瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松本清張『内海の輪』(1)

・角川文庫3251(1)
『内海の輪』昭和四十九年五月二十日初版発行・昭和五十九年六月三十日二十三版発行・292頁
 内容については、先月刊行された光文社文庫版と比較しつつ述べることとしたい。

内海の輪―松本清張プレミアム・ミステリー (光文社文庫)

内海の輪―松本清張プレミアム・ミステリー (光文社文庫)

 さて、私が見たのは二十三版であるが、これに定価340円のカバーと、定価380円のカバーの2種類があるのである。
 カバー表紙は同じ。上部に赤みがかった桃色の長方形に明朝体で標題/ゴシック体で著者名、この下に二重瞼の右眼が描かれたバックミラー(室内後写鏡)、肌色ではなく空色で右側が明るい。背景は上が黄緑で下が水色のグラデーションで、下部に瀬戸内海のような緑の島か岬が3つある。最下部中央に4つ穴のボタンの写真が嵌め込まれる。
 背表紙、上部に明朝体白抜きで標題、中央やや下にやはり明朝体白抜き著者名、下部にゴシック体で「角川文庫 緑 二二七 」横並びで「―24 ―」すぐ下に定価の数字がゴシック体で入るが、「340」とあるものは地色が上は黒、下は白、著者名の辺りまでは黒でその下からグラデーションで白くしている。一方「380」とある方は赤地。
 カバー裏表紙、定価340円の方は赤みがかった桃色地で、最上部中央にやや横長のゴシック体で「内海の輪・松本清張」とあり、下部に1行「ISBN4-04-122724-0 C0193 \340E 定価340円」とある。定価380円の方は白地で、上部に1行、ISBNコードとCコードに「\380E 定価380円」とある。
 カバー表紙折返しは白地で、上部に横組みで「内海の輪」と題して少し空けて明朝体13行(1行17字)の紹介文で4行・7行・2行の3段落(冒頭1字下げ)。下部に定価340円のものは「月刊小説王」の広告、定価380円のものは「月刊カドカワ」の広告。「月刊小説王」も「月刊カドカワ」も前年から刊行が始まった雑誌で、この二十三版に広告があってもおかしくない。最下部右寄りに「カバー 伊藤憲治」とある。
 カバー裏表紙折返しに横組み、左下に「カバー 暁印刷」右下にKBマーク。上部に「角川文庫松本清張作品集」とあって、以下左右2列に明朝体で列挙、定価340円の方は「或る「小倉日記」伝  顔・白い闇/カルネアデスの舟板  無宿人別帳/真贋の森  小説帝銀事件/かげろう絵図(前)  かげろう絵図(後)/霧の旗  佐渡流人行/徳川家康  黒い福音/落差  天保図録(上)/天保図録(中)  天保図録(下)/考える葉  神と野獣の日/アムステルダム運河殺人事件  人間水域/葦の浮船  日光中宮祠事件/内海の輪  二重葉脈/生けるパスカル  聞かなかった場所/彩色江戸切絵図  山峡の章/水の炎  混声の森(上)/混声の森(下)  影の車/北の詩人」の33冊。定価380円の方は分冊になっているものはまとめてあって「或る「小倉日記」伝 顔・白い闇/カルネアデスの舟板 無宿人別帳/真贋の森 小説帝銀事件/かげろう絵図(前)(後) 霧の旗/佐渡流人行 徳川家康/黒い福音 落差/天保図録(上)(中)(下) 考える葉/神と野獣の日 アムステルダム運河殺人事件/人間水域 葦の浮船/日光中宮祠事件 内海の輪/二重葉脈 生けるパスカル/聞かなかった場所 彩色江戸切絵図/山峡の章 水の炎/混声の森(上)(下) 影の車/北の詩人 地の指(上)(下)/死の発送 翳った旋舞/美しき闘争(上)(下) 延命の負債/軍師の境遇 乱灯江戸影絵(上)(中)(下)/失踪の果て」の37点45冊、8点12冊が定価380円のカバーで追加されている訳である。
松本清張全集 (66) 老公 短篇6

松本清張全集 (66) 老公 短篇6

 これについて、『松本清張全集』66「老公 短篇6」(1996年3月30日第1刷・文藝春秋・646頁)625〜643頁の「著書目録」を見るに、ほぼ刊行順に並んでいることが分かる。乱れているのは「霧の旗 佐渡流人行 徳川家康 黒い福音 落差」の並びで、刊行順にすると『佐渡流人行』『徳川家康』『霧の旗』『落差』『黒い福音』となる。なお、本書は背表紙に「―24―」の番号があるがここでは20点め23冊めに挙がり、この「著書目録」でも角川文庫の23番めである。この番号のズレが何故生じたのかも、見当が付かないので、今は注意するだけにして置く。
 さて、定価340円のカバーの時期であるが、裏表紙折返しの最後『北の詩人』は昭和58年(1983)6月10日刊で二十三版のちょうど1年前の刊行、表紙折返しの「月刊小説王」は3月6日付「角川文庫の「月刊小説王」の広告(1)」で見たように昭和58年9月創刊、これが上限である。そして、『北の詩人』の次に角川文庫に収録された『地の指』上・下は昭和59年(1984)8月25日刊、これが下限である。まさに二十三版のカバーとして申し分のない、何の疑問もないものである。尤も、条件としては、初版から10年の間に二十三版と増刷を重ねている本書のことであるから、このカバーが二十三版だけでなくその前の、昭和58年(1983)9月頃以降の増刷、例えば1つ前の二十二版などに掛かっていてもおかしくない。
 一方、定価380円のカバーの最後『失踪の果て』は昭和62年(1987)10月25日刊、その次が昭和63年(1988)12月10日刊『野盗伝奇』。すなわち定価380円のカバーは二十三版から3年4ヶ月余りを経た時期(下限は4年半後)のものなのである*1。それにしても、この間にも本書は増刷されたろうに、何故こんな後のカバーが掛かっているのか、等という疑問も感じるのであるが、それは今後の課題とする。一応「返本されたものを新しいカバーに掛け替えて再出荷した」と想像するのであるが、やはり、何だか腑に落ちない。(以下続稿)

*1:3月9日追記】この一文、1年ズレていたので修正した。