・銀河テレビ小説「たけしくんハイ!」シナリオとの異同(30)
昨日の続き。
・第9回(5)古田⑥
昨日見たようにTVドラマでは、刑事が2人、西野家を訪ねて、真利子(木の実ナナ)と菊(千石規子)に、古田(綾田俊樹)が「あっちこっちで、うるしの輸出会社を作るという話をふれ歩いて」出資金として金を騙し取る「サギ」を働いて「指名手配になって」いると聞かせる場面が、大介(仙田信也)の一家が潰れた家の前で茫然としているシーンの前になっている。
ここで注意されるのは、古田に合計で「五千円出しちゃったの」が「二日前」のこととなっていることである。古田が最初に訪問したときに、竹次郎(林隆三)と真利子が秀二郎(松田洋治)とたけし(小磯勝弥)にお年玉を出させて1500円渡しており、その後、1月29日付(32)に見たように雨の日に古田が急に訪ねて来て、1月25日付(28)に見たように真利子が松原源治(金田龍之介)に借りた、残りの3500円を受け取っている。
【1】古田に合計5000円渡す。
【2】西野家・オモチャ屋で宮森家への「およばれ」が話題になる。
【3】宮森圭子の御誕生日会
【4】山上大介の家を潰す。古田の話が詐欺だったと判る。
私は当初、これらの出来事はそれぞれ別の日のことだと思っていた。【3】は1月31日付(34)に「●道(翌日・午前)」とあるから、【2】と【3】が連続する別の日であることは確実である。そうすると、
【1】=【2】二日前/【3】前日/【4】当日
【1】二日前/【2】前日/【3】=【4】当日
の2通りの可能性が考えられる。TVドラマを再見する機会があったら、【3】と【4】のたけしや健一・敏夫などの服装を確認して見よう。いや『シナリオ』には「二日前」とあるのだが、TVドラマでは不自然だと考えて省略したであろうか。「指名手配」がどのような段取りで決まるのか知らないが「二日前」では少々急過ぎるような気もする。いや、西野家の人々は交番を通り掛かっても、指名手配犯の張紙をしげしげと眺めたりしなかったので、実はそれ以前から指名手配になっていて、古田は逃げ回りながら、最後に西野家の金を巻き上げに来たのかも知れない。
それにしてもどこで、1月20日付(23)に見たような、英文タイプの注文書を仕入れたのであろうか。この出資金詐欺の主犯は本当に古田なのだろうか。
西野家を訪ねて来た刑事たちは古田が指名手配になっていることしか伝えていない。しかし、職人上りの男がここまで手の込んだ詐欺を思い付くものだろうか。
竹次郎と違って小学校はしっかり卒えているようだが、古田も漆職人なのだから高等教育は受けていないはずである。しかし、この詐欺の話は結局解明されないまま、松原源治にいつ借金を返したのかも有耶無耶なままになっている。
それはともかく、英文の注文書が1954年10月1日付だったから、この詐欺が実行に移された時期は昭和29年10月、約3ヶ月で西野家に辿り着いたことになる。(以下続稿)