瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

白馬岳の雪女(30)

 昨日の続き。
・遠田勝『〈転生〉する物語』(10)「一」7節め
 32頁11行め~34頁11行め、7節め「いたずら者の青木記者」については、8月19日付(23)に述べたように、一昨年秋に取り上げたことがある。


 今回は当時取り上げなかった部分を見て置きたい。33頁17行め~34頁11行め、

 この経歴でわかるとおり、一九三〇年の『山の伝説』は青木の処女作ではない。彼は、それ以前/【33】に、北海道時代に集めた口碑伝説を『アイヌの伝説と其情話』と題し札幌の富貴堂から一九二四年/七月に出版していた。これはアイヌ伝説集としては出版史上、もっとも早い単行本のひとつで、/『山の伝説』と同じく先駆的な試みだった。札幌での初版からほどなく、別の出版社から表題のみ/を変え版を重ねているので、評判も売行きも、それなりによかったのだろう。青木は企画者として/優秀で、目のつけどころはいいのである。
 青木はその序文で、

 私が牛尾を姓し新聞記者として北海道各地を流転中に得た大きな仕事はこのアイヌ研究であ/つた〔。〕ここに書いたもの全部が古文書をあさり、あらゆる伝説研究書を読破し、その上、/親しくアイヌ部落を訪ふて古老達に聞いた話ばかりである。

と、『山の伝説』と同じようなことを書いている。そして、あきれたことに、ここでも彼は、ハー/ンの「雪女」をもとに「雪の夜の女」というアイヌの伝説を捏造しているのである。


 『アイヌの伝説と其情話』の「はしがき」の全文は2019年10月21日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(136)」に抜いて置いた。遠田氏の引用には少し誤りがあり正しくは「‥‥話ばかりなのである。」である。(以下続稿)