2022年9月12日付(43)に遺品整理が本格化、などと書いたのだけれども、その後、納骨の際に長男夫婦や孫夫婦などが上京して来て部屋を見たのだけれども、私は立ち会わなかったが短時間、相続の対象になりそうなものや話に聞かされて記憶していた貴重品、短刀や花瓶を探したくらいで、簞笥や本棚・物入などを一通り改めるようなこともしなかったらしく、こうして部屋を売却することになってもまだ色々なものが手つかずのままで、そもそも身内ではなかった私だけが焦っているような按配である。――家族が聞かされていない、記憶していないものは「文字禍」ではないが、初めからなかったのぢゃ、と云うことになりそうだ。反町茂雄『一古書肆の思い出』には、そうした扱いを受けて反故紙として紙屑屋が買い取った中から掘り出されたらしい貴重書が幾つか紹介されているが、今も整理する人のないまま紙屑扱いされて貴重資料が廃棄されてしまうようなケースは少なからず発生しているのであろう。酒鬼薔薇聖斗の裁判記録に限らず。尤も、祖母の遺品にそもそもそこまでの貴重品があるとは思えないことも、事実なのだけれども。
さて、その2022年9月12日付(43)に存在を報告した新潮文庫『剣客商売』の揃いだが、その後誰からもオファーがないので、先日メモだけ取ってそのまま遺してある。多分廃棄することになるであろう。現在店頭にある新装版ではカバー背表紙・表紙に番号を入れて判り易くしているが、従来の版は「剣客商売」としかしていなかったので、順番が甚だ判りにくかった。カバー背表紙の整理番号で一応は並べられるが、新潮文庫は『剣客商売』だけ出している訳ではないので、数字に開きがあるところにもう1冊あるのか、それとも『剣客商売』ではないものが挟まるのか、俄には判らない。本当に、何故番号を打たなかったのだろう。祖母がカバー背表紙に番号を書き入れていなければ、カバー背表紙は褪色しているけれども黒い文字は全く問題なく読めるから、早々に新古書店に持ち込んで85円くらいにでもしたところなのだが、どうも連作物の時代小説はこういうところに無頓着で、いけない。
・新潮文庫『剣客商売』
寝室の鏡台の辺りに纏めて置いてあったのは繰り返し読んでいたからで、そのせいか帯もなくチラシも挟まっていなかった。
なお『待ち伏せ』と『春の嵐』の番号が前後しているが扉にある斜体の番号そのままである。後刷では訂正されているであろうか。
新潮文庫3373/い-16-23『剣客商売』昭和 六 十 年 三 月二十五日 発 行・昭和六十二年 九 月 十 五 日 八 刷・定価400円・332頁
祖母は昭和末年から買い始め、4冊めからは番外編を除いて新刊時に購入している。以てその愛読の程が偲ばれる。(以下続稿)