瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(153)

※ 青木純二及び杉村顕について、少し絡んでいるだけで蓮華温泉の話ではありません。
 
・花部英雄・小堀光夫 編『47都道府県・民話百科』令和元年11月25日発行・定価3,800円・丸善出版・340頁・四六判上製本

47都道府県・民話百科

47都道府県・民話百科

  • 発売日: 2019/12/03
  • メディア: 単行本
 編者の花部氏は國學院大学文学部教授、小堀氏は國學院大学文学部兼任講師。330~331頁「編者・執筆者一覧」に拠ると、執筆者は編者含め36名。うち6名が2県執筆、1名が3県執筆、そして花部氏が1~19頁、第Ⅰ部「概説」と4県について執筆して、21~296頁、第Ⅱ部「都道府県別にみる民話とその特色」に47都道府県をフォローしている。
 第Ⅱ部の「1 北海道」は22~27頁、22頁2行め~「地域の特徴」23頁3行め~「伝承と特徴」24頁10行め~「おもな民話(昔話)」26頁18行め~「おもな民話(伝説)」27頁18~31行め「おもな民話(世間話)」の5節、何だか何処かで見たような内容と書き方だと思って、先述「編者・執筆者一覧」を見るに、「●執筆者●(50音順、[ ]は執筆担当部分)」の1人め(330頁6行め)に「阿 部 敏 夫 元北星学園大学文学部教授[北海道]」とあった。すなわち、2019年10月19日付(134)に見た、阿部敏夫『北海道民間説話〈生成〉の研究 伝承・探訪・記録の内容と重なっているのである。当然、阿部氏が俎上に上せた青木純二についても言及がある。
 まづ、「伝承と特徴」の節に、23頁11~12行め「北海道の「昔話伝承活動」」を「五つ/に分類」した中に、21~23行め、

 ③和人が創作したアイヌ民話がある。『アイヌの伝説と其情話』『アイヌ/民話』『伝説蝦夷哀話集』などに収録された民話のなかに和人が創作した/アイヌ民話がある。

と青木氏の著書『アイヌの伝説と其情話』を挙げ、次の「おもな民話(昔話)」の節に3話、1話め(24頁11行め~25頁3行目)は知里幸恵アイヌ神謡集』から引用した「銀の滴降る」、そして2話め(25頁4~28行目)が「血に咲く鈴蘭」である。25行めまでは出典からの引用で歴史的仮名遣いのまま、典拠は24~25行めに「‥‥出掛ける(『アイヌの伝説と其/情話』)。」と添えてある。漢字は殆ど新字体にしてあるが25頁4行め「銭亀澤」の「澤」及び12~13行め「一/聲高く」の「聲」はそのままになっている。
 国立国会図書館デジタルコレクション『アイヌの傳説と其情話』102~103頁8行め「血に咲く鈴蘭」との異同を挙げて置こう。
・102頁2行め「錢龜澤」にルビ「ぜにかめさは」→25頁4行め、ルビなし。
・102頁3行め「そこの」から改段→25頁5行め、段落分けせず。
・102頁3行め「傷しく」→25頁6行め「優しく」
・102頁6行め「同じ村に」から改段→25頁8行め、段落分けせず。
・102頁7行め「キロロアンは」から改段→25頁10行め、段落分けせず。
・102頁8行め「發矢と」→25頁12行め「発止と」ルビ「はっし」。
・102頁11行め「その時」から改段→25頁15行め、段落分けせず。
・103頁3行め「『キロロアン樣』と」から改段→25頁19行め「「キロロアン様」と」は段落分けせず。
・103頁5行め「娘の咽喉からは」から改段→25頁21行め、段落分けせず。
 下手に要約してポイントを外すことを恐れたのかも知れないが、もう少々ルビを足してもらわないと戦前の文献を読み慣れていない人は読み通せないのではないか。
 そして26~28行め、

 この「血に咲く鈴蘭」話は、青木純二が1924(大正13)年に『アイヌ/の伝説と其情話』に掲載したものである。この話はアイヌ民族に伝承され/ていないのにアイヌ伝説風に仕立てて創作されたものである。

とのコメントを付す。しかし338~340頁「人名索引」を見ても青木純二の名はない。338頁左1~5行め「あ 行」には4人、うち3人めの「安部勤也」は妙だと思って「15」頁を見るに、23行めに「社会学者の阿部謹也は」とある。奇妙な間違いである。それはともかく、303~329頁「参考文献一覧」の303頁22行め~「第Ⅱ部」の303頁23行め~304頁17行め「◆1.北海道」には、303頁29行めに、年代順に列挙した2番めに「『アイヌの伝説と其情話』青木純二、富貴堂書房、1924」と見える。ちなみにその前の総合的な文献として挙がる4点の2番め(25行め)に「『北海道民間説話〈生成〉の研究』阿部敏夫、共同文化社、2012」も見えている。
 さて、青木純二『山の傳説』の方は関係しそうな、314頁3~16行め「◆16.富山県」315頁23行め~316頁5行め「◆19.山梨県」316頁6~28行め「◆20.長野県」317頁21~39行め「◆22.静岡県」の各県ともに挙がっていない。
 ちょっと注意されるのは、134~139頁、二本松康宏執筆の第Ⅱ部「20 長野県」の、134頁20行め~135頁24行め「伝承と特徴」の節の冒頭の段落(134頁21~24行め)に、

 長野県下における民話の収集と編纂は、藤沢衛彦の『日本伝説叢書』全/12巻のうちの『信濃の巻』が最も早い時期のものであろう。在地人によ/る収集・編纂としては、『小谷口碑集』『信州の口碑と伝説』『小県郡民譚集』/『信州昔話集』『信濃の伝説』などが戦前の代表的な成果として挙げられる。*1

とあることで、二本松氏は注意深く「収集と編纂」としているけれども、やはり「民話」のようなものの場合、書物から「収集」したものと土地の住民から「収集」したものとを混ぜて扱うのは、確かに「収集」に違いないのかも知れないが抵抗がある。かつ、杉村顕『信州の口碑と伝説』は2019年8月23日付「杉村顯『信州の口碑と傳説』(2)」等に見たように、教師として3年余り長野市に居住した人物による「編纂」なのだから「在地人による」ものではない。かつ、主として『信濃の巻』や『山の傳説』から「編纂」したもので、「収集」の手間は左程掛かっていない。その意味では「在地人」村沢武夫*2の「編纂」だけれども『信濃の伝説』も同様である(詳細は追って記す)。この2点は『小谷口碑集』『小県郡民譚集』『信州昔話集』とは分けて、別種のものとして挙げてるか、いっそ載せない方が良かったように思うのである。(以下続稿)

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 この他に若干気になった点を追記して置く。
・カバー表紙折返し12~13行め「桃太郎、浦島太郎などよく知られた昔話のバリエーションもわかる!」とあるが、「14 神奈川県」と「37 香川県」の、比較的よく知られた浦島太郎伝承が取り上げられていない。
・28~32頁「2 青森県」の、32頁1~2行め「‥‥。今天文十五(1546)年まて及二八百余歳一也〈八百余歳に及ぶなり。引き算すると、七百余年か〉。」とあるのは、「及八百余歳也」の如く一二点を小さくしないといけないだろう。このような体裁の「百科」で、ここまで読みづらい原文にこだわる必要があるのだろうか。

*1:ルビ「ふじさわもりひこ//おたり・ちいさがたぐん/」。

*2:4月28日追記】村沢氏の名前を署名の前からここに移した。