瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

『水辺の怪談――釣り人は見た』(09)

 これまで『水辺の怪談』『水辺の怪談2』『水辺の怪談 最恐伝説』について比較して来たが、ここで内容についても突っ込んで置こう。
 まずは2014年12月20日付(03)で見たように『水辺の怪談 最恐伝説』での「書き下ろし作品」である、丸山剛「焚き火の炎に浮かび上がる悪夢」及び池波次郎(仮名)「冥府の扉が開く時」について、検討して見る。ともに挿絵の収録位置などは2014年12月21日付(04)に指摘した。
・焚き火の炎に浮かび上がる悪夢
 42頁6行めまでが導入で、まず「群馬県のバイパス」で逆走して来る「ママチャリ」に擦れ違った体験が述べられ、「霊」であった可能性を示唆するのだが、これも平成27年(2015)の今になって見ると、耄碌した老人が自転車で迷い込んでしまったのだろう、と当然のように解釈する人も多いかも知れない。
 それで、題の「焚き火の炎に浮かび上がる悪夢」だが、「友だち」と「沢で何泊もする」「源流釣り」の「夜の飲み会」で、「焚き火」を囲みながら毎夜「馬鹿話から釣りの話」そして「最後」は「怪談話」になる、ということで「闘う源流マンのH氏」の冬山での体験談が紹介され、続いて丸山氏が本題の「悪夢」の話をする。「焚き火の炎」を見つめながら仲間と怪談話に興じている、という訳で「炎」の中から「悪夢」の情景が「浮かび上が」ったのではなく、46頁7行め「自分の番」が来たので「焚き火」に向かいながら話したのである。
 時代は「10年以上前」、場所は「積丹半島にあるF川」、ぼかしてあるけれども「F川の林道」に入る前に「神恵内名物のうに丼を食べて大満足し」とあるから、場所はほぼ特定される。
 気になったところを挙げて置く。
・44頁8行め「就寝についた」では「就」と「つく」が重なってしまうから「就寝した」で良い。
・46頁1行め「意識が遠いた」は「意識が遠のいた」。
 全体的に文章がこなれていないのだが、この書き慣れていない感じが却って、体験談に現実味を与える効果を上げていると言えよう。(以下続稿)