瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松本清張「氷雨」(6)

 広岡三栄子はMovie Walkerによると昭和30年(1955)から昭和36年(1961)までの映画に、またテレビドラマデータベースによると昭和30年(1955)から昭和40年(1965)までのTVドラマに出演している。ネットでは大した情報が得られないが、キネマ旬報社 編『日本映画人名事典』女優篇〈下巻〉(1995年8月25日初版第一刷発行・定価9,800円・991頁)454頁に立項されている。執筆は編集部。昭和4年(1929)1月2日生、放送当時32歳。本名広瀬嘉子、顔写真を見るに、細面で目が大きく鼻筋が通っている。消息を辿る手懸りにもなろうかと思うので、この事典項目の最後の部分を抜いて置く。

61年の「少女」を最後にテレビ界に移り、TB/S『東芝日曜劇場』に100回近く出演した。62/年、戦前に新興キネマで小酒井健の芸名で俳優/をやり戦後長らく勝新太郎のマネジャーをつとめ/た山崎賢一と結婚。


 小酒井健の名は、allcinemaやyahoo!映画では昭和13年(1938)3月30日公開「怪談鴛鴦帳」と昭和13年(1938)10月27日公開「御存じ紫頭巾」に、映画.comやgoo映画では昭和31年(1956)12月19日公開「アチャコ行状記 嫁取り試験」に見える。
 深見泰三は男性で1人だけ登場する「川崎」役だろう。Movie Walkerによると昭和17年(1942)から昭和42年(1967)までの映画に、またテレビドラマデータベースによると昭和31年(1956)から昭和42年(1967)までのTVドラマに出演している。キネマ旬報社 編『日本映画人名事典』男優篇〈下巻〉(1996年10月25日初版第一刷発行・定価10,000円・995頁)531頁に立項されている。執筆は吉田智恵男。明治34年(1901)1月22日生、放送当時60歳。本名植岡隆逸。顔写真は掲載されていない。この事典が刊行されたときに95歳になっている計算だが、物故者を示す*印は附されていない。項目の最後に「のち難聴となり引退した。泰江夫人との間に一男一女あり。」とあって、引退後消息不明になってしまったようである。

日本映画人名事典 男優篇〈下巻〉

日本映画人名事典 男優篇〈下巻〉

 小説の川崎については、初め読んだとき、でっぷり太った中年男が思い浮かんでいたのだが、前回確認したように、大した描写はない。しかし、割烹料理店の女中を口説き落とそうとして、深夜の駅で待っていたりするような男なのである。「三」章・52〜53頁に、

……。川崎にもずいぶん前から誘われたものである。座敷のうえのことなので、店は終わって行くから、代々木で待っててよ、とか、原宿で待っててね、とか三度か四度言ったが、そのつどすっぽかした。川崎は、正直にそのたびに待ったらしく次に来ては不平を言った。夜中の二時まで待ってい(52頁)たというのだ。……

とある。「四」章、加代が2年後に、58頁「嫌いだったわ。こばかにしていたくらい。」だの、59頁「大した男ではなかったんです」などと回想しているような。
 深見氏がこの設定に合うのかどうか。しかしこの小説に名前だけでなく登場する男性は、川崎しかいない。(以下続稿)