瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山岸凉子『アラベスク』(06)

 さて、版によって同じ頁であっても収録位置がズレていたりしますので、まづ手始めにHC版(花とゆめCOMICS)と白泉社文庫版・完全版の比較をして、対照表に整理して見ました。まずは頁ごとの対照を示して置きましょう。
 HC版の位置を基準にしましたが、3つのうちでは『完全版』を初出に準じるものとして扱いました。カラー原稿が多色刷で再現されているのは『完全版』のみで、同じものを単色で収録している場合は等号(=)で繋ぎ、改めて単色で描き直している場合は矢印(→)でその旨を示しました。
 注や文字の配置についての異同は別に記すこととして、ここでは絵の違いについてのみ点検しました。*1

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花とゆめCOMICS『アラベスク』第Ⅰ部第1巻(1975年6月20日初版発行・1979年12月10日14版発行・定価360円・201頁)
・HC版5頁←『完全版Ⅰ』1頁(カラー)
 HC版は『完全版Ⅰ』のカラー原稿を白黒に描き直し、2人の背後の円はただの白丸。背景は真っ黒にして、上部のアラベスクに関する詩は削除、代わりに「アラベスク」の飾り文字に置き換えている。
・HC版6〜7頁見開き「主な登場人物の紹介*2
・HC版8〜9頁見開き←『完全版Ⅰ』2〜3頁(カラー)=『文庫版Ⅰ』4〜5頁
 HC版は『完全版Ⅰ』のカラー原稿を単色に描き直し、特に右頁の背景がカラー原稿では暗い岩壁と森であったのが黒になり、左頁からの星の流れの続きを書き入れている。
・HC版10頁←『完全版Ⅰ』4頁(カラー)=『文庫版Ⅰ』6頁
 HC版は完全版のカラー原稿を単色に描き直し。
・HC版11〜42頁=『完全版Ⅰ』5〜36頁=『文庫版Ⅰ』7〜38頁
・HC版43〜50頁=『完全版Ⅰ』37〜44頁(2色刷)=『文庫版Ⅰ』39〜46頁
 HC版45頁の左側、灰色の円が4つ書き足されている。
・HC版51〜81頁=『完全版Ⅰ』45〜75頁=『文庫版Ⅰ』47〜77頁
・HC版カバー表紙(カラー)=『完全版Ⅰ』77頁(カラー)
・HC版82頁←『完全版Ⅰ』78頁(カラー)=『文庫版Ⅰ』78頁
 HC版は『完全版Ⅰ』のカラー原稿を単色に描き直し。2月2日付(03)に言及した、白峰彩子のブログ「備忘録」の2010年03月22日「アラベスク第1部 完全版」に拠ると、初出時は吹き出しの中が真っ白で文字(ネーム)が全て抜けており、下部の「いままでのお話」のみ、ちゃんとしていたとのこと。『文庫版Ⅰ』及び『完全版Ⅰ』は「いままでのお話」はカットして、この下欄外には、右に正面を向いたノンナとその後ろに向かって左を向いたミロノフ先生に花をあしらったカットがあるのみ。ところがHC版ではここに5コマめがあり、右側に向かって右を向いた厳しい表情のミロノフと、人指し指を突き出した右手が描かれ、その背景として暗い背景に床に膝を突いて泣きながら俯くノンナと、やはり床に座って(姿勢はスカートのため不明)両手の先を床に付け、顔を斜めにノンナの方に向けるアーシャ、顔はのっぺらぼう。左側に、泣き声や不安な場合に使用される吹き出しがあって「………/………/………」とある。吹き出しはもちろん白で、3点リーダー×3×3行は詳細省略を表す。すなわち4コマめのアーシャ:「まって ノンナ わけを聞かせてちょうだい」と、次頁1コマめのアーシャ:「ねえ ノンナ それはちがうわ/ミロノフ先生は自分の面子のためにそんなことするひとじゃないわ」とあって、単行本ではカラー原稿をモノクロ印刷にして使用せずに新たに黒のみで描き直した際に、省略した「いままでのお話」欄に、ノンナが泣きながら事情を説明する5コマめを補ったのだが、その後、カラー原稿からモノクロ製版することになった折に、この5コマめは無視されてしまったのである。
・HC版83〜114頁=『完全版Ⅰ』79〜110頁=『文庫版Ⅰ』79〜110頁
・HC版115〜122頁=『完全版Ⅰ』111〜118頁(2色刷)=『文庫版Ⅰ』111〜118頁
・HC版123〜146頁=『完全版Ⅰ』119〜142頁=『文庫版Ⅰ』119〜142頁
・HC版147頁
 下部に花のカット「RYO.」のサイン、右下に横組み1行「アラベスク第Ⅰ部①おわり」とある。
・HC版149〜177頁「栄光のグリーンフィールド
・HC版179〜201頁「ハロー ヤングヤング
 これら2篇については、カバー裏表紙折返しの「作品かいせつ」に、

アラベスク(第1部)」昭和46年りぼん10月号より連載/開始。主人公ノンナの情熱が好評で、作者初の大長編連/載となった。「ハロー ヤング・ヤング」昭和44年りぼ/んコミック12月号に、「栄光のグリーンフィールド」昭和/45年りぼんコミック10月号にそれぞれ発表された作品。

と見えている。(以下続稿)

*1:2月21日追記】投稿時、この段落は第Ⅰ部第1巻の基本データの次にあったが、文体が入り乱れていることに気付いたので前置きを敬体に統一することにしてここに移動し、*による仕切を新たに挿入した。

*2:ルビ「おも・とうじようじんぶつ・しようかい」。