瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

森満喜子「濤江介正近」拾遺(03)

 前回、1月17日付(02)に森氏の著作リストを作成して見た。
 単著に①②③……、共著に⑴⑵⑶……と番号を打って整理した。
 単著はこれで全てだと思う。
 共著(寄稿)は投稿後『沖田総司読本』を追加した。今後も見付かるかも知れない。その場合はその都度(必要があれば番号を改めて)刊行順に並べることにする。
 私が森氏の小説を読もうと思ったのは、酒井濤江介正近について調べるうちに、恐らく酒井濤江介正近を主人公にした唯一の小説「濤江介正近」を書いていることを知り、その経歴として Wikipedia「森満喜子」項を参照した。これは「大牟田市立図書館」HPの「郷土ゆかりの作家 > 森 満喜子」の「経歴・プロフィール」に依拠しているのだが、これが簡略に過ぎるためか却って誤読して、医専の卒業年(1945年)を1942年、上京した年(1981年)を1976年と間違えているのである。( )内に示したのが正しい年だが大牟田市立図書館はこの年を示していない。
 私はまづ、森氏が1976年に大牟田保健所を退職して直ちに上京したのではないらしいことに、森氏の著書の奥付にある「著者略歴」を眺めていて気付いたのである。当時森氏は毎年のように著書を上梓していたから「著者略歴」を見て行けば Wikipedia に記載されていなかった、退職してから上京するまでの経歴について、明らかに出来るのはないか、と考えたのである。
 それで、著作を一通り確認して置くこととなったのである。
 森氏の著書は今は図書館の閉架に仕舞い込まれている。特別区及び都下の公立図書館で揃いで所蔵しているところはないらしい。しかし幾つか回れば、今私が利用している図書館でも『新選組覚え書』を除く単著・共著は揃えることが出来た。私の借りた図書館蔵書を見る限りでは④『定本 沖田総司――おもかげ抄』までは第一刷ではなく後の増刷が多く、⑤『沖田総司落花抄』以降は第一刷ばかりになる。
 さて、こちらとしては「著者略歴」にはその増刷の時点での著者の勤務先や住所が、変更があれば適宜改められて示されているものと思ってしまう。これまで当ブログではそうなっていない例をさんざん見て来たのだが、やはりその前提で見て行くことになるから、色々見て行くうちにそこまで現況に合わせていないことに気付かされることになる。いや、色々見ないことにはそのことにも気付けない。森氏の場合、著書の追加や現住所の変更などは為されても、退職後も「大牟田保健所」に勤務して「現在に至る」としたままだったりする。
 そんな訳で④『定本 沖田総司――おもかげ抄』まではオークションサイトの画像も含めて、多くの刷を確認することにした。正直、図書館蔵書だけでは足りない。
 それから、これまでの当ブログであれば見るに従って紹介して行ったところなのだが、ひょんなことから毎日更新するのを止しにしたので、小出しにするのではなく以下、森氏の著書(単著)について初刊年の順に、異同、特に奥付の記載、後付及びカバー裏表紙折返しの目録を整理して行くこととした。材料がある程度纏まれば目録等は別に整理しても良いだろう。なお、発行日や定価・頁などは前回示したリストを参照されたい。
①『沖田総司哀歌』
 私が図書館から借りて比較している2冊、第三刷(1973.10.1)には「48.10, 6」の受入印、第十刷(1977.11.25)には「6025」の受入票が貼付されている。
 カバーの色については前回のリストに述べた。カバーの異同は色の他に、裏表紙の枠内左下に第三刷「0093―50032―3306 850円」とあるのが第十刷「0093―050032―3306 定価980円」となっていることである。ともにほぼ白地に見えるところに白抜きで入っていて非常に読みづらい。元は文字に色が着いていたのか。それとも薄いながらも何らかの地色が文字をもっと明瞭に浮かび上がらせていたのか。
 カバー表紙折返しは上部に「著者 森満喜子氏」の写真、その下に大内美予子「森 満喜子さんのこと」は、写真がカバーの枠・背表紙の標題・著者名と同じ色で刷られている。
 カバー裏表紙折返しは横組みの目録で、第三刷は上部に横長のゴシック体で「新人物往来社が自信 をもっておすすめする」少し空けてやはり横長(黒丸も横長の楕円)で「新選組シリーズ」として9点、明朝体の書名の上にゴシック体で小さく著者名を添え、右詰めでゴシック体で小さく定価を示す。以下標題の下の副題のみ小さくして列挙して置こう。「永倉新八 新撰組顚末記 830円/小野圭次郞他 新選組覚え書 850円/大内美予子 沖田総司 850円/池波正太郎 新選組異聞 850円/栗賀大介 新選組興亡史永倉新八の生涯― 830円/新人物往来社編 新選組隊士列伝 850円/佐藤昱 聞きがき新選組 850円/釣洋一 新選組再掘記 850円/森満喜子 沖田総司哀歌 850円」で刊行順に並んでいるらしい。1年余りで9点、森氏は本書の前に『新選組覚え書』と『新選組隊士列伝』に参加していた。そして横長でないゴシック体で「● 続刊――」横線は定価まで伸びて上下を仕切る。ここには「尾崎秀樹・榊原和夫 紀行新選組 予880円/新人物往来社編 新選組写真集 予900円」の2点、ともに後に刊行されている。第十刷は上下を横線で挟んだ明朝体太字の「|新人物往来社があなたに贈る/沖田総司シリーズ|」と題する目録で15点、③『沖田総司幻歌』第二刷(1976.10.15)⑤『沖田総司落花抄』第一刷(1977.5.20)に同じ。この「沖田総司シリーズ」は表示形式が若干変わっていたり点数が次第に増えたりしているが⑦『遙かなる沖田総司』第一刷(1979.10.25)まで載っている。細かい異同は別に纏めることにしよう。
 奥付のレイアウトはほぼ同じだが組み直しており字配りなどが異なる。
 上部左詰で第十刷は1行め「〈著者略歴〉」とある(山括弧は半角)が第三刷の1行めは「森 満喜子(もり・まきこ)」である。第十刷の2行めでは「森 満喜子もり・まきこ)」と読みもゴシック体になっている。続く2行「大正13年横浜市生まれ。/昭和20年大阪女子高等医専 (現・関西医大) 卒。」は第十刷では括弧が全角になっているだけの違い。その次が第三刷「昭和23年より大牟田保健所勤務,現在に至る。」だったのが第十刷は「昭和23年より昭和51年まで大牟田保健所勤務。」続く3行は『沖田総司抄』と一致、そして第三刷5~7行め「著書『新選組覚え書』(「沖田総司――おもかげ/抄」)・新人物往来社新選組隊士列伝』(吉村貫一郎)/新人物往来社」と他に単著がなかった時期らしい書き振り。それが4年後の第十刷6~7行めは「著書『沖田総司哀歌』『沖田総司抄』『沖田総司幻歌』/『定本沖田総司―おもかげ抄』『沖田総司落花抄』」と単著ばかり5点を挙げる。最後、第三刷「現住所 大牟田市浄真町136の2」第十刷「現住所 熊本県荒尾市下井手 188 大場医院」とあって大牟田保健所退職を機に南に隣接する熊本県荒尾市、県境に極近い下井手188番地に引っ越したらしい。この「大場医院」が何であるかは想像は出来る(が明瞭な説明は、別の本でも為されていない)。その想像はもう少々材料を揃えてから述べることにしよう。
 下部は2本の横線に挟まれた間に縦組みで発行日や版元などが入る。記載内容と順序は同じ。ゴシック体の標題は第十刷はやや小さくなり、発行日は第十刷はやや大きくなっている。続く「著 者/発行者/発行所」の3行、第三刷は「森 満 喜 子/菅  貞 人」の字配りを「新人物往来社」に合わせているが第十刷は「菅 英志」以外は詰めている。発行所の左にごく小さく2行、第三刷「東京都千代田区丸の内三ノ三ノ一(新東京ビルヂング) 〠一〇〇/電話東京(二一二)三九三一(代表)振替東京一五一六四三」第十刷「東京都千代田区丸の内三―三―一(新東京ビルヂング)〠一〇〇/ 電話東京(二一二)三九三一(代表)振替東京六―一五一六四三」、また元の大きさに戻して「印刷所/製本所」の2行、第三刷は「小  泉  製  本」の字配りを「日本製版株式会社」に合わせるが第十刷は「小泉製本」と詰めている。第三刷には続いて「定 価」があるが第十刷にはない。最後に極々小さく「落丁本・乱丁本はおとりかえいたします。」とあってその「乱丁本は」の左に角の丸い方印型の「新人物/往来社」。2本めの横線の下、左寄せで第三刷「© 森  満喜子」第十刷「© 森 満喜子」、右寄せで第三刷「0093―50032―3306」第十刷「(定価はカバー・帯に表示してあります)」。
 奥付の裏から「新人物往来社」の目録が4頁(最後の頁は白紙)ある。角の丸い四角い枠に5本の縦線で仕切って4点ずつ、上半分はまづ明朝体上寄せで著者、次いでゴシック体で大きく均等割付で標題、あれば副題を改行してゴシック体で下詰めで添え、最後に明朝体下詰めで判型と定価。下半分は明朝体で5行(4行もあり、1行16字)の紹介文。第三刷は1頁めが「子母沢寛全歴史エッセイ集(全3巻)」でこれは最初にシリーズのリード文がゴシック体であって次いで3点それぞれの紹介。2頁めは「|今井幸彦著 坂本竜馬を斬った男――幕臣今井信郎の生涯―― 四六判 880円|永岡慶之助著 彰義隊戦記 四六判 850円|栗原隆一著 幕末諸隊始末 四六判 850円|古川 薫著 幕末長州の舞台裏――椋梨藤太覚え書 四六判 830円|」3頁め「|永倉新八著 新撰組顚末記 四六判 830円|小野圭次郞他 新選組覚え書 四六判 850円|大内美予子著 沖田総司 四六判 850円|尾崎秀樹(文)/榊原和夫(写真) 紀行新選組 四六判 900円|」4頁め「|新人物往来社編 新選組隊士列伝 四六判 850円|佐藤 昱著 聞きがき新選組 四六判 850円|釣 洋一著 新選組再掘記 四六判 850円|栗賀大介著 新選組興亡史永倉新八の生涯 四六判 850円|」。第十刷は1頁め「|新人物往来社編 土方歳三のすべて 四六判 1200円|谷 春雄・林 栄太郎著 新選組隊士遺聞 四六判 900円|森 満喜子著 沖田総司 四六判 980円|今川徳三著 近藤 勇 四六判 1200円|」2頁め「|赤間倭子著 〈新選組 /副長助勤斎藤一 四六判 950円|新人物往来社編 沖田総司の世界 四六判 980円|新人物往来社編 新選組写真集 四六判 1200円|童門冬二著 新選組一番隊 四六判 980円|」3頁めは第三刷に同じだが、定価のみ『新撰組顚末記』1200円『沖田総司』980円の2点が値上がりしている。増刷のあったものは値上げ、在庫のあるものがそのままの値段になっているのであろう。4頁め「|永岡慶之助著 会津戦争始末記 四六判 850円|永岡慶之助著 斗南藩子弟記 四六判 880円|梁取三義著 会津鶴ヶ城 四六判 980円|北 篤著 松平容保 四六判 980円|」。
 なお、オークションサイトの画像のみ見ている第九刷(1977.8.1)と第十刷の奥付の異同はそれぞれの発行日と「製本所」が第九刷「大観社製本」第十刷「小泉製本」のみらしい。
 何だか都内に通勤していた頃の当ブログみたいになって来た。(以下続稿)