瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山下武『20世紀日本怪異文学誌』(12)

・380頁6行め「陥し入れた」は「陥れた」。
・381頁4行め、3つある「彼奴」の3つめにルビ「あいつ」があるが、1つめに移すべきだろう。
・383頁14行め「……その大川にも不思議と自身が湧いてきた。……」の「自身」は「自信」。
・383頁15行め「……、大川自信の良心をも欺くに十分であった。……」の「自信」は「自身」。
・386頁谷崎潤一郎「友田と松永の話」の、「作者の掲げた一覧表」を示すが、最初の第一期のみ1字下げになっているのはおかしい。
・386頁3〜5行め、山下氏は「……。しかし、右の表にも見るごとく、二/個の人格の交替する期間の振幅が狭まり、最終的には東洋趣味の松永の勝利を暗示するか/のような結末は、……」とするが、山下氏も示す表を見る限りでは別に狭まっているようには見えない。次に期間だけを整理して示す。

 第一期 明治39年(1906)夏〜明治42年(1909)秋 3年強
第二期 明治42年(1909)秋〜明治45年(1912)春 2年半
第三期 明治45年(1912)夏〜大正4年(1915)秋 3年強
第四期 大正4年(1915)秋〜大正7年(1918)夏 3年弱
第五期 大正7年(1918)夏〜大正9年(1920)現在


 「第二期」が一番短い。本文を読めば山下氏の説明するように読めるのかも知れないが、それならこんな説明ではなくもう少しきちんと説明してもらわないと困る。
・387頁17行め「会はずに」は原文の引用部分ではない地の文なので「会わずに」で良い。――しばしば地の文に歴史的仮名遣いが混入しているのは、引用を歴史的仮名遣いのままにしているために混乱したか。
・388頁1行め、谷崎潤一郎「奇怪な記録」の台詞の引用、

「失礼ですが、あなたは光代さんぢゃありませんか?」

とあるが、「ぢゃ」は「ぢや」。それから5行めに、

「や、どうも飛んだ失禮を……」

との台詞の引用があるが、「失礼」と「失禮」が不統一である。どちらも原本では「失禮」となっているはずだが、同じように処理すべきである。
・389頁2行めにも「私は二人の爲めにバツの悪い處へ飛び出して來たのぢゃないか」との心内語が引用されるが、「爲」や「處」「來」を本字にするなら「悪」も「惡」にするべきだし「ぢゃ」は「ぢや」にするべき。9〜15行めの台詞の引用の冒頭では、

「ぢや、お前も気が付いて居るでせう。――光代は此電車に乗つてゐるんです。……

と、「ぢや」となっている。
・390頁17行め、この章の結び「……、その気配が濃厚なのは誰しも認めるところであらう。」の「あらう」も「あろう」で良い。
・391頁「あとがき」2行め、

 ドッペルゲンガーに対する闇心は久しい以前からのものだった。……


 これは「二〇〇三年・夏」付、単行本化に際して追加されたもので、雑誌連載にあったとは思えない。だとするとスキャンミスではなくて、山下氏の字が読みづらくて誤植したケースも、実は少なくなさそうだ。「闇心」は「関心」の誤りだろうが、山下氏が自身で入力してこういう誤りをするとは思えないから、手書き原稿を読み誤ったのだとしか思えない。