瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

白馬岳の雪女(48)

・『樹木の伝説』の十六人谷
 序でにもう少し「十六人谷」の文献を提示して置こう。――8月30日付(34)に書影だけ示した Truth In Fantasy 65『花の神話』のシリーズの続篇と云うべき、同じ秦寛博(1970生)編著の次の本に「十六人谷」が載っている。
・Truth In Fantasy 87『樹木の伝説』2011年8月10日 初版発行・定価1900円・新紀元社・381頁・A5判並製本

 横組み。見返し(遊紙)用紙は灰色。
 001頁(頁付なし)扉。
 002~004頁、大原広行「樹木からの贈り物」。
 005~006頁「もくじ」。
 007頁(頁付なし)「第1章/果実の伝説」の扉。008~143頁、20節。
 145頁(頁付なし)「第2章/ナッツの伝説」の扉。146~186頁、6節。
 187頁(頁付なし)「第3章/樹木の伝説」の扉。188~332頁、24節。
 333頁(頁付なし)「第4章/ナッツの伝説」の扉。334~369頁、5節。
 370~379頁「参考文献」。
 380~381頁、秦寛博「あとがき」。「平成23年2月24日」付。
 382頁(頁付なし)「執筆者一覧」。まづ2~5行め、

 秦ひとりでは、この本はとうてい完成には至りませんでした。/原稿は、以下の担当で執筆されました。言及のない原稿に関して/は、すべて秦が担当しています。また、すべての原稿に目を通し/ておりますので、最終的な内容の責任は、すべて秦にあります。

として、健部伸明(1966生)が1節、大原広行(1980.4.26生)が17節、高城葵が3節、森真弓が20節、荒川源幸が1節を分担している。そうすると全55節のうち秦氏は13節を担当していることになる。執筆者はゲームやその設定に関わる神話・伝説を得意分野とするフリーライターたちのようだ。
 251頁23行め~263頁6行め、第3章の12節め「ヤナギ」は、まづ総説に当たる文があって、それから26項にわたって主な種や学名、花言葉や用途、そして伝説を紹介して行く。「執筆者一覧」に拠れば担当は大原氏である。
 その12項め、257頁右5行めにやや大きく「夫婦柳の祟り」として、6~23行め、

 かつて富山の黒部渓谷にあった1対の/立派なヤナギの巨木は “夫婦柳” と呼ば/れました。
 ある年の秋、16人の木こりがやって/来て、そのうち1本を伐り倒してしまい/ます。すると木こりたちはみな気分が悪/くなり、仕方なく近くの山小屋で休むこ/とにしました。
 その夜、ひとりの美しい女が小屋を訪/れました。女は気味の悪い微笑みを浮か/べながら、16人の木こりの上にひとり/ひとりまたがると、闇の中へ消えていき/ました。それを唯一目撃した小屋番が様/子を確かめたところ、木こりはみな吐血/して死んでいたとのことです。
 この事件は夫婦柳の祟りと噂され、こ/の谷は “十六人谷” と呼ばれるようにな/りました。


「参考文献」には、376頁27~32行め、

●ヤナギ
柳の文化誌 柳下貞一 著 淡交社
漢詩選 10 白居易 田中克己 著 集英社
蘇東坡詩集 蘇軾 著/小川環樹、山本和義 編訳 筑摩書房
陶淵明全集 松枝茂夫、和田武司 訳注 岩波書店
怪談・奇談 小泉八雲平川祐弘 編 講談社

が挙がる。柳下氏の本に出ているかも知れない。未見だが追って見る機会を作ろう。或いは370頁4行め~373頁29行め「●全般」に「植物と神話 近藤米吉 編著 雪華社/続植物と神話 近藤米吉 編著 雪華社」から「花の神話 秦寛博 編著 新紀元社」まで挙がっている、多くの本の、いづれかかも知れない。8月30日付(34)に引いた遠田勝の指摘にあったように、近藤米吉『続植物と神話』は、直接か間接かは分からないが青木純二に由来する「伝説」を収録しているので、これも近く見る機会を拵えたいと思う。(以下続稿)