昨日の続きで単行本と文庫版初版の比較。
単行本の見返しは黄土色で、表紙見返しの左(遊紙)上部に北北東を上にした伊豆大島の略地図(8.6×10.1cm)その左下に東京湾・伊豆大島・伊豆半島の略地図(3.2×3.5cm)。この地図は文庫版には収録されていない。
扉は布目のあるやや厚い白紙で上部にカバー表紙と同じ文字が縮小されて淡い灰色で、左下に同じ色で小さく「角川書店」とある。
文庫版にはこのような扉はないが、口絵写真があり、表に単行本カバー表紙折返しの新聞紙面、裏に単行本カバー裏表紙折返しの新聞紙面が、単行本よりも拡大されて文字もやはりながら小さいがはっきりしており、また範囲も広くなって、例えば表紙折返しのでは切れていた号数も表「第23760号」と欠けるところがない*1。
1頁(頁付なし)は「一九五二年日航機「撃墜」事件 目次」の扉、2〜3頁(頁付なし)見開きが目次。
文庫版の方は1頁(頁付なし)に子持枠のある扉、標題は「一九五二年/日航機「撃墜」事件」と2行、なお奥付の子持枠の方は1行で数字以外にルビがある。鳳凰は翼と脚を広げ羽を銜える。3頁が目次の扉で単行本と同じ文字が明朝体で入る。4〜5頁(頁付なし)見開きの目次、単行本は右頁に8章めまで載せていたが文庫版は9章めまで。左頁は単行本は残り7章と1字下げで一回り小さく「あとがき 二三三」、文庫版は残り6章と一回り小さく「“小原院陽子さん”のこと 朝倉 摂 二六三/解 説 山前 譲 二六六」で、内容に出入りがある。ともに頁は半角漢数字。
単行本、4頁(頁付なし)、下部中央に縦組み明朝体で「装丁 岡村元夫」とある。文庫版の6頁は白紙(頁付なし)。
単行本5頁(頁付なし)は中扉で縦組み明朝体太字で標題、鍵括弧は全角。裏は白紙で7頁から本文で頁付*2がある。文庫版には中扉はなく、やはり7頁から本文で頁付*3がある。章題は単行本・文庫版とも3字下げ3行取りだが、冒頭、単行本は5行、文庫本は1行、余計に空けている。単行本は232頁まで、1頁18行、1行44字。文庫版は262頁まで、1頁17行、1行40字。
単行本、75頁は詰まっているが76頁は白紙で77頁が冒頭7頁(「「誤報」の偽装」)と同様に5行空白、3行取りで7章めの題「宣伝誌の編集長」がある。文庫版は86頁に9行本文があって(2行めが空白)余白は7行分なので目立たないが、確かに87頁、7章めの題「宣伝誌の編集長」の処理は冒頭の7頁と同様になっている。
図版、1つめ「もく星号遭難(毎日新聞社提供)」は単行本40頁上(6.0×9.4cm)、文庫版45頁上(6.1×8.0cm)、写真は文庫版の方が鮮明で、すなわち文庫版は単行本の左側(0.3cm分)と右側(1.9cm分)下部(0.8cm分)が切れているのだが、その分、拡大しているのである。2つめは単行本201頁「烏丸小路万里子とその部屋のスケッチ(画家浅木佐津子による)」、文庫版227頁「烏丸小路万里子(小原院陽子)とその部屋のスケッチ/〈画家浅木佐津子(朝倉摂)による〉」で、違いは若干の縮小したことと、仮名の「烏丸小路万里子」と「浅木佐津子」に実名を添えたことである。このスケッチは単行本の方が鮮明である。3つめは単行本211頁「烏丸小路万里子 甲府・湯村 仙峡ホテルにて」が文庫版237頁「烏丸小路万里子(小原院陽子)」となっている。縦長の写真2枚で文庫版は若干縮小しているがもともとあまり鮮明でない写真で、これはどちらがどうということもない。
単行本の233頁「あとがき」は箇条書きで、左下にやや小さく入る。括弧と数字は横並び。
(1)衆議院運輸委員会での「もく星号事故調査委」の項は議/事録から。
(2)小説の全体は「赤旗」(一九七二年二月十五日〜七三年四月/ 十四日)に連載したが、今回これに全面的に手を入れ/ て改稿した。
(3)したがって「赤旗」連載を底本にした文藝春秋社版/ (「松本清張全集」所収)はこれを廃棄する。
(4)小説部分の人名は架空。
「赤旗」連載の『風の息』は『松本清張全集48』(1983年7月25日第1刷・定価1800円・文藝春秋・547頁)まるまる1冊分で、文春文庫版は上中下3冊だった。この文庫版は未見。
- 作者: 松本清張
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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おことわり 『風の息』の冒頭「序詞」の部分は、/本全集第30巻に「『もく星』号事件の補筆」として/収録されております。ご了承ください。 (編集部)
とある。すなわち5〜17頁下段8行め「序詞」は再録(ダブリ)、『松本清張全集30』は『日本の黒い霧』、このことは出来れば後述。
とにかく「全面的に手を入れて改稿した」とあるのだが、非常に短くなっている。
文庫版にはこの「あとがき」はなく、改稿については文庫版266〜272頁、山前譲「解説」に説明されている。(以下続稿)