瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

タクシー幽霊(1)

 当ブログはとにかく毎日続けることにしていて、旅行や宴会などで帰宅後投稿出来そうにない場合、前以て投稿して置くことにしている。同じ主題の記事を延々続けたこともあるけれども、数回続けたり連日替えたりと云ったことが多い。同じことを続けると飽きる、と云うこともある。用意が間に合わないと云うこともある。しかしそれ以上に、図書館の返却期限が大きいのである。返却前に慌ててメモを取って、投稿するときには手許にその本がない、等と云うことが多い。だから、続きの構想はあっても俄に書けない。しかしそれでも(1)を上げて置くことで、動機付けにはなる。それから何の脈絡もない主題が並ぶのは、図書館に行くと、持ち前の貧乏性から貸出冊数の制限まで借りてしまうのである。それで、目当ての本が貸出中で棚にないときなど、他の棚を回って面白そうだと思って借りて、大抵は何もせずに返してしまう。しかしそれでは初めから借りなきゃ良かったことになるから、余裕があれば一応メモくらいは取って置こうと思うのだ。結果、何だか関連の分からない並べ方になる。
・伊勢正義『タクシー裏物語 現役ドライバーが明かすタクシーの謎平成20年7月14日第1刷・定価1200円・彩図社・223頁・四六判並製本

タクシー裏物語―現役ドライバーが明かすタクシーの謎

タクシー裏物語―現役ドライバーが明かすタクシーの謎

・文庫版『タクシー裏物語 現役ドライバーが明かすタクシーの謎平成22年9月17日第1刷・平成22年10月28日第2刷・定価590円・彩図社・223頁*1
タクシー裏物語―現役ドライバーが明かすタクシーの謎

タクシー裏物語―現役ドライバーが明かすタクシーの謎

 文庫版は未見。書名は奥付に拠る。カバー表紙及び1頁(頁付なし)扉では、副題の方が先にある。
 この本を借りたのは、8月7日付「消えた乗客(1)」を準備したときに、乗客が消えた話と云えばタクシーなので、何となく自動車関係の本が並んでいる棚を眺めて、手にしたのである。なお、題を「消えた乗客(2)」にしなかったのは、「タクシー幽霊」と云うのが小学生か、或いは中学生だったか、私がこの手の話を意識したときに、周囲でこの話に付けられていた名称だからである。
 また、山岸凉子の漫画「ゆうれいタクシー」を、既に1月11日付「山岸凉子『ゆうれい談』(3)」に取り上げている。
 著者については、横組みの奥付の上部に小さく、

著者略歴
伊勢正義(いせ まさよし)
1964年、千葉県生まれ。
大手タクシー会社の現役タクシー乗務員。
現在も乗務の傍らで情報蒐集及び執筆活動中。
仕事のやりがいを最も感じる瞬間は、狭い車中だからこそ聞け/る貴重な話をお客さんから聞いているとき。*2
ブログ http://ise-masayoshi.cocolog-nifty.com/blog/

とあり、1行空けて「mailアドレスはこちら」とメールアドレスも示されているがこれは省略する。ブログ「伊勢正義 玄人のひとりごと」は、本書刊行前後に記事が10本投稿されて、その後放置されている。著書も、名前を変えて活動しているのかも知れないが「伊勢正義」名義ではこの1冊のみである。この本では、タクシー乗務歴は5年、営業許可区域が「東京23区・武蔵野市三鷹市」の営業所に勤務している*3
 2〜6頁「はじめに」、7〜11頁(頁付なし)「目次」はAmazon詳細ページのなか見!検索にて閲覧出来る。
 13〜92頁「第1章 タクシー乗務員の事件簿」は14の節に分かれるが、11節め、76〜79頁「都市伝説、タクシーに乗る幽霊」として、この話が取り上げられている。76頁、1行めに3行取り2字下げで明朝体太字の題があり、2行めから本文、2〜8行め、

 タクシーに乗っていた女が墓地のあたりで消え、シートがじっとり濡れていた……。
 よく語られるタクシーの怪談である。
 実際に営業所内で同じような体験をした乗務員がいた。今年で還暦を迎える下野さんである。
「伊勢ちゃん、信じてくれるよな。本当に気付いたら消えてたんだよ」
「夢でも見たんじゃないですか?」
 彼が小心者だということを営業所で知らない者はいない。幽霊を乗せたというのも初めて/のことではないのだ。私は乗せたお客さんが消えたなどという幽霊話は信じていない。疲れ/ていて幻覚でも見ていたのではないかと思っている。


 ところが、その「数日後」、伊勢氏は「午前3時30分」に「激しい睡魔」に襲われて「世田谷公園の脇に車を停め」て「仮眠」して「アラームの音で目を覚ま」すと、後部座席に女性が乗っている。「小雨」の中、「空車タクシーが見つから」ず「困り果てていた」ところ、「空車表示の」伊勢氏の「タクシーを見つけ」て「ドアをノックし」起こそうとしたが起きてくれない。ところが後部座席のドアに「何気なく手をやると」開いたので乗り込み、「自分も」疲れていたので「眠ってしまったという」のである。「ロックしたつもり」だったが「強い眠気のせいか忘れていた」らしい。
 78頁3〜5行め、

 その日、帰庫してから乗務員歴30年の大ベテラン永田さんにこの話をした。柔道黒帯の彼/は豪快に笑いながら聞いてくれた。そして興味深い話を教えてくれた。
「その逆が幽霊を乗せた話だよ」


 すなわち、タクシー乗務員には「突然、睡魔に襲われたりすることがある」が、12行め「そんなとき、客が勝手にドアを開けて乗り逃げしても気がつかないってことだよ」、16行め〜79頁1行め「そうして客が降りたことに気付かないまま走ってしまうんだな。その後しばらくして話し/かけても返事がない。ルームミラーを見ても姿が映っていない。乗務員はまさか途中で降り/られたとは思わないから、走行中に突然、客が消えたという話になるんだよ」。さらに、睡魔の原因としては「ナルコレプシーという病気が原因になっているケースもある」とする。
 79頁5〜8行め、

「ま、これが幽霊騒動の正体だよ」
「でも、座席が濡れてるっていうのは?」
「単なる雨だよ。雨が降ってるときに傘を差していなかったら洋服が濡れるじゃねえか。だ/いたい超常現象なんてものは科学で解明できるものばかりなんだよ」


 伊勢氏はこの説明に「満足していた」のだが、11〜15行め、

 ところが、数日後にまた営業所で「乗せた女性が消えた」と大騒ぎしている人がいる。先/日、*4永田さんから聞いた話をしてやろうと思って近づくと、幽霊騒動の張本人は誰であろう/永田さん本人だった。
「絶対に間違いないよ、気がついたら消えてたんだよ」
 私はずっこけそうになった。

と云う衝撃(?)のオチになる。しかしここは、もう少し頑張って、永田さんのような人物がタクシー幽霊を信じてしまった程の体験とはどんなだったのか、詳しい状況を聞き出して、「科学で解明できる」可能性を2人で探って欲しかった、と思うのである。
 93〜162頁「第2章 誰も書かなかったタクシーの秘密」17節、163〜218頁「第3章 タクシー乗務員のススメ」13節*5
 219〜223頁「おわりに」、末尾(223頁10行め)に下寄せで「2008年6月10日 伊勢正義 」とある*6。その裏が奥付。広告類はない。(以下続稿)

*1:12月19日追加。

*2:12月19日追記】文庫版は1行め「著者紹介」、2行めの著者名読み(いせ・まさよし)、4行め「現役」なし、6〜7行めの改行位置は「‥‥聞ける/貴重な‥‥」、8行めのブログのアドレス及び、mailアドレスはなくなっている。

*3:12月19日追記】文庫版の最下部、ゴシック体横組みで「本書は平成20年7月に刊行された「タクシー裏物語―現役ドライバーが明かすタクシー/の謎―」(彩図社)を再編集し、文庫化したものです。」とある。

*4:12月19日追記】文庫版はここまでで1行。これまで縮刷かと思われるくらい同じ行配りだった(単行本と直接比較はしていない)が、この行は読点を半角にして詰めている。従って次の行も「永田」から「永田」までで1行。

*5:12月19日追記】文庫版は219頁まで。

*6:12月19日追記】文庫版は220〜223頁「おわりに」で、末尾(223頁4行め)に下寄せで「2010年8月10日 伊勢正義 」とある。