瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

赤堀又次郎伝記考証(38)

・『書物通の書物随筆』第一巻『赤堀又次郎『読史随筆』』(8)
 佐藤哲彦「解題」の「赤堀又次郎について」の検討の続き。しばらくブログ記事に言及していなかったが、当記事では4月20日付(30)に与えた整理番号により、これにHNを添えた4月21日付(31)の冒頭に断ったような形式で触れている。こんな風にしない方が良かったかも知れないが。
 ⅲ頁3~5行め、

 この後、彼は斎藤清輔の『日本百科大辞典』(明治四十一―大正八年刊)の作成に協力し斎藤清輔『辞書生活五十年史』)、/日本図書館協会の前身の日本文庫協会で活躍したことは前述した。さらに、歴史史料の校訂(『心学叢書』)や新聞・雑/誌連載を手がけるなど、‥‥


 そして3月28日付(07)に見た、村嶋英治「最初のタイ留学日本人織田得能(生田得能)と近代化途上のタイ仏教」に引かれている『紙魚の跡』と伊藤正雄『忘れ得ぬ国文学者たち』を援用した評があって、この段落の最後は、7~8行め「‥/‥。森銑三も『明治人物夜話』で「(赤堀)翁は学界のすね者ともいうべき人であった」(岩波版新編 二三五頁)と述べ/ている。」との一文でこの段落を締め括っている。
 この辺りは刊行の1ヶ月半前に投稿されたブログ記事【⑧神保町】に拠っている。そのため、調査執筆期間の短かったための弊害が現れている。
 【⑧神保町】すなわちHN「神保町のオタ」のブログ「神保町系オタオタ日記」の2011-07-03「赤堀又次郎と田中稲城」は、森銑三『明治人物夜話』の「斎藤精輔氏の自伝」に、斎藤精輔(1868.七.十一~1937.5.13)の自伝『辞書生活五十年史』に赤堀氏が登場することが指摘されていることを紹介したもので、森氏が省略している『辞書生活五十年史』の章節も示している。

 佐藤氏はこの記事に拠り岩波文庫31-153-3、森銑三著/小出昌洋 編『新編 明治人物夜話』(2001年8月17日 第1刷発行・定価760円・447頁)に収録された「斎藤精輔氏の自伝」に当っている。2005-11-15「岩波文庫『新編明治人物夜話』(森銑三著)中「夏目漱石と文芸委員会」」からするとHN「神保町のオタ」もこの『新編』に拠っているらしい。しかし「夏目漱石と文芸委員会」は元来『明治人物閑話』に入っていたので、どうも落ち着かない。そこで初刊本も見てみた。講談社文庫版の『明治人物夜話』も以前見たような気がするのだが『近世人物夜話』の講談社文庫版か、或いは中公文庫版『明治人物閑話』初版の記憶違いのような気もする。
森銑三『明治人物夜話』昭和四十四年九月 三日 印刷・昭和四十四年九月十六日 発行・定価 七百円・東京美術・前付+248頁・B6判上製本*1
 150~155頁「斎藤精輔氏の自伝」は「七」節に初出にはなかったと思しき「追記」から成る。これは『新編』226~237頁も同じ。
 初出については、初刊本242~245頁「後  記」に、244頁上段10~11行め「 斎藤精輔氏の自伝 「ももんが」昭和三十八年三月号に/寄せた。」とある。『新編』425~447頁、小出昌洋「編後附言」では436頁6~9行め、

 「斎藤精輔氏の自伝」は『ももんが』昭和三十八年三月号に掲載された「三篇」のう/ちの「一つの自伝」を、のち改題して『明治人物夜話』に収録された。著作集続編第五/巻所収。斎藤精輔氏の自伝、すなわち『辞書生活五十年史』は、その後図書出版社より/ビブリオフィル叢書の一冊として刊行されている。

とある。「一」の冒頭を抜いて置こう。初刊本150頁上段3~10行め、

 昨年(昭和三十七年)の秋、某誌に「三省堂の日本文学/大辞典」と題する短文を寄せて、わが国最初の右百科大辞/典全十巻が、今日見ても内容が優秀で、大きな利用価値を/有することを説いて、その編纂者であつた斎藤精輔氏の功/績のいかに大きなものがあるかにいひ及んだ。さうしたら/その反響があつた。稲村徹元君から、かういふ本がありま/す、とのことで、「辞書生活五十年史」と題する書物を貸/与せられた。‥‥


 『新編』226頁3~8行め*2は、

 昨年の秋、某誌(『日本古書通信』昭和三十七年十一月号)に「三省堂の日本百科大辞典」/と題する短文を寄せて、\わが国最初の右『百科大辞典』全十巻が、今日見ても内容が優/秀で、大きな利用価値を有することを説いて、そ\の編纂者であった斎藤精輔氏の功績の/いかに大きなものがあるかにいい及んだ。そうしたらその反響があった。\稲村徹元君か/ら、こういう本があります、とのことで、『辞書生活五十年史』と題する書物を貸与せ/られた。‥\‥*3

と現代仮名遣いにし、「某誌」を註記し「文学」を「百科」に訂正している。但し初刊本でも以下は全て「百科」である。どうせなら「三省堂の日本百科大辞典」も附載するか、せめて著作集の何処に収まっているか註記して欲しかったと思う。まぁ検索したら続編第十二巻とすぐに分かったけれども。
 内容は「一」の残りと「二」の前半がこの本が謄写刷で刊行された意味について考えを巡らし、「二」の後半は体裁から内容に就いて述べて「四」まで、「五」は中井錦城についての記述を抜き、そして「六」と「七」の前半に、赤堀氏に触れている。「七」の後半は稲村氏の入手に関する識語を紹介している。(以下続稿)

*1:9月4日追記】年号2箇所を何故か「明治」と誤っていたのを「昭和」に訂正。当時余程草臥れていたものと見える。

*2:6月4日追記】これは『森銑三著作集』続編 第五巻所収の歴史的仮名遣いの本文を現代仮名遣いに改めたものである(579頁3~6行め)。その改行位置を「\」で追加した。

*3:ルビ「//へんさん・せいすけ/てつげん//」。