瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

朝里樹『日本現代怪異事典』(07)

浅川駅(6)
 昨日の続きで、典拠である「ニュース速報VIP+@2ch新機能実験場」の過去ログ倉庫に格納されているスレッド「駅から異世界に行ってきた話」の、 昨日の続きで、「27」番の残りも抜いて置きましょう。

降りると同時に、またあの感覚がありました。ぐわあんと頭を揺さぶられ、思わず立ち眩んでしまいました。/駅に降りると、ようやく人が見えました。朝からイチャイチャしているリア充な方が数名、登山なのか60代らしき団体がひとつ。/さっきまで乗っていた電車は、発車するときの音も鳴らさずに走り去って行きました。


 相模湖駅のホームで現実世界(?)に戻って、と自分の乗って来た奇妙な電車を見送るところで終っております。
 ここに「ようやく人が見えました」とあります。初老の登山客たちはともかく、私が気になるのは「リア充な」連中が何を待っていたかです。常識的には東京方面で1日たっぷり遊ぶつもりで上り電車を待っているのだと思うのですが、相模湖駅の下りホームは駅舎にある改札を入ったところで、跨線橋を渡ったところに島式ホームがあって、下り1番線に相対する2番線は通過列車を待避するために上り・下りの普通列車が停車します。そして3番線が上りホームです。そうすると列車が停車していては3番線もしくは2番線の島式ホームで上り電車を待つ連中は見通せないはずです。そうすると体験者が下車した1番線で下りを待っていることになりそうです。しかし、そんな朝早くから山梨県のどこに遊びに行くのでしょうか。富士急ハイランドに行くにしては、立川駅を朝5時台に出発する電車で考えるに、営業開始の1時間以上、上手く行けば(?)2時間以上前に着いてしまい、早すぎるようです。まぁ私は早朝彼女と待ち合わせて遠い楽しいところにデートに出掛けたと云う経験がありませんから、相模湖辺りの「リア充」の行動パターンを想像するのはこれが限界です。
 それはともかく、再び「ようやく人が見えました」に戻りますが、この表現もどうも気になります。――体験者の書き込み「3」番の最後、立川駅で乗車して「水川」行の青梅線に気付いた後に、

後から考えてみればホームに人が全くおらず、/音一つしない静かすぎるという異様な状況にこの時点で気づいておくべきでした。

とありますから、実は立川駅以来、車内や駅構内のアナウンスや発車ベル以外の音は聞こえていなかった、ということになりそうです。しかしながら、体験者は「日野、豊田」そして「八王子、西八王子」と途中で停車した駅では専らiPhoneの異常に気を取られ、乗降客の有無やホームの人の反応など全く意に介していなかったようです。まぁボックスシートiPhoneをいじくっていたら、他のことは全く気にならないでしょう。そして「浅川駅」と言われて初めて明瞭に異常を認識するのですが、車内の描写は結局「扉の上にある画面」くらいしかないのです。
 そして、体験者の目撃した相模湖駅のホームで列車を待つリア充や登山客たちが、下りホームから見通せないはずの上りホームではなく体験者の下りホームで待っていたのだとしたら、彼等は体験者の乗ってきた列車を、特に注意を払うことなく無視したことになります。――到着前に「次に来る列車には御乗車出来ません」と云う構内放送があったので、気付いていたけれども乗ろうとしなかったのか、それとも、彼らには全く見えていなかったのか。……後者だとすれば、体験者は或いは見えないはずの上りホームの乗客を、何故か自分の乗ってきた奇妙な列車を透かして眺めていたのかも知れません。(以下続稿)