瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(181)

・叢書東北の声44『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』(4)未収録作品について
 12月9日付(178)から本書を取り上げているので(4)とした。
 この他に、土方正志「解説 杉村顕道の足跡」の気になったところとしては、昨日の引用の続き、480頁下段9行め~482頁上段1行め*1

 一九三四年、長野で娶った最初の妻・弘子と共/に北の果て、樺太(現ロシア共和国サハリン州)/へ。豊原(現ユジノサハリンスク)の樺太庁豊原/高等女学校に職を得たのである。教師生活のかた/わら、ここでもやはり顕道は筆を執る。樺太での/見聞を『新・樺太風土記』として刊行もすれば/「サンデー毎日」の懸賞小説に投稿して入選。歌/手・東海林太郎の『ふるさと欲しや』『海のみな/し児』『北の国境線』の歌詞も、この時代の顕道/の仕事である。アイヌ語の調査のために樺太を旅/【480】していた金田一京助との再会もあった。


 この辺りは2019年8月17日付(104)に一部を引いた、杉村翠の談話「父・顕道を語る」に拠っている。但し金田一京助との再会のことは語っていないから、附載の「金田一京助 杉村顕道未刊行和訳唐詩選序文」の記述により補ったのであろう。
 1点気になるのは「「サンデー毎日」の懸賞小説に投稿して入選」の件である。これについては2019年8月8日付(095)及び2019年8月9日付(096)等に述べたように、東雅夫は『山怪実話大全』第三刷の「編者解説」の【追記】等にて、昭和3年(1928)の「一頁古今事實怪談」懸賞募集入選の白銀冴太郎「深夜の客」と見ているのだけれども、これは2018年11月28日付(068)の後半に述べたように、杉村氏の樺太時代の「サンデー毎日」第15年54号(昭和11年11月5日)に掲載された、第19回「大衆文藝」選外「佳作」、杉村顯「先生と青春」であろう。――本書には「先生と青春」は採用されていないが、版元「荒蝦夷」HPの2021/7/2「新刊のご案内:2021年7月16日発売/杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙」の最後に、

『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』を荒蝦夷よりお買上げの/みなさん先着100名様に、下記の特典附録を進呈いたします。
 
① 本書未収録短編『青春記』(『女学校物語』所収)
杉村惇(本書装画)作品カード1枚 *絵柄はおまかせください。
特典附録付『杉村顕道作品集 伊達政宗の手紙』ご購入の方は、荒蝦夷書籍販売ページから

とあって、本書収録「女学校物語」と抱き合わせてあった作品が冊子の特典附録となっており、また、484頁下段4~7行めに、

・・・・。戦後の混乱期には『怪談/十五夜』『新 坊ちゃん伝』『女学校物語』『嵐の中/の天使』『からくれない』『緋牡丹の歌』『未亡人』/などなどさまざまな小説を出版。・・・・

とあるから、まだまだ続刊の可能性がある。ちなみにこの辺りの記述も杉村翠の談話「父・顕道を語る」*2に拠っている。――それはともかく、これらの小説本、国立国会図書館サーチで検索しても、
・『新坊ちやん傳』昭和22年3月・定価25円・友文堂書房(仙台)・187頁*3
・『女学校物語 ユーモア小説』昭和22年3月20日・野村書房(仙台)・装幀 杉村惇・142頁
の2点しかヒットしない。そして、今回、特典附録も含めてこの2冊が漸く74年振りに復刊されただけなのである。484頁下段13~14行めに、

 だが、後年の著作は私家版がほとんどを占め、多くの読者の手に渡ることはなかった。・・・・

とあるが、むしろ後年の私家版(非売品)の方が、市販はされなかったとしても国立国会図書館に献本されていて(全てではないかも知れないが)閲覧は出来る。仙台文学館(及び宮城県立図書館)にもやはり多く所蔵されている。むしろ戦後の混乱期の小説本の方が遙かに稀覯なのである。――従って、いづれこれらを集成した第3弾に「先生と青春」も収録されるであろうことを期待して、気長に待つこととしよう。(以下続稿)

*1:481頁は図版、詳細は後日記事にする予定。

*2:12月18日追記】当初「の446頁上段3~11行め、」と続けて、原文を引用していたが、2019年9月19日付(122)に引用済みだったので削除し「この辺りの記述は」の「は」を「も」に改めた。

*3:12月18日追記】標題の小書き「ゃ」を321頁(頁付なし)の書影に合せて「や」に直した。