3月15日付(2)の続き。
私の参照した岩波文庫旧版(番匠谷英一譯)旺文社文庫(植田敏郎訳)岩波文庫新版(丸山匠訳)は、それぞれ1頁(頁付なし)が扉、扉の裏(頁付なし)には岩波文庫(新版)のみ上部に「ALT-HEIDELBERG/1901/Wilhelm Meyer-Förster」と中央揃えで入る。旺文社文庫は3頁「目 次」、岩波文庫(新版)も3頁(頁付なし)「目 次」、岩波文庫(旧版)は3〜4頁(頁付なし)「人 物」、旺文社文庫は4〜5頁「登 場 人 物」、岩波文庫(新版)も4〜5頁の見開きが「登 場 人 物」である*1。
・登場人物
まづ、登場人物の一覧を岩波文庫(旧版)にて示し、仮に番号を丸数字で附して、後に異同を指摘することとする。
人 物*2
カル・ハインリヒ、ザクセン=カルスブルク公子 ①
國務卿フォン・ハウク、閣下 ②
宮内卿フォン・パサルヂュ男爵、閣下 ③
侍從フォン・メツィング男爵 ④
侍從フォン・ブライテンベルク男爵 ⑤
哲學博士ユトナー ⑥
ルツ、屬官 ⑦
デートレフ・フォン・アスターベルク伯爵 ⑧
カル・ビルツ }「ザクソニア」學生團員 ⑨
クルト・エンゲルブレヒト ⑩
フォン・ヴェデル、ザクセン=プロイセン學生團員 ⑪
リューダー、亭主 ⑫
リューダーの妻 ⑬
デルフェルの妻、彼女の伯母 ⑭
ケラーマン ⑮
ケーティー ⑯
シェラーマン ⑰
グランツ }大公家從僕 ⑱
ロイター ⑲
侍從、士官、學生、樂手、使用人等。 ⑳
第二、三幕間には數ケ月、第三、四幕間には約二ケ年の間隔*3あり。
「 }」は前後3人を一括しているのだが、再現できないのでここでは中央の1人にのみ掛けてある。
①旺文社文庫・岩波文庫新版(新版)は「カール・ハインリヒ」、旺文社文庫「 ザクセン=カールスブルク公子」岩波文庫(新版)「 ザクセン=カールスブルク公国の皇太子」。人名と役職の間を旺文社文庫は1字分、岩波文庫(新版)は2字分空けている。
3月12日付(1)に紹介した岩波文庫(旧版)の帯にも「皇太子」とあったが、2012年2月7日付「中島敦の文庫本(10)」にも述べたように、皇帝や天皇の太子だから皇太子なのであって、大公国の世子(太子)をこのように呼ぶのは適当ではない。しかしただの「公子」では「Erbprinz」の訳としては足りない。
なお、ザクセンとあるが、恐らく現在のザクセン州ではない。ザクセン選帝侯(ヴェッティン家)領は1485年にエルンストとアルブレヒトの兄弟で分割され、アルブレヒトの家系(ヴェッティン家アルベルティン系)は分割されずに1806年、ザクセン王国となり、ウィーン条約で領土の北半分を失うも、第一次世界大戦によるドイツ帝国崩壊まで存続し、その後ザクセン州となった。エルンストの家系(ヴェッティン家エルネスティン系)の領土は分割されてザクセン=ヴァイマル=アイゼナハ大公国、ザクセン=マイニンゲン公国、ザクセン=アルテンブルク公国、ザクセン=コーブルク=ゴータ公国の4つの領邦となっている。いづれもザクセンを冠しているが、ヴェッティン家の領土であったテューリンゲン方伯領が分割されたもので、所在はいづれもテューリンゲン地方である。すなわち、ザクセン=カールスブルク大公国と云うのも、現在のテューリンゲン州に存在した「ザクセン=×××公国」の1つとして想定されているのであろう。
②旺文社文庫「国務大臣」岩波文庫(新版)「国務長官」。
③旺文社文庫「宮内大臣フォン・パッサルジュ男爵 閣下」岩波文庫(新版)「式部長官フォン・パサルジュ男爵 閣下」
④旺文社文庫「フォン・メッツィング男爵 侍従」岩波文庫(新版)「侍従フォン・メッツィング男爵」
⑤旺文社文庫はやはり「侍従」を後に回す。
⑥旺文社文庫「ドクター・ユットナー 公子の教育係」岩波文庫(新版)「ユットナー博士」
⑦旺文社文庫「ルッツ 近侍」岩波文庫(新版)「ルッツ 内侍」
⑨「カール・ビルツ」旺文社文庫「「ザクセン」学生団員」岩波文庫(新版)「「ザクソニア」学生団員」
⑩岩波文庫(新版)はここまでが4頁。
⑪旺文社文庫「 「ザクセン=プロイセン」学生団員」岩波文庫(新版)「 「ザクセン・プロイセン」学生団員」
⑫旺文社文庫「 宿屋の主人」岩波文庫(新版)「 旅亭の主人」
⑬ともに「リューダー夫人」。岩波文庫(旧版)はここまでが3頁。
⑭「デルフェル夫人」旺文社文庫「 そのおば」岩波文庫(新版)「 リューダー夫人の伯母」
⑮旺文社文庫「 学生のしもべ」。旺文社文庫はここまでが4頁。
⑯旺文社文庫「ケティー リューダー夫人のめい」岩波文庫(新版)「ケーティ」
⑰ともに「シェーラーマン」
⑱旺文社文庫「大公の従僕」岩波文庫(新版)「大公宮廷の従僕」
⑳ともに字下げなし。旺文社文庫「楽師、召使」岩波文庫(新版)「楽士、従僕など。」
旺文社文庫は2行、岩波文庫(新版)は1行分空白があって、旺文社文庫はやや小さく字下げなしで、
第二幕と第三幕の間には数か月、第三幕と第四幕の間には二年の間隔がある。
とある。
岩波文庫(新版)は6字下げで小さく、
第二幕と第三幕のあいだには数カ月、第三幕と第四幕のあいだではほぼ二年が経/過している。
とある。(以下続稿)