瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

池内紀『記憶の海辺』(2)

 昨日の続き。
・初出と細目
 本書の成立については、354~355頁「あとがき」に次のように述べてあります。354頁10行め~355頁4行め、

 はじまりは月刊誌『ユリイカ』の連載だった。二〇一五年五月号から一八回つづけた。それか/【354】ら二年ちかく眠らせていた。このたび取り出して少し加筆し、かなり削除した。これまでさまざ/まな場に書いてきた小さなエッセイが、記憶の海の小島のようにちらばっている。それぞれを書/いていたとき、いずれどこかに漂着するような予感、あるいは希望を感じていたが、思いがか/なった気がする。‥‥


 本書の刊行は2017年12月、「あとがき」は355頁7行め、その2ヶ月前の「二〇一七年一〇月」付です。そうすると「二〇一五年五月」からだと確かに「二年」だけれども、連載が終わったのは355頁の裏、奥付の前の頁に、下部中央に小さく、

初出『ユリイカ』(青土社)二〇一五年五月号―二〇一六年一〇月号

とあるように「あとがき」の1年前です。「それ」すなわち連載終了「から一年ちかく眠らせていた」とするべきではないでしょうか。どうも、5月8日付「池内紀「雑司が谷 わが夢の町」(3)」に引いた、中公新書2023『東京ひとり散歩』の「あとがき」にあるように、池内氏は単純な確認が苦手、と云うか、わざと詰めないようにしていたらしいのです。
 それはともかく「かなり削除した」と云うのが気になります。――「ユリイカ」は隣の市の図書館に10年間、保管されていて、2020年11月6日付「赤いマント(299)」に取り上げた2010年7月号「特集*田辺聖子」は、廃棄直前に借りることが出来たのでした。今、蔵書検索して見るに、一番古いのは2011年5月号になっておりました。それ以前の号は廃棄されてしまった訳です。しかし2015年から2016年であればもうしばらく猶予がありますから、今、隣の市の図書館は在住・在勤者にしか本の貸出をしておりませんが、通常サーヴィスが再開されたら初出も確認することとしましょう。
 そして、そのときの見当のために、それから細目を兼ねて、本書と連載の18回との対応関係を推定して置こうと思うのです。初出を見て、題などに大きな異同がなければ、ここに加筆することにしますし、異同が大きければ、別に改めて対応表を示すこととしましょう。
 見返し(遊紙)は濃い灰色の布目、次いで扉、薄い漆喰風のエンボスの用紙に、青緑色の明朝体縦組みで右上にやや大きく標題、右上隅に著者名、左下に小さく副題、左下隅にさらに小さく版元名。標題の文字は淡くなったところがあり記憶の曖昧さを表現しているようです。そして1頁(頁付なし)中扉は上部中央に「記憶の海辺 一つの同時代史」と本文活字より若干大きい程度。
 以下の【番号】は検索の便宜のために仮に附したものです。
【1】「はじめに ――「糞石」のこと」3~13頁
   初出「ユリイカ」2015年5月号
 14頁(頁付なし)下部中央に「イラスト 池内 紀 /装丁   細野綾子」とある。
 15頁(頁付なし)「記憶の海辺 目次」の扉。16~17頁(頁付なし)に細目。
 19頁(頁付なし)「Ⅰ」の扉。以下3部に分かれており、扉にはローマ数字の上に池内氏のカット。
【2】「38度線 ――戦争は儲かる」20~44頁
   初出「ユリイカ」2015年6月号
【3】「ネヴァーランド ――「もはや〝戦後〟ではない」」45~62頁
   初出「ユリイカ」2015年7月号
【4】「「神様のノラクラ者」 ――ある猶予期間」63~79頁
   初出「ユリイカ」2015年8月号
【5】「「プラハの春 ――才能の行方」80~98頁
   初出「ユリイカ」2015年9月号
【6】「赤い靴と白い靴 ――フラウ・ブロノルドのこと」99~117頁
   初出「ユリイカ」2015年10月号
 119頁(頁付なし)「Ⅱ」部の扉。 
【7】「港の見える丘 ――小林太市郎のこと」120~140頁
   初出「ユリイカ」2015年11月号
【8】「東京地図帳 ――日本シリーズ第四戦」141~159頁
   初出「ユリイカ」2015年12月号
【9】「ビリヤードの球とトカゲの尻尾 ――諷刺の文学」160~177頁
   初出「ユリイカ」2016年1月号
【10】「中心と辺境 ――ウィーンの世紀末」178~197頁
   初出「ユリイカ」2016年2月号
【11】「メフィストの小旅行 ――東京大学」198~220頁
   初出「ユリイカ」2016年3月号
【12】「一人二役 ――翻訳について」221~239頁
   初出「ユリイカ」2016年4月号
 241頁(頁付なし)「Ⅲ」部の扉。
【13】「レニ会見記 ――「運命の星」について」242~264頁
   初出「ユリイカ」2016年5月号
【14】「G・グラス大いに語る ――沈黙の罪」265~282頁
   初出「ユリイカ」2016年6月号
【15】「一日の王 ――山と川と海」283~299頁
   初出「ユリイカ」2016年7月号
【16】「「こんばんは、ゲーテさん」 ――『ファウスト』訳」300~318頁
   初出「ユリイカ」2016年8月号
【17】「海辺のカフカ ――つとめ終えること」319~335頁
   初出「ユリイカ」2016年9月号
 「目次」7頁7行めと8行めの間に1行分空白があり、副題と同じ大きさで「おわりに」とあるが、本文での体裁は他の章と変わりなく「Ⅲ」部との切れ目も特にない。
【18】「おわりに ――I・O氏の生活と意見」336~44頁
   初出「ユリイカ」2016年10月号
「あとがき」と初出については既に記しました。そして奥付の後に白紙3頁。(以下続稿)