〜226頁「3 綺堂と八雲――伝説と創作を通して――」の岡本綺堂「木曾の旅人」に関連する箇所は既に検討したように「余り緻密なものではない」が、ある意味先駆的な業績であった。そして小泉八雲に関する箇所も、2019年9月15日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(118)」に触れたように、やはり「後に多くの研究者が取り上げることになるテーマを先取りしたもの」で、白馬岳の雪女について取り上げたものだったのである。(以下続稿)

*1:ルビ「ラフカディオ・ハーン」。

*2:正誤表は1枚で僅か。カラー口絵1頁。ローマ数字は前付10頁、A「著者・編者・訳者索引及びその文献」、T「書名・文献名索引 (ハーンの著書含む )」、M「問題索引」、N「小泉八雲年表」。

*3:8月2日追記】2003年に私家版で中田賢次『小泉八雲論考―『怪談』を中心として―』を刊行している。しかしながら定年退職記念の配り本ででもあったものか、茨城県立図書館にも所蔵されていない(国立国会図書館サーチでもヒットしない)。なお中田氏は「英語青年」122巻6号(通巻1531号、昭和51年(1976)9月・研究社)の「Eigo Club」と云うコラム欄に「『怪談』の原話」を寄稿しているが、これは「雪女」か、どうか。