瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

Henry Schliemann “La Chine et le Japon au temps présent”(03)

 その後、第3刷と第32刷(!)を見た。かつて私が読んだのは第3刷で、平成10年(1998)8月17日から27日かけて、であった。当時、外国人の日本見聞記を読んでいて、ピエール・ロチ/村上菊一郎・吉氷清 訳『秋の日本(角川文庫602)』(昭和二十八年十月二十日初版発行・平成二年十一月十五日五版発行・定価495円・角川書店・254頁)を4月2日から9日、C・P・ツュンベリー/高橋文 訳『江戸参府随行記(東洋文庫583)』(1994年11月10日初版第1刷発行・平凡社・406頁)を6月22日から7月3日、ロバート・フォーチュン/三宅馨 訳『幕末日本探訪記 江戸と北京(講談社学術文庫1308)』(1997年12月10日第1刷発行・定価960円・講談社・363頁)を8月1日から28日にかけて読んでいる。
 さて、第3刷(1998年5月22日第3刷発行)であるが、第1刷(1998年4月10日第1刷発行)から40日余しか経っていないせいか、3月30日付(2)に指摘した196頁以降の異同を見るに第1刷と同じで、「シュリーマンの航路」が見開きになっているのは3月29日付(1)に指摘したように、第1刷と一致する。カバーも第1刷と同じに見えるが、私の借りた第1刷カバーは定価表示の上にバーコードが貼付されていて見えない。第3刷カバーでは「定価:本体720円」の「本……」の下に小さく「※ 消費税が別に加算されます。」とある。
 第9刷(2000年11月13日第9刷発行)のカバーでは「定価:本体720円(税別)」で、第32刷(2008年10月20日第32刷発行)では「定価:本体800円(税別)」となっている。定価の改定に伴って、カバー裏表紙左上のバーコードの定価に関わる辺りや、背表紙の最下部にある数字が違っている(引用略)。カバー裏表紙折返しの「シンボルマーク」に「●特製ブックカバー贈呈」と「●宛先」がないのは共通する。
 カバー表紙折返しに「講談社学術文庫 既刊より/近代日本の実像」として8点挙がるうち、第32刷では4点が入れ替わっているが、第9刷までは同じである。
 第32刷であるが、各章の注や「あとがき」その他をざっと見た限りでは、第9刷と同一のようである。

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 「付 シュリーマンの館」の、第1刷(第3刷)と第9刷(第32刷)の異同について。改訂された〔第9刷〕を基準にして、〔第1刷〕との異同を確認して行くこととする。
 まず、205頁5〜14は細かい表現に違いはあるが、〔第1刷〕205頁5〜13と内容はほぼ同じである。なお1行増えているのは、13行目「二階と三階の境、……」で改行して段落を変えたためで、〔第1刷〕では205頁は13行なのだが〔第9刷〕では14行に増えている(ちなみに見出しのない頁は1頁16行)。よく見ると、2行分を取って入っている見出しの前、〔第1刷〕では1行分の空白があったのが、〔第9刷〕ではこの空白を潰して、1行増やしているのである。
 206頁以降は流れは同じだが大きく異なる。
 まず206頁1〜2の段落に建築家と設計・建築について、3〜4行目の段落ではアテネ大学教授の建築史的評価が紹介されているが、〔第1刷〕には該当する記述はない。5〜16行目は〔第1刷〕の1〜9行目に当たるが、最初の一文(5〜6行目)は新たに加えられたものである。また、それぞれ2段落に分かれるが分割箇所は一致しない。内容は精緻になり「イオニヤ式円柱」→「二階……はイオニヤ式、三階はコリント式」/「ボルティコ(バルコニー)」→「ボルチコ(柱廊)」/「ギリシアの神々と思われる像」→「八人のミューズ」/「ボルティコの手摺はブロンズ製のようで」→「ボルチコの手摺は鉄製で」/「かつて」→「一九二〇年ころまでは」など、正確を期している。
 207頁1〜208頁7は〔第1刷〕206頁10〜207頁15に当たる。それぞれ2段落に分かれるが、やはり分割箇所は一致しない。「梟と卐の連続模様」→「最上部には翼を広げた梟(アテネの象徴)、中ほどは相対するスフィンクス(上半身は女人、下半身は獅子で翼を持っている)、そして両縁には卍の連続模様」/「一階正面玄関のドアの上にギリシア文字でEYMAPIA(幸運繁栄などすべてによかれの意)と書かれ、ドアの高さの倍ぐらいもある壁面には、白地にエンジ色で」→「一階正面玄関のドアの上には、ギリシャ文字で“EYMAPEIA”(幸運・繁栄などすべてに良かれの意)と書かれ、そのドアの高さの倍はあろうかという壁画は、白地に臙脂色で」/「「卐」の連続模様」→「卍の連続模様」などの改訂があり、207頁左上に「スペイン階段」の写真があるが、〔第9刷〕は17字×8行の大きさだが、〔第1刷〕では21字×10行と大きかった。

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 残りは次回に回すが、これら「改訂」を加えたことは、人に知られずひっそりとやらなくと良いので、奥付に「改版」と名乗ってむしろ積極的にアピールすべきことなのではないだろうか。(以下続稿)