瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(160)

・怪談レストラン❸『殺人レストラン』(3)
 「とうげの一けん家」は、日本民話の会 学校の怪談編集委員会学校の怪談大事典』にも立項されている。2014年1月13日付「赤いマント(083)」に見た、11~44頁「1.こわい話」の11項め、35頁下段8行め「とうげの いっけんや【峠の一軒家】」で、最後、37頁上段16行めに下寄せで、丸ゴシック体でやや小さく「(吉沢)」とあって、吉沢和夫執筆である。すなわち、平成8年(1996)4月刊『学校の怪談大事典』と、8月刊『殺人レストラン』に、吉沢氏は同じ話を書いているのである。
 そこで、次に辞典項目に梗概(35頁下段11行め~36頁下段18行め)を引いて、児童文学の『殺人レストラン』と比較しつつ「峠の一軒家」の内容を確認して置くことにしよう。

【A】冒頭~設定

学校の怪談大事典』35頁下段11~12行め

★とうげの一軒家に、おじいさんと孫と一ぴきの犬/がすんでいた。*1


『殺人レストラン』33頁2~5行め

 もう、何年むかしのことになるか、とうげの上に一けん家があってね、/じいさまと孫の男の子とふたりでくらしておったんだ。男の子は三歳ぐ/らいであっただろうか。そのころは、とうげの上でとっぷり日がくれて/しまって、旅人がひと晩とめてもらうことなど、よくあったものだ。*2


 『殺人レストラン』は「何年むかし」と語り出しているが、見知らぬ旅人が峠の一軒家に泊めてもらう、と云う状況があったのは、高度経済成長期まで、その頃になれば自動車が普及し、山越えも徒歩で峠を越えるのではなく、2017年2月20日付「恠異百物語(5)」に脚色した話――恐らく昭和56年度の3学期に聞き、平成6年(1994)秋に小説化――のように、新しく掘られたトンネルを乗用車で往来することになったので、行き暮れた「旅人」が宿を借りることが「よくあった」のは、平成8年(1996)からだと30年か、それ以上前の状況であったろう。『学校の怪談大事典』は時期を示さないが、続く部分に出る「戸」の描写や「土間」など、やはり「何年」どころではない「むかし」のこととしか思えないのである。
 ところで『殺人レストラン』にはまだ犬は登場しない。しかし『学校の怪談大事典』のように、人間「と犬がすんでいた」と並べてしまうことに、私などはやはり抵抗を覚える。「おじいさんと孫がすんでいて、犬を一ぴき、かっていた。」で良かろう。『学校の怪談大事典』ではこの後、孫の年齢を示すが、性別は分からない。(以下続稿)

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 「とうげの一けん家」は、2019年6月15日付(091)にも触れたアニメ版『怪談レストラン』にも取り上げられている。

怪談レストラン 1 [DVD]

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  • 発売日: 2010/07/23
  • メディア: DVD
 2009年11月24日放送の第6話、このアニメ版はレストランらしく前菜・メイン・デザートの3話を組み合わせているが、メインがこの「とうげの一けん家」である。アニメ版には小学6年生の主人公が設定されていて、この話も主人公一家が別荘で体験する設定になっているようだ。詳細については近いうちにDVDにて視聴し、確認するつもりである。

*1:ルビ「いつけんや・まご/」。

*2:ルビ「なんねん・いつ・や/まご・さい//たびびと・ばん」。