吉野朔実(1959.2.19~2016.4.20)の書評エッセイ漫画は、2017年7月8日付「夏目漱石『こゝろ』の文庫本(19)」に見たように、集英社文庫の夏目漱石作品のカバー表紙を吉野氏が手掛けた事情を述べたものとして注意していたのだが、ついでに角川文庫版の2冊に目を通して、特に芥川旧居跡の件に心惹かれた。しかし特に背景を掘り下げて見ようとは思わなかった。
それを、急に思い立ったのは、9月に次の漫画(第1刷)を読み、10月下旬に第4刷と並べて見たことが切っ掛けである。
・BE LOVE KCDX-3077『えへん、龍之介。』講談社・191頁
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・2014年11月5日 第4刷発行・定価590円
それで、田端の芥川龍之介(旧居跡)ならば吉野氏から取り上げるのが順序だろうと思ったのである。
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・ビッグ コミックス『重版出来! 1』2013年4月3日初版第1刷発行・定価552円・小学館・207頁
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話を『えへん、龍之介。』に戻す。3~32頁「第一話 田端のスーパースター」は、室生犀星(1889.8.1~1962.3.26)が芥川家に萩原朔太郎(1886.11.1~1942.5.11)を連れて来て芥川龍之介(1892.3.1~1927.7.24)に引き合せるところから始まる。以下、田端での萩原朔太郎や室生犀星との交遊、平塚らいてう(1886.2.10~1971.5.24)片山広子(1878.2.10~1957.3.19)や秀しげ子(1890.8.20~1973.3)ら女性、谷崎潤一郎(1886.7.24~1965.7.30)菊池寛(1888.12.26~1948.3.6)川端康成(1899.6.14~1972.4.16)や大杉栄(1885.1.17~1923.9.16)との交流、関東大震災。最後は義兄の自殺、体調不良、自殺を示唆するような描写を畳み掛けて、しかし肝腎なところは曖昧なまま終わっている。
内容については別に記事にするかも知れない。ここでは1点だけ、家人がこの漫画を読んで、伯母や義父母に仕え、夫の女性関係に悩まされ(挙句、自殺されてしまう)文夫人について、――子供の頃、母とNHKのトーク番組*1を見ていたとき、ゲストの芥川也寸志(1925.7.12~1989.1.31)が、父親について幾つかの質問に淡々と答えた後、司会が「お母様は?」と尋ねると、無言のまま、はらはらと落涙したので、あぁ、未亡人となって後、本当に苦労したんだなぁ、と子供心にしみじみ思い、この漫画にそのことが思い合わされた、と云うのである。
それはともかく、私がここで注目したいのは巻末、183~189頁に載る「田端取材記」と題する、講談社の女性向け漫画雑誌「BE・LOVE」の編集から連載OKの連絡が入って、田端に取材に出向いた折のルポルタージュ漫画である。それで昨日まで取り上げた、芥川龍之介旧居跡についての吉野朔実の漫画を思い出したのだが、松田氏が取材したのはパーカーを羽織っているので寒い時期、奥付の上に「初出/BE・LOVE 2010年第15号~17号、2011年第4号~6号」とあって、当時「BE・LOVE」は月2回刊行だったので第15号は8月1日号、7月中旬の発売である。そうすると2009~2010年の冬であろう。(以下続稿)