瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

颱風ウォーキング

 昨日は職場を出る時機を誤って、16時25分に駅に行ったらJRは止まっており、振替乗車票を貰って地下鉄に乗ったものの途中駅で停止、しかし運転再開した後に山手線内にいると混雑に巻き込まれると思って、少しでも山手線から離れた駅に進んで運転再開を待ちたいと血迷って、17時前から18時にかけて、3駅分歩いたのである。アホである。
 これが復旧の見込みがないのなら、レストランかどこかにいれば良かったのである。手持ちが510円しかなかったが、一番安いのを頼んで粘ればいい。しかし、晩には台風は通過して絶対に復旧する、と思ったのが、いけなかった。
 が、後悔はしていない。もうあんな風雨の中を歩くなんて体験はもう出来ないだろう。東西に走る道を、南からの強風を避けるよう南側の歩道を進んだのだが、10mごとに駄目になったビニル傘が捨てられているのを見るにつけ、16骨傘を用意していた自分の周到さを密かに誇っていた。脇道で南の風避けになる家並みが途切れる度に、すさまじい風雨が通りに吹き込み、通過し兼ねて立ち止まっている人を余所に、傘の柄の本末をそれぞれ持って踏ん張りながらずんずん通り抜けたのであったが、しかしそんな調子の良い歩行も呆気なく終わった。何かの施設で、歩道の横が駐車場か何かになっていて(ゆっくり確認する余裕はなかったので)建物が道に沿ってない歩道に差し掛かった。ここまでは南風を建物で避けられたのだが、ここで建物から離れたことで、忽ち背後からの予期せぬ風に煽られて、自慢(?)の16骨はメリメリと音を立てて折れ曲がり、受け骨が親骨から外れて垂れ下がって来たのである。そうなると、凶器だ。安物のビニル傘なら、曲がった骨も怖くない。しかし、16骨は骨だらけなのだ。骨は駄目になっても進行方向にかざして進もうとしたが、正面から風を受けたとき、受け骨が、喉仏に当たった。これがもう少々強い突風であったら、ぷすっ、と、刺さっていたかも知れない。そして、

 21日午後5時×分頃、東京都××区××の路上に男性が倒れているとの通報があった。消防が駆けつけたところ、壊れた傘に抱き付くようにして血まみれになって倒れている意識不明の男性を発見し、病院に搬送したが既に死亡していた。持っていた保険証によると男性は■■■■さん(40)。警察では、持っていた傘が風に煽られて骨が折れた拍子に、折れた骨を自分の喉に突き刺してしまったものと見ている。今回の台風で都内の死者は初めて。

という記事が出ていたかも知れない。幸い、そうはならなかった。それで駄目になった傘は持っていると凶器になりかねないので建物の陰に放置し(申し訳ないです)、路傍に落ちていたビニル傘を拾って、めくれ上がって「おちょこ」になった傘の骨を、力ずくでもとの反りに戻して、ただ受け骨が駄目になっているから普通には差せないのだが、それでも雨風だけは避けて、なんとか目的の駅に辿り着いた。全身ずぶ濡れになった。そして、それなりの強い降り方では濡れ鼠にはならないものだと実感した(7月25日付)。
 ここまで来て、今更レストランで落ち着こうとは思わない。財布も濡れていたので札を持っていなかったのは幸いであった。それから財布が高級品でなかったことも。いや全身、スラックス以外安物なのだが。19時にはもう雨も上がっていた。しかし2時間待たされることになった。が、改札は通行可能で、ホームも朝よりも空いており、座れないまでも停車している列車内に入って待つことが出来たのは良かった。そうでないとここまで歩いた甲斐がない。濡れた服も乾いた。しかし動き出して後が、停車駅ごとに無理に乗り込む客たちによって殺人的な混雑になって大変だった。帰ってから、肩と膝を擦り剥いていたことに気付いた。