瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

遠藤周作「幽霊見参記」(08)

 昨日の続きで、『周作口談』改め『ぐうたら交友録』について。

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 さて、「既に夕暮れ」の「熱海をおり」た2人は、「五、六人」の「客引きたちが‥‥よってきた」のを「ウットウし」く思って、「閑静な旅館があるような気がし」て「東海道線のガードをくぐり、北側の山にむかう坂路をのぼりはじめ」ます。続く旅館の位置を示す記述は具体的ですので、抜いて置きましょう。『周作口談』44頁8〜12行め・『ぐうたら交友録』単行本57頁15行め〜58頁5行め・文庫版43頁17行め〜44頁3行め、

 線路を左にみおろせる崖沿いの路を歩いていると、向うに日の暮れた熱海の町と暗い海と燈|台*1\の/灯がみえた。曲り角に一軒、イキな作りをした宿屋があったので、我々はそこに泊ること|にし\た。
 それは宿屋というよりはむしろ、大きな別荘といったほうがいい家で、門を入ると玄関まで|石\段/があり、石段の右は竹藪になっていた。そしてこの竹藪のなかにやがて問題になる離れが|あっ\たの/である。


 この旅館の位置ですが、熱海駅の裏手の、熱海市桃山町の辺りでしょうか。地図を見てもつづら折りの道が幾つかあります。ですから「線路」が「左」に見えるという記述からすると南西に向いて歩いていることになります。そして鋭角に北東方向に折れるところに、この旅館はあったことになります。
 駅の近くであったことは、次の節、『周作口談』45頁13行め〜46頁2行め・『ぐうたら交友録』単行本59頁8〜12行め・文庫版45頁2〜5行め、

 時刻は十二時ちょっと前であった。私と三浦とは寝床で腹ばいになりながらクダらん話をし|て\い/たが、やがて、どちらからともなく寝ようと言いだし、灯を消した。灯を消すと向うの障|子に\竹藪/の影がうつるのがみえた。そして遠くから「二番線を上り東京行急行が通過しまあす|ウ」と\いう駅/員の声がきこえてきた。その声をききながら、私はウトウトと眠りに入ったので|ある。

との記述から察せられます。(以下続稿)

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 御嶽山の噴火については、落ち着いてから書こうと思っていたのだけれども、――昼間ではなく夜中だったら、土曜ではなく平日だったら、あと3週間遅かったら、と考え出すと恨めしい。しかしながら、自然は人間の都合で動くのではない。火山噴火のリスクについては、南九州の原子力発電所について議論になっていたけれども、……いや、外野が議論にしたがっていただけだったみたいな按配だったのだけれども、もし言われているようなことが起こったら、もうお終いである。そして、それは万年単位で確実に起こっているのである。

*1:『周作口談』は「灯台」。