瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

中田薫『廃墟探訪』(7)

 7月21日付(5)の続き。
 133頁のCOLUMN No.05「廃墟と幽霊話/Ghost story and the Ruins 」は横組みで左右2列、中央に縦組みで「廃墟にまつわる幽霊噂/廃墟幽霊本当にいるのか?」とある(黒字は原本では白抜き)。
 段落の頭ごとにドロップキャップ(2行分×3字分)になっており、①「鬼」133頁左1〜9行め、②「例」133頁左10〜26行め、③「だ」133頁左27〜40行め・右1〜8行め、④「廃」133頁右9〜24行め、⑤「鬼」133頁右25〜31行め、⑥「廃」133頁右32〜35行め。
 まず①の部分だが、ここは「現代怪奇解体新書」91頁中段20行め〜下段13行めの段落と、その次の91頁下段14〜16行めの段落に相当する。下段14行めからの段落(=①133頁左7行め「現実に」から)は「するものだ。」が「するものである。」に書き換えられているのみであるが、下段13行めまでの段落は既に見たように「まえがきにかえて――妖しの廃墟を訪ねて」に取り込まれていたこともあってか、かなり書き換えられている。

気、妖気を発する不気味な廃墟に人/は恐怖する。荒れ果てた外観や陰湿/な内部に、惨劇の館、非業の館を思い浮か/べる。人に悪魔の棲家を想像させる魔力が/廃墟にはある。だが、街の噂として語られる/お化け屋敷というのは、調べてみれば無実/である場合がほとんどだ。現実に‥‥


 この引用のうち4〜7行めは「現代怪奇解体新書」91頁下段4〜8行め「‥‥。だが、見る者にそのよう/に想起させるネガティブなパワーが廃墟に/はある。いわゆる街の噂として語られるお/化け屋敷というのは、無実の罪を被ってい/る物件がほとんどだが、‥‥」とほぼそのままである。
 ②はほぼ同じ。「現代怪奇解体新書」91頁下段17行めから92頁上段2行め、同3〜10行めの2段落に当たる。異同を挙げると下段18〜19行め「平屋の廃墟があ/る。」が『廃墟探訪』133頁左11〜12行め「平屋一戸建ての廃墟がある(P.153)。」、下段19行め「惨劇の館」が133頁左13行め「怪奇の館」、下段21行め「必ず」が左15行め「かならず」、下段21行め〜上段1行め「某霊能者も/この屋敷を訪れ、」が左16〜17行め「某霊能者もテレビの企画でこ/の屋敷を訪れ、」、上段3〜4行め「不動産屋/などで」が左19行め「不動産屋で実態を」、上段7行め「不在。」が左22〜23行め「不在であっ/た。」、そして最後、上段8〜10行め「‥‥5人が財産分与で揉め、15年/以上たった現在でも、いまだに解決を見て/いないというのが真相であった。」が左24〜26行め「/五人が財産分与でもめ、当時ですでに十五/年以上が経過していたが、いまだに解決を見/ていないというのが本当の話であった。」となっている。「現代怪奇解体新書」の「現在でも、いまだに」は良いが『廃墟探訪』が「当時すでに」に改めながら「いまだに」のままにしているのは据りが悪い。
 この「惨劇の館」もしくは「怪奇の館」は「鎌倉の由比ヶ浜海岸に近い場所」にあるのだが、『廃墟探訪』153頁すなわち「未掲載物件お蔵出し!! 」として写真のみが並ぶ中に「RUIN FILE No.47鎌倉幽霊屋敷廃墟■神奈川県鎌倉市」と見えている。
 要するに相続争いのために久しく空き家になっているだけであったのだが、このことを踏まえて以下の展開、『廃墟探訪』の③④⑤⑥の部分と「現代怪奇解体新書」とが、かなり異なっているのである。
 「現代怪奇解体新書」では、次のようになっている。92頁上段11行め〜中段11行め、

 街で噂されるお化け屋敷の正体とは、現/実にはこんなものである。こうした事実が/ほとんどの廃墟の大勢を占めるのだ。だが/噂の出自の通り、実際に非業の死に立ち会/った物件というのも確かに存在する。筆者/も過去、何気に入った八王子のアパート廃/墟が先日浮浪者の死体が見つかったという/一室だったり、母娘が手斧で刻まれた秩父/の一軒家にも入ったことがある。しかし、/これらについても後で調べてゾッとすると/いうワケで、入っているときは別段怖くも/ない。廃墟に慣れ、恐怖に対してマヒして/いるせいもあろうが、取材と思えば意外と/冷静に物件と接することができるものだ。
 ところが……である。さすがにいろいろ/と廃墟を訪ね回っていると、たまには不可/解で不思議な物件にも遭遇する。前述の通/り、どこに行ってもほとんど恐怖を感じな/い筆者であるが、このときばかりは入った/ときから凍て付くような緊張感を覚え、重/い空気に気が滅入り、後で調べてまた怖気/づいたという、本気も本気で肝を冷やした/物件があるのだ……。


 以下が、7月18日付(4)で見たように、本題の廃墟の記述になる。
 すなわち、廃墟に事件などは殆ど存在せず、何らかの事情で空き家になったまま放置されたのが、それらしい外観からそのような噂を立てられているだけであり、たまに実際に死体が見つかったり惨劇の舞台となった廃墟があったとしても、妖気も霊気も感じないものだが、1つだけ特別な廃墟があった、という盛り上げ方をしているのである。(以下続稿)