瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(161)

・怪談レストラン❸『殺人レストラン』(4)
 日本民話の会 学校の怪談編集委員会学校の怪談大事典』の「峠の一軒家」と、本書の「とうげの一けん家」の比較の続き。要領は昨日に同じ。

【B】深夜の来訪者~犬の異変

学校の怪談大事典』35頁下段13行め~36頁下段1行め

 あるあらしの晩のこと、すっかり寝しずまった夜/中の二時すぎごろ、入り口の戸をはげしくたたく音/におじいさんは目をさました。入り口の戸をあける/と、頭から足の先までぐしょぬれの男がたっていて、/一夜の宿を乞うた。と、そのときだ。土間に寝てい/た犬がとつぜんもうれつないきおいでほえはじめた。/男はびっくりしてあとずさりした。おじいさんがと*1【35】めても、犬はますますはげしくほえたてた。


 36頁上段は激しく吠えている犬を正面から描いたイラスト。「ワン」を左右に3つずつ書き入れ、口のすぐ右に「ガウ~」。

『殺人レストラン』33頁6行め~36頁7行め
 脚色のため引用すると長くなるので、要点を抜いて置こう。まづ時期は33頁6行め、

 ある年の、あれは秋のことだったか、たいへんな大あらしの晩のことだ。*2


 そこで「はやめにねる」ことにして2人は「おくの部屋のふとん」に入る。そこに、34頁2~3行め、

 夜中の十一時ごろでもあったろうか、うとうとしておると、*3
  どん どん、どん どん


 この「入り口の戸をたたく音」は6行めにも繰り返されている。そこで「あらしの音」ではないと気付いた「じいさま」が「入り口の戸をあけ」ると、「ずぶぬれの」男が「ぬーっと土間にはいって」来る。そして35頁2~3行め、

「むこうの村へいくつもりでここまでやってきたのだが、このとおりの/雨風だ。どうかひと晩とめてもらいたいのだが……」*4


 35頁の左側(7行分)は土間に草履を履いて立つ禿げ頭(耳の上に少し毛髪)和服の老人のイラスト。鴨居に「Donatajana!」と書き入れ。男は黒い後ろ姿で、水溜りになっている外に立って、老人に事情を説明している場面のようだ。
 「じいさま」が返事をする前に「土間でねていた犬」が「男にむかって」激しく吠え始める。36頁3~5行め、

  うー うー わん わん わん
 おそろしいものでもみるように、あとずさりしながら、はげしくほえ/たてる。


 「じいさま」が「しずめようとしても、むだだった」。『学校の怪談大事典』では「男」が「あとずさりし」ているが『殺人レストラン』では「犬」の方で、男は後退りしない。(以下続稿)

*1:ルビ「ばん・ね・よ/なか///やど・こ・どま//」。

*2:ルビ「あき・ばん」。

*3:ルビ「よなか・じ」。

*4:ルビ「/あめかぜ・ばん」。