瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

八王子事典の会 編『八王子事典』(3)

 昨日の続きで①初版と②改訂版の比較。
・前付
 頁付なしで①は4頁、②は6頁。なお本書は背表紙を除いて全て横組みである。
 ①1~2頁は「はしがき」で、1頁にはまづ3行取り中央揃えでやや大きく「は し が き」とあり、以下1頁26行、1行27字でゆったりと組んでいる。②1~2頁では「初 版 は し が き」となっているが、題だけではなく全体が1頁27行、1行31字に組み直されている。編纂意図を説明した冒頭の1段落(①2~7行め②2~6行め)を抜いて、改行位置を①「/」②「|」で示して置こう。

 この事典は,八王子について何かを知りたい・調べたいと/思いたっ|たときに,最初の手がかりとして役立つことを願っ/て作られた事典で|す.手がかりは多いほどよいと考え,項目/数の多い事典を目ざしまし|た.また収録分野も,歴史や自然/から行政・産業経済・教育文化まで|広範囲にわたっていま/す.


 それで、細かい地名まで拾ってあったのである。
 それから、4段落め(①2頁3~14行め②1頁23行め~2頁8行め)の編纂の経緯を述べた箇所も抜いて置こう。①2頁3~11行め②1頁23行め~2頁5行め

 この事典を作った私たち5人も,さまざまなきっかけで八/王子につ|いて調べているうちに出会いました.そして,八王/子についての簡便|な事典があったらいいな,という誰いうと/もないつぶやきに共感し,|【1】力を合わせて作ってみようと意見/が一致したのです.1985年の早春の|ことでした.もとより私/たちは微力です.大それた企てと反省したこ|ともありまし/た.しかしともかくも努力をつづけ,基本的な書物には|でき/るだけ目をとおし,項目を選定し,原稿をまとめ,ようやく/刊行|までこぎつけました.‥‥


 相原悦夫(1940生)は現在、八王子市文化財保護審議会会長で、専門分野は曳山美術史・社寺建築。著書も何冊かある。小林明は著書がなく、氏名も特徴がない(!)ため検索してもヒットしない。佐藤広は1995年に揺籃社(八王子市)から『八王子の民俗』、1999年にのんぶる舎(八王子市)から『武相観音めぐり―武蔵・相模四十八ケ所―』を出している。柴田隆行(1949生)は当時、東洋大学文学部助教授で、現在、多摩川の自然を守る会代表。柴田氏は1980年に創業まもないかたくら書店からかたくら書店新書2『片倉の自然』を出しているが、馬場喜信(1937生)は1979年に恐らくかたくら書店の処女出版である、かたくら書店新書1『八王子片倉台の地誌』を出しており、以後2011年のかたくら書店新書52『植田孟縉 雲は夢見る 世に事なきを』まで数点の著書は全てかたくら書店から出している。
 4段落めの残りには反省の辞が、5段落めには版元の「田原勘意氏」への謝辞が述べられ、最後の6段落め、①19~20行め②12行め、

 なお,記述の誤りなど気づかれましたら,ぜひお知らせく/ださい.

とあるのだが、後述するように②でも訂正されていない誤りが間々見られる。もちろん、訂正されている箇所も多いことと思うが、細かく点検する余裕がない。③「Web八王子事典」が現在も公開されていれば(多分)作業しやすいのだけれども。折角作ってあったものを、今からでも八王子市が買い取って、市のホームページで公開するなどの措置が取れないものだろうか。
 続いて②は1行分空けて、①は空けずに、

 1991年8月1日     『八王子事典』の会

とあって①は「王」の右下から、②は「王」の真下から、カバー表紙と同じ5人の連名。①には余白がないが②には8行分の余白。
 ②3~4頁は「改 訂 版 は し が き」。1頁27行であるのは「初版はしがき」に同じだが、1行28字で、①「はしがき」とほぼ同じ大きさの活字で組まれている。いや、むしろ②の「初版はしがき」が何故活字を小さくしたのかが、謎である。それはともかく、こちらは段落分けなしで、まづ初版の「はしがき」冒頭に述べた編纂意図を紹介し、3頁5~22行め、

・・・・,この刊行の意図は,多くの読者に迎えられて,|さまざまな場で活用していただくととともに*1,貴重なご意見・|ご感想もお寄せいただきました。地域のことを深く知りたいと|いう読者の熱意と,コンパクトながらとりあえず役に立つ事典|という形式とが,幸いな出会いをもたらしてくれたのだと思い|ます。それだけに,初版の不備を知るわたくしたちにとって,|その不備を補い,ご指摘を受けた誤りを正し,いくばくかの充|実を図った改訂版の刊行が,新たな課題としてつねに念頭をし|めてきていました。ここに完成した改訂版は,その課題を何と|か実現したものです。改訂にあたっては,次のような点に留意|し,訂正・加筆・書き換えを行いました。(1)初版の誤りを訂|正すること,(2)初版刊行後の新しい動きをとりいれること,|以上は当然ですが,(3)近年さかんに行われている考古学の発|掘成果を積極的に取り入れるとともに,初版の記述方式を見な|おして個々の遺跡のもつ意味を簡潔に述べること,(4)近世の|村についての記述を充実させること,などです。初版のときの|執筆者は5人,今回は新たに3人が加わりました。改訂作業の|多くはこの3人によるものです。・・・・

と改訂の意図について説明している。
 そして1行分空けて4頁18行め、

 2001年1月     『八王子事典』の会

として「王子」の下から、カバー表紙と同じ8名の連名。
 ①3~4頁②5~6頁「凡例」は、1頁29行、1行31字で、まづ2行取り中央揃えで「凡    例」とあって、1行分空けて「*」の箇条書きが①は7項、②は6項。①3頁21~23行め、6項めが②にはない。

* 現在の町名の解説のなかにある世帯数と人口は,1990年(平成2)/ 6月現在のものです.またそこに付した①②③等の数字は丁目を示/ します.


 どういうことか、本文で初めてこの凡例に該当する、①3頁18行め~4頁2行め②3頁27行め~4頁10行め「暁町1 ~3 丁目 あかつきちょう」で確認して置こう。――①21~23行めに、

・・・・の各一部の地域に誕/生.世帯数①1,238②527③116. 人口①2,767②1,431③357./江戸期の中野村の一部を主体とし,・・・・

とあったのが、②では4頁1~2行め、

・・・・の各一部の地域に誕/生.江戸期の中野村の一部を主体とし,・・・・

と世帯数・人口が削除されている*2。(以下続稿)

*1:「と」衍字。

*2:この項の他の異同は②4頁8~9行め「都立小宮公/園,」の増補、①4頁2行め「ひよどり山配水池」が②4頁10行め「暁町配水池」になっていること。