瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山本禾太郎「第四の椅子」(20)

讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(20)
 勝見かく路というのも筆名でしょうけれども、この人についても東三條氏と同様、家に座してネット検索している分には、何の手懸りも得られませんでした。
・勝見かく路「めぐる仲仙道」
 白井喬二の選評(50点・5位)

 ―勝見かく路氏の「めぐる仲仙道」は、いは/ゆる夕刊物の領域を狙つたのであ/らうが、出て來る人物が女賊、掏/摸、破落戸、惡浪人といふ風に、豫/定の如く一通り勢揃ひしてゐる。/余の好みとしては、今少し興味の/善所を狙つて貰ひたいと思ふ。


 吉川英治の選評(55点・8位)

‥‥八篇のうちでは「ぐる仲仙道」が私に一番劣って見/えた。才筆ではあるが組織に無理/がある。主人公の典型も甚だ從來/のもので筋の複雜しすぎてゐる所/から二十回のうちにすでに作家の/筆に依頼しきれぬあぶなげが見え/てゐる。‥‥


 12月1日付(14)に引いた総評に続く部分です。この書き方からも120回分以上書き上げての応募作はあったのかどうか、基本的に20回分のみで審査していたことが察せられます。
 甲賀三郎の選評(60点・8位)

 「めぐる仲仙道」
     勝見かく路君
 達者な作者である。但し些か惡/達者に過ぎ、本篇は數限りなき登/塲人物の目まぐるしさと、あわた/だしき筋の交錯とに過ぎない。惜/しかつたと思ふ。


 評価は三上氏を除いて4氏が最下位に置いている(尤も、白井氏は4作品を最下位にしている)のですが、文章は一定の評価を得ています。
 寺尾幸夫の選評(60点・8位)

八、「めぐる仲仙道勝見かく路作/舊來の講談の跡を追つたもので人/物の點綴はいゝが新味に乏しい。


 三上於菟吉の選評(59点・7位)

めぐる仲仙道」 ヘタな活動寫眞/ のやうな所あり、心意氣なし

 要するに讀賣新聞や選者たちの求める作風ではなかったということが大きかったようです。(以下続稿)