瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

白馬岳の雪女(103)

 白馬岳の雪女が越中の伝説として富山県で現在でも流布され続けていることは、2021年11月29日付(089)にその一端を窺った。
 この少し前、2021年7月30日(金)から11月23日(火)まで開催されていた、黒部市のうなづき友学館(黒部市歴史民俗資料館)の市制施行15周年記念第17回特別展「黒部奇譚-伝説の地を紐解く-」でも、黒部市HPの「黒部市歴史民俗資料館 展示のご案内」を見ても「‥‥、市内の伝説・昔話から37話を取り上げ、関連資料などを展示紹介しています。」とあるが地図「展示する主な/伝説の地」には「十六人谷」まで載っていてその奥まで載せていないから白馬岳の雪女が含まれているかどうか分らぬのだが、北陸新幹線沿線の地方新聞社5社(新潟日報社北日本新聞社北國新聞社福井新聞社信濃毎日新聞社)が共同運営する観光情報サイト「北陸新幹線で行こう!北陸・信越観光ナビ」に転載されている「北日本新聞」の記事「不思議な伝説・昔話紹介 黒部市歴史民俗資料館(2021年10月7日)」には「黒部奥山の「雪女」や‥‥」とあって、取り上げられていたことが分かる。なお、A4判の展示図録『黒部奇譚――伝説の地を紐解く――』(2021年7月・黒部市歴史民俗資料館・40頁)が出ている(未見)ので、展示内容を窺うことは出来るだろう。
 それはともかく、こうした文化施設での展示・お話会、或いはラジオ放送などもその基となっているのは、既存の民話集や伝説集なのだ(ろう)から、大まかな流れはやはり出版物を点検しつつ辿るべきであろう。出版社から刊行されて市販されたもの、それから地方自治体が編纂頒布したものを見ることになる。しかし白馬岳を初めとする北アルプスのような観光地ではこの他に、観光客相手に頒布されたものもその対象に含める必要があるのである。
 すなわち、立山黒部アルペンルートのうち、富山県側の立山から黒部湖(黒部ダム)までを運行している立山黒部貫光が、観光客向けの民話集を継続的に刊行している。しかし、観光パンフレットと云うか御土産みたいなものなので、刊年が入っていない。しかも度々改版されているらしいのだが、図書館に収まっていることが少ないので、私はようやく2種見ただけである。
 まづ、最初に見た新しい1冊本から見て置こう。
・遠藤和子 監修/高畑宏 絵立山と黒部の昔ばなし』立山黒部貫光・93頁・B5判
 コート紙のオールカラーで博物館の図録のような作りである。表紙は背表紙から裏表紙まで、二曲一双(?)の立山曼荼羅の写真が使われている。下部は赤紫色地に淡い桃色の線や滴を散らした柄になっている。拍子は中央にゴシック体太字で標題、標題の辺りを白く暈かす。背表紙の上部に同じ標題を縮小して入れる。裏表紙は最下部右寄りに細いゴシック体で1行「企画・発行/立山黒部貫光株式会社 富山市桜町1-1-38 ☎(076)441-3331」電話の記号は右下を向いた黒電話の受話器だが再現出来ないので仮に表示可能なものを入れて置いた。
 見返し(遊紙)は黄緑色。頁付はやや奇妙で、頁付は本文冒頭、2頁から始まっているが、その前の見開きは「目   次」である。すなわち、中央上寄りにゴシック体太字で、右下にぼんやりした灰色の影を付けた標題を示した扉の裏に当たる「立山の昔話」21話分は前付の2頁めで、次の「黒部の昔話」21話分が1頁(頁付なし)と云うことになる。文字は表紙・扉と奥付はゴシック体、目次と本文は丸ゴシック体。1頁17行、2~47頁「立山の昔話」冒頭の題のみ枠(6.8×1.2cm)に墨書、48~93頁「黒部の昔話」も同様。最後に奥付、下部中央に灰色のゴシック体で大きく標題、その左に下詰めで「企画・発行 立山黒部貫光株式会社」とあってその左に小さく下詰めで「〒九三〇-八五五八 富山市桜町一―一―三六/(地鉄ビル内)/TEL(〇七六)四四一―三三三一」郵便番号と市外局番は半角。1行分空けてさらに下詰めで小さく「監 修/遠藤 和子」2行め「絵/高畑  宏」とある。
 次の2冊本を1冊に纏めたものらしい。

 下部に「〈全2巻 42話〉」とあるように、この書影はこの2冊を収める函で、やはり下部に「フルネルレンズ(拡大レンズ)付」とあるように、立山黒部アルペンルート観光に持ち歩くのに荷物にならぬような小型本らしい。
 そうすると、葛飾区立図書館(水元保存庫)所蔵の遠藤和子 監修『立山と黒部の昔ばなし』がそれらしく思われる。葛飾区立図書館OPACに拠ると発行年月は2002年2月、出版社は立山黒部貫光(富山)で註記に「共同刊行:立山貫光ターミナル」とある。第1巻が『立山の昔話』で第2巻が『黒部の昔話』ともに47頁、大きさは15cm。魚津市立図書館OPACには監修者・大きさ・頁数が一致する2冊が所蔵されているが、出版年不明である。実は刊年は入っていなくて、購入(受入)年月を入れたのではないか、と疑っている。
 上記、私の見た1冊本の「立山の昔話」及び「黒部の昔話」はそれぞれ目次1頁に本文46頁の合計47頁である。
 但し1冊本について氷見市図書館OPACは出版年「1999」としている。そうすると葛飾区立図書館の2冊本よりも1冊本の方が早いことになるが、実物を数多く見ないと何とも云えない。
 私が2冊本が先行すると思っている理由は、間違いなく遠藤氏が監修した版よりも前に刊行されていた山口督 絵と文の2冊本(上製本)が存在するからである。
 遠藤氏監修版は後で述べるように本文の記述からして1980年代に書かれたので、図書館OPACデータの1999年或いは2002年をそのまま初刊時期と考える訳には行かぬと思う。私の見た1冊本は、奥付の郵便番号が7桁になっているので、1998年の観光シーズン以降の発行であることは間違いない。葛飾区立図書館の2冊本が見たいところだが、在住在勤もしくは近隣市区在住でないと利用カードを作れない。もちろん取り寄せと云う手もあるのだけれども。(以下続稿)