瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

新聞解約の辯(2)

 6月12日付(1)に述べたように、今月から新聞を解約したので、狂気のイヴェントに関する情報を殆ど見ずに過ごしている。本当に解約して良かった。
 全く予想通りに推移している。奇怪なのは、政府やその関係者が全くの楽観論で、この程度の予測も出来なかったことだ。
 東京オリンピックをやった場合と、やらなかった場合で感染者がどの程度増えるか、と云う、三菱総合研究所東京大学の予測グラフが晒されている。これまで、日本では、欧州や北米・南米・インドなどに比べれば、確かに「さざ波」程度で推移して来た。なんでそうなったのかは、国民の自粛行動や接触を好まない生活様式、それに検査抑制など、様々な要因があるのだろうけれども、正直よく分からない。だって、実態を正確に把握しようとしていないのだから。
 しかし、その、よく分からない要因の箍が外れれば、他国のような急拡大が起こり兼ねないことは、政府以外のところで多くの人が指摘して来た。私が参照している諸外国・国内の状況を検証しているサイトや tweet の予測しているところである。しかし、初期の西浦氏の42万人と云う予測が大きく外れたことから、悪い方の予測を軽視する空気が政府だけなく国民の間にも醸成されてしまった。
 日本政府もIOCも、解体したら良い。こんな判断力のない無能に、この災厄下の舵取りを任せられない。平時だって、彼らは実際碌でもなかった。
 野党には任せられない、と言う人がいる。大丈夫かと思うところが多々あることも確かだが、これ以上地獄の自公(維新)政権に居座られたら命が幾つあっても足りない。
 だから、政権取りの秘策を授けよう。現政権支持層の支持理由が7月12日付「芥川龍之介「尾生の信」(12)」に述べた通りであるとするなら、野党は「アベノミクスを継続しつつ、出鱈目な自民党政治を改善し、国際競争力の回復を目指す」と言えば良い。1点めをもう少し補足するなら「アベノミクスには本当は反対なのだが、ここまで長期に続けて急にやめると影響が大きすぎる。向こう10年はこれを継続し、国民の資産の保全を図りながら、新たな経済政策を打ち出して、持続可能な社会作りに寄与したい」と云うことになる。自分たちの資産が守られると安心出来れば、流石に前総理の嘘や現総理の暴走に不安を抱いている層は見切りを付けてくれるであろう。それでも信者みたいな人はそのまま支持し続けるだろうが、そもそも度しがたい輩なのだから仕方がない。
 今の日本、一番の保守政党共産党だと思うのだけれども、共産党では USA や China と上手く付き合えないだろうから、その辺りや主立ったポストは最大野党に任せて、今、本当に果断な対策が必要なところを担当してもらいたい。と思ったら最大野党の党首が五輪中止を求めず、だそうだ。これでは強行して後戻りの出来ないところまで既成事実化してしまえば、何でも通ることになる。まさに政府・組織委員会、逸早く副会長コーツのお膝元 Australia の女子ソフトボールチームを日本に送り込んだIOCの思う壺である。まさか76年後に玉音放送が待望される事態になろうとは思わなかった。最大野党も今の執行部を刷新して、支持率を見ても大した基盤にはなっていない連合と絶縁するなどの措置を取らないと、再生しそうにないね。国会対策委員長が1月だったか4月だかの緊急事態の範囲を宣言直前に拡大したことを「閣内不一致だ」などと批判していたのには本当にガッカリした。ようやく我々の訴えに耳を傾けてもらえた、今後はもっと積極的に我々の意見に耳を傾けて欲しい、くらいのマウントをなんで取らないのか、そこは批判するところじゃないだろう、と歯痒く思ったものだ。この国会対策委員長は常々無能野党マインドのコメントをドヤ顔でするので、また要らんことを言って、と思わされることが度々である。ちょっと党首と国会対策委員長を何とかして欲しい。そうでないと、まだしばらく地獄が続きそうだ。

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 新聞を見ないことで、オリンピック情報はほぼ見ずに済ませられることが分かった。Twitter がやたらと推してくるが、見出しだけだしそれも読まないようにしている。しかし、Twitter で別の情報を検索して逢着した人々に、開催に反対していたのに見ている人、感染拡大に不安を訴えながら観戦を愉しんでいる人がいて、あぁこれだから強行して日本人選手が金メダルを取れば日本人はどうとでもなる、と現総理やIOC会長が思ったのだな、と思ったものである。
 開会式の視聴率が 56.4%だったそうで、私は目を覆いたくなった。家人は、直前にあれだけ揉めてどんな悲惨なことになるか、確かめようと見た人も多かったのではないか、と言う。見ないと批判出来ない、と云う理屈だ。しかし、数字だけが一人歩きするのである。そういう気持ちで見た人がいたとしても、この 56.4%は、文句を垂れながら、結局は開催を支持した数字としてカウントされてしまう。
 テレビは、惰性で見ている朝の連続テレビ小説や天気予報のついでにちらちら見えてしまうが、1秒ほどで他局に変えたり切ったりしているから、1分も見ていない。有難うリモコン。The 18th International Fryderyk Chopin Piano Competition (preliminary round) の LIVE 配信は4連休中に終わってしまったが、今はアーカイヴで最初から全員見ることにして、しかし連休が終わってしまったのでよくやく2日めまで見終えたところである。アジア人やアジア系が多いが、世界各国の若者たちの個性豊かな表現を聞いていると退屈しない。Etude Op.10 no.4 を Rosita Renard よりも速く弾いている女性がいて吃驚した。First Session(MORNING SESSION)は夕方から夜に掛けてなので、日程中盤以降、大体 LIVE で見ることが出来た。しかし Second Session(EVENING SESSION)は真夜中に始まるので見ていられない。だからまだ半分も見ていない。この分では、来月も退屈せずに済みそうだ。
 私はオーケストラの長い曲が苦手なので、ピアノだけで短い Chopin の曲は学部生時代以来30年繰り返し聞いていて、ほぼ全ての曲を2桁以上の奏者で聴いているはずである。だから、楽譜は読めないがミスタッチは大体分かる。その後、Scriabin や Liadov のピアノ曲も全曲聴いたが、こちらは中々2桁以上の奏者で聞く訳に行かぬのである。

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 テニスの選手が猛暑に文句を言っているそうだ。
 そんなことは分かっていただろう。だから本当に死者の出かねないマラソンを、瀬古利彦のセコい戦略(?)を反古にして札幌に移した訳で、今更知らなかったもないもんだ。まともな日本人は7月下旬から8月上旬の東京で運動会をやるなんて無茶だろうと決定当時から言っていた。私らも言っていた。そのこともあったから、コロナで中止になりそうだと云うことになってホッとしたのである。
 ただ、前総理が招致活動時に「温暖で晴天が多く理想的な気候」などと嘘をついたことは、間違いないのだけれども、まぁそれは若干、いや、かなり「盛って」喋った、と云うことで、招致活動をやっている以上は、まぁ、ありそうなことである。だって国会ではもっと凄い嘘をつき続けているのにそれで通っているんだから。
 だから問題は、この程度の嘘を見抜けずに(いや、分かっていて知らぬ振りをするよう袖の下をもらっていたのかも知れないが、それは表向きはないことになっているはずだから)東京に決定したIOCの判断力の無さ、と云うことになろう。JOCに問い合わせても前総理と口裏を合わせたような答えしか返って来なかったであろうが、別にそんな連中に問い合わせずとも、いくらでも客観的な気候のデータが入手出来たはずで、そこを見極められずに酷暑の東京に決定したIOCの責任をとことん追及するべきである。
 いや、多くの日本人が日本の夏にオリンピックなんか出来るのか、と懸念を訴えてきた。殆どが日本語だけれども全く世界に伝わらなかった訳でもなかろう*1。凋落したりとは云え企業の駐在員も少なからずいるだろう、それから常駐の大使館員たち、間違って夏に来た観光客もいただろう。日本の夏がどれだけ地獄か、分からなかったとは言わせない。――だから、コロナと云う絶好の口実が飛び込んできたのに乗じて、この危険極まりない東京大会を葬ってしまえば良かったのに。世論調査で日本人の多くが反対しているくらいのことは知っていただろう。それを開催させてのこのこやってきて文句垂れるとは、どれだけスポーツ関係者とは情報収集力も判断力もない我が儘な、所謂「脳筋」な連中なのだ、くらいにしか思えない。
 もちろん、だからと云って前総理の責任が帳消しになるわけではない。嘘スピーチを知りながら黙っていた、一緒に招致活動していた連中共々、表舞台から消えて欲しい。いや、前総理にはこの際、数々の疑惑についても明白にしていただきたい。

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 テニスと云えば、慎重な姿勢を取っていた日本人女子トップ選手が、途中から掌返しをしたように参加したい旨を述べ始めたことに違和感を抱いていたが、開会式の最終聖火ランナーで釣ったのか、と云うことで合点が行った。もちろん(見てないがネットニュースの見出しで知って)ガッカリしたが、多少は同情する。日本国籍を選んだのに、肌の色や片言の日本語しか喋れないことを捉えて「あれは日本人じゃない」だの、差別などに関するアピールについて「スポーツ選手が政治に口出しするな」だのと云った日本語 tweet を多々浴びせられて、かなりの承認欲求を抱えていたのではないか、と推察するからである。だから「日本人」の代表としての大役を振られて、うっかり飛び付いてしまったのだろう。
 とにかく、オリンピックは今からでも即刻中止するべきである。そもそもこの状況下での開催が、普通の判断力で考えれば無理であることは分かりそうなものだった。それだのに頭の悪い連中は、個別の競技の世界大会をやってるとか、プロ野球をやってるとか、子供の運動会や発表会と一緒にするな、とか屁理屈を捏ねていたが、全く以て笑止である。個別の競技の大会とは規模が全く違う。そして子供並に統制が取れない(笑)から、中止すべきなのである。日本政府やIOCが何を言おうと、各国の関係者・選手はやめた方が良いと声を上げて、開催不能に追い込むべきだった。それだのに来てしまった以上は云わば共犯である。従犯だから多少は同情するが、どう行動するのが正しかったのか、大いに反省して、今からでも日本政府やIOCを糾弾する声を上げていただきたい。
 従って私は、日本にいてもっと状況が分かっていたはずの日本代表選手は、殆ど主犯と見做している。今後、彼らを応援することはない。試合も見ないだろう。感動を与えるだの国民のために頑張るだのと言っているが、そんなことはないので、第一には個人の栄誉と金のため、第二には競技団体・関係者のためにやっているので、詰まる所ひたすら個人的な事由のはずである。International Fryderyk Chopin Piano Competition に出ている人と何ら変わりないのに何たる思い上がりだろう。――多額の公費を投入しているからか。正直、減らして欲しい。そんな、個人的な、無益な競争に金をじゃぶじゃぶ使うのではなくて、もっと後代に残る事業に使って欲しい。別に日本選手が強くなくても、私は一向に構わない。こうなっては、大体が人口が多くて経済力のある国が強くなるに決まっている。空しい競争に金を吸い取られ、それに乗じた IOC のような連中の喰い物にされている。今回のオリンピック強行は、私にそんな当り前のことを(薄々感じていたから以前から嫌悪の情が拭えなかったのだが)明確に気付かせてくれた。
 そう云えば、生島ヒロシの弟のスポーツライターが、東京招致が成功したとき、フェンシングの選手がスピーチして、東京オリンピックをやるときには年齢的に競技から離れているであろう彼には何の得にもならないのに、と感動していたが、別に出場出来なくてもこの大イヴェント招致で手柄を挙げれば彼個人の地位も上がり、フェンシングの競技連盟への金の配分も大きくなるので、何寝惚けたことを言っているのだろうこの人は、と思ったものだった。
 案の定、彼はその界隈で大きな政治的な存在になりおおせている。色々問題があるようだが。
 日本のマスコミには普通に考えれば分かりそうな後ろ暗いところをなかったことにして(最近は政府関係もそういう扱いになってきているが)、「感動ありがとう」とか、今回の場合、特に頼みもしないのに勝手にやられて迷惑な大会なのに、ひたすら美点だけ謳い上げる単細胞な発想が大手を振っていて、以前からどうかと思っていたが、今回、いよいよ見るに堪えない。本当に今からでもこの汚れた大会は中止にして、これまでのメダルも「参考記録」扱いにするべきである。所詮ガス抜きに過ぎなかった山口香が言っていたように、史上稀に見る「アンフェア」な大会だったのだから。本当に、今後、東京オリンピックのメダリストであることを誇れるのか、――誇るようだったら私はその選手、そしてそれを讃える関係者やマスコミを、心底軽蔑するだろう。(以下続稿)

*1:本当は日本のジャーナリスト・報道機関がそのような指摘をするべきなのだが、2020年6月5日付「内館牧子『必要のない人』(2)」に述べたように、新聞社・TV局はオリンピックに取り込まれているから大手からはそのような話が申し訳程度にしか出て来ない。そしてオリンピック強行に加担し、その自らの不明を糊塗するために今後も「パラレルワールド」で讃美記事を書き続け、垂れ流し続けることだろう。地に落ちた、と云うべきである。だから私どもは情けないことに外圧に頼るしかないのである。――それから、TOYOTA が最後になって CM を取り下げたことを「流石は一流企業」などと褒めている人がいるが、最後の最後になって我が身可愛さにバックレただけである。本当にまともならば、昨年延期ということになった時点で、いや、今年になって有観客だとか妙な展開を示している頃にスポンサーから下りて、中止すべきだと進言するべきだった。ここまで強行に加担して置きながら、前総理と同じく直前になって逃げ出しただけなのである。