一昨日、12月22日付(3)に見た、②『昭和・平成・令和 長編集』の「出典・初出一覧」に『稲川淳二のすご~く恐い話』の『ベストセレクション』が入っていることに注意し、昨日、そのリイド文庫『稲川淳二のすご~く恐い話 ベストセレクション』について、12月23日付「『稲川淳二のすご~く恐い話』(5)」にて内容を確認した。
すなわち、②『昭和・平成・令和 長編集』の第二章【4-2】「ピンクの女」と第四章【4-1】「旧明治座の怪」の2話が『稲川淳二のすご~く恐い話 ベストセレクション』を「出典・初出」とすることになっており、確かに前者は第二五話「私の店に来るピンクの女」、後者は第一一話「旧明治座の怪」として載っている。しかしながら『ベストセレクション』なのだからその前があるので、前者は『稲川淳二のすご~く恐い話(PARTⅠ)』第34話「私の店に来る、ピンクの女」、後者は『稲川淳二のすご~く恐い話 PARTⅡ』第4話なのである。
或いは、下敷きにしたのが『稲川淳二のすご~く恐い話』の『PARTⅠ』及び『PARTⅡ』掲載の本文ではなく『ベストセレクション』収録に際し改稿されたものだったのかも知れない。
今『PARTⅠ』は手許にあるので第34話「私の店に来る、ピンクの女」を「ピンクの女」と比較するに、「私の店に来る、ピンクの女」は191頁8~9行め、
「あの人達、前は、よく4人できてたんですよ。男2人、女2人で。そんで、こなくなった、/女の子が、確か、そんな格好してた気がすんですよねぇ」
とのマスターの台詞で終わって以下余白になっているが、「ピンクの女」は116頁10~15行め、
「あの人たち、前は、よく四人で来てたんですよ。男二人、女二人で。そんで、来なくなった女の子が、/確か、ピンク色した顔の、髪の毛がジョワジョワってなってる、そんな感じの子だった気がするんですよ/ねぇ。何かあったのかなあ、その人に……」
って、言ってましたよ。
そのうち、またいくつか不思議なことが起きましてね、私、その店、やめましたよ。不思議なことっ/て、あるんですよねぇ。
となっている。初出「私の店に来る、ピンクの女」の時点では、まだこの店を経営していたようなので、最後の段落はその後の追加と云うことになるが、或いは『ベストセレクション』での追加かも知れない。しかし、この「ピンクの女」は今回【4-1】「闇夜の赤ん坊」と抱き合わせて【4】「ナオ・バーズ・バー」に纏めているので、冒頭にも調整が入っている。従って、これだけの追加を尊重して、わざわざ『ベストセレクション』を「出典・初出」とするのは如何なものか。確かに「出典」なのかも知れないが、この程度の改変であれば「初出」情報を尊重した方が良かろうと思うのだ。
②『昭和・平成・令和 長編集』とは担当編集者が違うように思われるのだけれども、①『昭和・平成傑作選』の「出典・初出一覧」は『ベストセレクション』を挙げていない。しかし『ベストセレクション』に入っている話が幾つかある。
・第二章【1】「リヤカー」は『ベストセレクション』第四話「トンネルで死者の霊と出会った」で初出は『PARTⅠ』第2話。
・第三章【6】「川崎の消防署」は『ベストセレクション』第二話「消防署に住む幽霊」で初出は『PARTⅠ』第30話。
・第四章【4】「夢の中の踏切に立つ女」は『ベストセレクション』第二二話「夢の中の踏切に立つ女」で、初出は『PARTⅠ』第25話。
厳密な比較をした訳ではないが、大筋は同じで細かいところがちょいちょい改変されているようである。
とにかく「出典・初出一覧」などとするからややこしくなるので、初めから「初出一覧」として置けば、このような編集者ごとの揺れもなく処理出来たのではないか、と思うのである。――もし出すのであれば3冊めは「初出一覧」でお願いしたい。(以下続稿)