瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小林多喜二『蟹工船』の文庫本(2)

新潮文庫547『蟹工船・党生活者』(2)
 ②五十九刷のカバー表紙は白い波濤の暗い荒海に漂う船の舳先で、鉢巻をした人物が5人働いている様を描いた油彩画風の絵で、遠く水平線に大きな汽船が描かれ、その向こうの空は紅く暗い。文字は明朝体横組みで上部に黄色で「蟹工船・党生活者」と標題、その下に白抜きで著者名。下部中央を長方形(0.8×2.5cm)に黒く潰して白抜きで「新潮文庫」としているのは白っぽい波濤と紛れるからであろう。カバー表紙折返しには右下に明朝体縦組みで「カバー 上野泰郎」とあって他は余白。上野泰郎(1926.1.6〜2005.8.11)は日本画家。
 ③のカバー表紙は、カバー表紙折返しの右上に横組みで著者の写真と略伝、右下に明朝体縦組みでやや小さく「カバー図版 初版本『蟹工船』(戦旗社版)より」とある(二重鍵括弧も半角)が、標題の文字や使用している色は一致しない。船の上に設置されているクレーンや煙突などのシルエットが戦旗社版の表紙から背表紙を経て裏表紙に至る装幀に一致する。橙色地に白く抜いてある鎌と槌のシンボルも戦旗社版にはないが、何故か通常の組合せ方(☭)とは異なり、左右反転している。
 ここで複数冊見ている③のカバーについて、先に確認して置こう。
 ③九十七刷・九十九刷・百十刷・百二十刷のカバー、裏表紙折返し以外は一致。但し私の見た百十刷は裏表紙折返しが切除されている。
 カバー裏表紙折返し、横組みで上部に横線2本に挟まれて「|新潮文庫 日本の近代文学|」とあって、以下、1行の左にゴシック体でやや小さく著者名、中央から右に掛けて標題が示される。横線の長さが九十七刷(6.0cm)と九十九刷・百二十刷(5.4cm)と異なり、2本の間も九十七刷(0.7cm)と九十九刷・百二十刷(0.6cm)と異なる。その縮小されて最後(九十七刷28人め、九十九刷・百二十刷29人め)に挙がる「室生犀星  杏っ子」と最下部の「カバー印刷 錦明印刷  デザイン 新潮社装幀室」までの余裕が、九十七刷は1行強しかなかったのが、九十九刷・百二十刷では4行弱になっている。
 九十九刷と百二十刷は字の大きさも同じでともに29人を挙げるが、九十九刷には15人めに「高橋和巳 悲の器」があったのを百二十刷は4人め「梅崎春生 桜島・日の果て」に代えている。九十七刷は28人で、九十九刷では24人め「林房雄  息子の青春」が追加されている。(以下続稿)