瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

杉村顯『信州の口碑と傳説』(08)

・「南信地方」(3)北安曇郡
 昨日の続きで、青木純二『山の傳説 日本アルプスと共通する話を挙げ、典拠と認められそうなものを「←」、主題は同じだが依拠していないものを「≠」で示した。
 274頁9行め~316頁「北安曇郡」9題、但し9番め、294頁8行め~316頁「白馬嶽」は6項に分かれており、合計で15話である。
北安曇郡【1】青木湖の主(274頁9行め~276頁4行め)
  ≠北アルプス篇【63】牝 牛 の 死(青木湖)178頁11行め~179頁
北安曇郡【3】木崎湖の一本波(277頁5行め~280頁)
  ≠北アルプス篇【45】仁科氏の城址木崎湖)123頁7行め~124頁7行め
北安曇郡【4】借  馬  の  櫻(281~283頁)
  ←北アルプス篇【51】刈 馬 村 の 櫻(大 町)147頁3行め~150頁4行め
北安曇郡【6】遊  女  の  碑(286~291頁7行め)
  ←北アルプス篇【54】遊 女 の 碑(針の木峠)154頁6行め~158頁2行め
北安曇郡【8】唐  松  嶽(292頁3行め~294頁7行め)
  ←北アルプス篇【66】巨 人 の 足 跡唐松岳)183頁8行め~185頁
北安曇郡【9】白馬嶽/一 山男の萬の話(296~299頁8行め)
  ←北アルプス篇【30】山  之  坊(白馬岳)79頁11行め~83頁
北安曇郡【9】白馬嶽/二 蓮華溫泉の話(299頁9行め~301頁4行め)
  ←北アルプス篇【33】蓮華溫泉縁起(白馬岳)89頁3行め~91頁7行め
北安曇郡【9】白馬嶽/三 送  り  狼(301頁5行め~303頁8行め)
  ←北アルプス篇【31】蓮華溫泉傳説(白馬岳)84~87頁5行め
北安曇郡【9】白馬嶽/四 血潮に咲く大櫻草(303頁9行め~306頁5行め)
  ←北アルプス篇【29】大  櫻  草(白馬岳)76頁10行め~79頁10行め
北安曇郡【9】白馬嶽/五 雪  女  郎(306頁6行め~311頁6行め)
  ←北アルプス篇【36】雪     女(白馬岳)95頁11行め~99頁
北安曇郡【9】白馬嶽/六 姫  川  の  話(311頁7行め~316頁)
 前半(311頁7行め~313頁)
  ←北アルプス篇【32】姫 川 傳 説(白馬岳)87頁6行め~89頁2行め
 後半(314~316頁)
  ←北アルプス篇【34】姫 川 由 來(白馬岳)91頁8行め~93頁
 詳細は(特に8月16日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(103)」に触れた「雪女」については)追って検討することにするが、1つ注意して置きたいのは「白馬嶽」は信濃越中越後国境(長野・富山・新潟県境)に跨がっており、「一」の山之坊、「二」「三」の蓮華温泉は、『信州百物語』の「蓮華温泉の怪話」について2011年1月11日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(05)」や2018年8月13日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(32)」に触れたように、長野県北安曇郡ではなく、新潟県西頸城郡小滝村である。2019年8月11日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(098)」にも触れたが、『山の傳説』は「日本アルプス篇」と云う副題から察せられるように、範囲を信州(長野県)に限ってはいないので越後の話が混ざっても構わない。そもそも「北アルプス篇」78話中、29~37話めの「白馬岳」の前、28話めまでは、立山黒部峡谷など越中富山県)を舞台とする話なのである(何故か15話め「高山町の祭(飛驒高山)」のみ飛驒)。杉村氏は白馬岳=信州と単純に考えて越後の話だとは意識せずに含めてしまったのかも知れないが、やはり、しかるべく排除して置くべきであったろう。
 前回、青木氏が依拠し、本書も利用している共通の典拠に触れたが、この本は白馬岳を取り上げていない。『山の傳説』には29話めから37話めまで9話、場所を(白馬岳)とする話が載るが本書にはそのうち7話、そして姉妹篇の『信州百物語』に「蓮華温泉の怪話」が採られ、杉村氏の著書に見えないのは、
北アルプス篇【35】山 う ば の 里(白馬岳)94~95頁10行め
の1話のみである。この点からも、杉村氏が『山の傳説』に依拠したことは確実と思われるのである。(以下続稿)