・『昭和下町人情風景』の「あとがき」(2)
2019年12月31日付(06)の続き。
続けて『昭和下町人情風景』の「あとがき」を見て置こう。234頁12行め~235頁3行め、
作品は、昭和四十七年(一九七二年)六月から平成二年(一九九〇年)十月まで一八年間に/及ぶから、書かれた年代を考慮して読まないと、現在では納得できないものもあると思うので、/一編ごとに末尾に年月日を記載した。この年月日は、『商取ニュース』の発行日なので、原稿を/書いたのはそれより三日ないし、一カ月前である。また、『裏町の唄』に作品は、本の完成まで【234】一年を要したが、出版の昭和五十三年とした。
『商取ニュース』の随想は、始めの二年半に二十三編、後の五年に三十一編で、この中間の十/年間には七編しか載せていないが、この間に『裏町の唄』を出版している。
2019年12月29日付(04)に示した『昭和下町人情風景』の細目に、各篇の末尾の括弧にある年月日を添えて置いたが、その意味と理由はここに説明されている。本書『裏町の唄』成立の経緯は2019年12月30日付(05)に引いた「まえがき」に説明されていた。
235頁4~8行め、
題名の『昭和下町人情風景』は筆者の発案ではないが、内容をよくとらえていると思う。
便宜上、八十一編を四章に分け、題名の「昭和」「下町」「人情」「風景」を冠しているが、そ/の内容についてはそれほど厳密に区分しているわけではない。
全編が、書かれた年月順に配列されているのだが、同じ五十年代ということで、「下町」の章/に『裏町の唄』の十八編が収録されている。
「商取ニュース」の随想は、細目を見ても分かるように時事も取り上げ、本文中にもしばしば言及している。そこで発表時期を一々断ることにしたと云うのだが、この配慮は非常に有難い。同種の文章でも単行本収録に際して初出の情報を省いてしまった例を多々見ているが、それでは利用価値が何割か減ってしまう。筆者にその意識がなくても編集サイドが、雑誌や業界紙よりも後代に残ることに思いを致して、最小限の情報は少々面倒になっても漏らさないで欲しい。
それから、標題及び章立てに関して、ちょっとそぐわない印象を受けたのだが、上手い案が浮かばなかったので次善の策として採用したもののようである。「書かれた年月順に配列」したのでは、そもそも「厳密」な「区分」など初めから目指していないので、切れ目なく並べるのではなく、何となくであっても分かれていれば良かったのであろう。(以下続稿)