瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

大和田刑場跡(10)

 ここで11月25日付「清水成夫『八王子ふるさとのむかし話』(06)」に挙げた、『八王子ふるさとのむかし話』の大和田刑場跡に関する記述について確認して置こう。
・清水成夫『八王子ふるさとのむかし話』巻一83~84頁<小宮地区>《12》大和田河原刑場(八王子市大和田町
 83頁下段4行め、3行取り3字半下げで「そ   の   二」とあるがその前に「その一」はない。しかしながらその前の本文全部が「その一」なのだろう。
「その一」は4段落11行。1段落め83頁上段1~6行め、刑場の役人を列挙した箇所は11月17日付「清水成夫 編『八王子周辺の民話』(2)」に挙げた、清水成夫 編『八王子周辺の民話』15頁【11】大和田河原の刑場<八王子市大和田町>の15頁上段9~14行めにほぼ同じなのだが、句読点や括弧が混乱し若干の脱落もあって『八王子周辺の民話』は明快なのに、本書では殆ど意味が通じない。だからわざわざ引用しないで置く。残りの3段落はそのまま抜いて置こう。

 番頭内藤某、近く白山神社に祀ってあ/る。【83上】
 奈良平安鎌倉室町徳川期に至る非人扱/の刑場である。
 後に竹の鼻に移される。


 2段落めは『八王子周辺の民話』15頁下段2~3行め、

 この刑場の番頭は内前某で八王子初期には治安の為に/非常なる活躍をしたものである。

に対応すると思うのだが苗字が違っている。かつ「近く」に「白山神社」が見当らない。
 3段落めは1段落め冒頭(83頁上段1行め)が「昔からの刑場で‥‥」と書き出しているのを妙に時期を引き伸ばして繰り返している。
 4段落めは『八王子周辺の民話』には対応する記述はない。
 続く83頁下段4行め~84頁「その二」は『ふるさと八王子』40~41頁、1章め「ふるさと八王子」の【17】「大和田河原の刑場」(47・10・1)の転載だが出典を示していない。
 この『ふるさと八王子』の「大和田河原の刑場」だが、11月7日付(01)に事故と慰霊碑の件のみ引用して検討した。その前にあった刑場の説明は『八王子周辺の民話』に拠っていると思われる。但し上に挙げた刑場の役人の編成は取り上げていない。
 すなわち、『八王子周辺の民話』の1段落め(15頁上段2~8行め)は『八王子ふるさとのむかし話』の「その一」には採られていないが、『ふるさと八王子』40頁下段4行め~41頁上段1行めには対応する記述がある。但し『八王子周辺の民話』の段落末(7~8行め)「‥‥、また八王子総奉行大久保長安/罪悪発覚するや、子息雲十郎もここで処刑されている。」は『ふるさと八王子』には採られていない。『ふるさと八王子』が挙げる処刑者は41頁上段1行め「大物怪盗大島逸平次*1」のみで、これは大鳥逸平のことだろう。「大島」と誤っているのは『八王子周辺の民話』が15頁上段5行め「怪盗大島逸平次」とするのを踏襲したものと思われる。これは『八王子周辺の民話』の典拠である、八王子市立第八小学校編『郷土のはなし』に淵源するのであろうか。
 それはともかく、この『八王子周辺の民話』の刑場の説明に、新たに戦後の工場の慰霊碑について書き加えた『ふるさと八王子』の記事を、『八王子周辺の民話』の編者であった清水成夫が改めて自著『八王子ふるさとのむかし話』の「その二」に、人名の誤りをそのままにして引用している訳である。
 異同を確認して置こう。その多くは清水氏の誤写と思われる。
・83頁下段5行め「天正十八年八王子城の‥‥」、
 『ふるさと八王子』40頁上段1行め「天正十八年、八王子城の‥‥」
・84頁上段2行め「‥‥/をみせてきた。まちが大きくなるにつれ/‥‥」
 『ふるさと八王子』40頁下段1~2行め「‥‥を見せてき/た。まちが大きくなるにつれ、‥‥」
・84頁上段5~6行め「‥‥大和田橋のたも/と附近(現在の製紙工場構内)に、‥‥」
 『ふるさと八王子』40頁下段5~6行め「‥‥大和田橋のたもと付近(現在/の紙工工場構内)に‥‥」
・84頁上段9行め「雰囲気」『ふるさと八王子』40頁下段8行め、ルビ「ふん い き 」。
・84頁下段1行め「‥‥/大物怪盗大島逸平次も、ここでバツサリ。」
 『ふるさと八王子』41頁上段1行め「‥‥/大物怪盗大島逸平次*2も、ここでバッサリ。」
・84頁下段5~6行め「 製紙工場ができてからは、とかく死亡事故などの大事故が多く、‥‥」
 『ふるさと八王子』41頁上段4~5行め「 紙工工場ができてからは、大きな事故など/が多く、‥‥」
『ふるさと八王子』の「紙工工場」が本書では「製紙工場」となっているのは、初出の八王子市広報「はちおうじ」に連載されていた「ふるさと八王子」では「製紙工場」となっていたのであろう。本書は『ふるさと八王子』刊行前に纏められているので、連載に拠っているはずだからである。「大きな事故などが多く、」も据わりの悪い表現で初出はやはり本書のように「とかく死亡事故などの大事故が多く、」となっていたのではないか。いづれ初出を確認するべきかも知れない。もちろん『ふるさと八王子』での追記[いま]に当たる記述は本書には存しない。或いは[いま]の追加取材の際に、工場側からの指摘を受けて、これらの修正がなされたのかも知れない。(以下続稿)

*1:ルビ「おおしまいつぺい じ 」。

*2:ルビ「おおしまいつぺい じ 」。