瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

芥川龍之介旧居跡(6)

松田奈緒子『えへん、龍之介。』(2)
 巻末、183~189頁「田端取材記」について。
 183頁1コマめ「BE・LOVEさんに 送った 『えへん、龍之介。』の パイロット版ネーム OKがでる!」に始まり、2~3コマめに断った「いろんな編集さん」のうち2名がその理由とともに目隠しで回想され、4コマめ「芥川が描きたいと思って早や20年!/やっとこの日がきました !! 」の丸ゴシック体のナレーションの間に、泣き濡れて「ずひーっ」と鼻を啜る松田氏。
 この田端取材は2010年冬のことらしいので、「芥川を描きたいと思っ」たのは1990年に遡ることになる。松田氏のデビューは1996年、集英社の大人の女性を対象読者とする日本の少女漫画誌「コーラス」誌に掲載された「ファンタスティックデイズ」なのでデビュー前からの念願であった訳である。
 184頁1コマめ「いざ 田端へ取材に !! 」とて、2コマめ「びゅおぉ」と風吹きすさぶ田端駅に降り立った松田氏。3コマめ「なに このビル?」と見上げたのは2008年7月に北口に開業した駅ビル「アトレヴィ田端」で、Wikipedia「田端駅」項に拠ると2005年夏から改築工事が続いていた。4コマめ「近藤富枝さんの 『田端文士村』を買った 「ブックストア談」が ない !! 」と、次の文庫本を持つ手が震える。

田端文士村 (中公文庫)

田端文士村 (中公文庫)

 いや、これは正確ではない。松田氏が購入したのは同じ中公文庫でも昭和58年(1983)刊の旧版で、現在Amazonで表示されるのは2003年改版である。
 ブックストア談は、原宿の竹下口の信号を渡ったビルの2階にあった店に何度か入り、文庫本を買ったこともある。雑誌の棚に平積みで「薔薇族」が置いてあって、地方から上京したばかりの私は、何だこりゃ、と面食らったことであった。原宿店はいつなくなったのであろうか。田端店に至っては、ネット検索しても全くヒットしない。
 5コマめ「以前 田端に 来たのは 20年まえ…」手書きで「そりゃ わかるわな」と添える。
 この「20年まえ」だが、185頁1コマめ「駅前の田端 文士村記念館に 久しぶりに入って 20年まえと 同じ感想」とあって、田端文士村記念館の開館は1993年11月だから、開館直後に出掛けたとしてもこの取材まで16年しか経っていない。細かいことながら。
 3コマめ、展示品から手書きで矢印を引っ張って「芥川の原稿類/ほとんど復製…。」とあるが「複製」。
 その後、5コマめ「記念館横の 江戸坂をのぼって」186頁1コマめ「東台橋を 渡って/小路に入った ちょっと先」2コマめ「んー でかい !! /この辺 3軒分が 旧芥川家」ここに描写される吉野朔実の回想にある「山吹の家」跡の集合住宅と「友人・・・・宅」に当たる個人住宅は、2019年6月撮影のGoogle ストリートビューと変わっていない。4コマめ「今回 平塚らいてうも 出てくるので/旧らいてう宅 附近も取材」そして187頁1コマめ、切通しを渡ったところで振り向いて「旧芥川家」と「旧 らいてう宅」の「近 !! 」さに気付く。2コマめに「上から見ると/ザ・町内」として「切通し」を網掛けで示し手書きで「切通しは S8年完成なので 芥川在の頃は まだ台地 だったハズ。」と註記する。

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 第1刷と第4刷の異同は奥付に第4刷発行日の1行が追加されていることと「製本所   株式会社国宝社」が「製本所   株式会社フォーネット社」に変わっていることのみ。
 カバーも一致する。カバー裏表紙折返し、上部にゴシック体横組みで「松田奈緒子KCシリーズ」緑褐色で大きく、続いて黒で「えへん、龍之介。/花吐き乙女 全3巻/100年たったらみんな死ぬ 上下巻」とある。

花吐き乙女(1) (ワイドKC Kiss)

花吐き乙女(1) (ワイドKC Kiss)

花吐き乙女(2) (ワイドKC Kiss)

花吐き乙女(2) (ワイドKC Kiss)

花吐き乙女(3) (ワイドKC Kiss)

花吐き乙女(3) (ワイドKC Kiss)

100年たったらみんな死ぬ 上  (ワイドKC キス)

100年たったらみんな死ぬ 上 (ワイドKC キス)

100年たったらみんな死ぬ 下  (ワイドKC キス)

100年たったらみんな死ぬ 下 (ワイドKC キス)

 新しいものから順に並んでおり、松田氏はこの『えへん、龍之介。』の後、小学館に移って『重版出来!』を出しており、第4刷の時点で第4巻まで刊行されていた。(以下続稿)