瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

高橋源一郎『武藏野歴史地理』(1)

 同姓同名の人物に、作家の高橋源一郎(1951.1.1生)と甲子園に選手と監督として出場している高橋源一郎(1979.10.2生)がいる。尤も、後者のことは今日まで知らなかった。もちろんここに取り上げる高橋源一郎は今では埋もれてしまった恰好で、Webcat Plusでは「高橋源一郎(1877-1961)」と生年を誤っている。国立国会図書館では生歿年を表示していない上に、作家の高橋源一郎と混ざって出て来る。どうにかならないものかと思うのだけれども。
 それはともかく、初版の武蔵野歴史地理學會版(4冊)と復刻版の有峰書店版(9冊)を揃えるのが困難なので、飛び飛びに借りて要点を控えて置こうと思っていた。どうも、今、私の手許にある分で大体のところは分かりそうに思うのだけれども、やはり見ていない部分について少々不安がある。よって、夏にでも1ヶ月半掛けて全冊借りてみることにした。全冊同時に手許に置くことは出来ないが、初版4冊と復刻版4冊を並べ、それから復刻版9冊を手許に揃えることは出来そうだ。
 その上で再び取り上げようと思うので、直ちに続稿を掲出して行く予定ではないのだが、今回まづこれだけを投稿して置こうと思ったのは、取り紛れて本書のことを忘れないように、いや、取り上げる余裕がなくなったとしても課題として残して置くべく、敢えて復刻版や続刊についての記述のみ、記事にして置くこととしたのである。
 さて、復刻版であるが、第一册には解説等の追加がない。恐らくなるべく原態を保存しようとしたためであろう。そういったものは、復刻の機会に続刊された第五册に、附されている。
高橋源一郎『武蔵野歴史地理 第五冊』昭和四十七年六月二十日印刷・昭和四十七年六月二十五日発行・定価二、五〇〇円・有峰書店・一〇+一八+388頁・四六判上製本
 初版に似せた扉に次いで「巻 頭 言」がある。ともに「昭和四十七年六月」付である。一頁2行め~七頁、前島康彦「高橋源一郎先生と『武蔵野歴史地理』」に本書と高橋源一郎(1881.11.14~1961.4.23)について簡明な解説がある。ここでは復刻版と続刊に関する箇所を抜いて置こう。
 二頁13行め~三頁6行め、

‥‥。終戦ののち、人々が武蔵野に思いを馳せは/じめた頃には、この四冊は、既に稀覯本となり入手困難となっていたということはいう迄もない。し/【二】かし、私家版の故に幸したことは紙型が著者の御遺族の方々によって完全丁寧に保存されており、再/び世に出る途が開かれたということである。
 更に驚くべきことは、既刊四冊のほかに、つづけて世に贈るべく用意された成稿に近い著者高橋先/生の労筆が大量に保存されていたことである。それが今回、第五刷より第九冊までの続刊五冊となっ/たものであるが、私がその遺稿ファイル二十四冊を見て感動したのは、この続刊五冊のほか更に又、/再続刊と見られる分の原稿が、未定稿のまま保存されていたのである。‥‥


 どうも、この「再続刊と見られる分の原稿」が追加されて分量が膨らんで行ったらしいのである。それから六頁7~10行め、

 先生は『武蔵野歴史地理』の大著のほかに二、三の著作があるが、なかんずく『東京府民政史料』/一冊は、先生が東京府の嘱託としてその需めに応じて府下の民政、産業経済その他を、主として古文/書を基礎として論証考拠した貴重なもので、『武蔵野歴史地理』著作の副産物といってよいかもしれ/ない。この著書も今日では稀にしか見ることができなくなった。

とある『東京府民政史料』は最後、第九册の後半に収録されている。当初収録予定になかったのが収録に至った事情については「東京府民政史料」の前島康彦「序」を見るときに、見当を述べることとしよう。
 八~一〇頁、高橋源太郎「父の想い出」は家族から見た高橋氏及び『武蔵野歴史地理』刊行と生前続刊が実現しなかった事情について述べている。――この子息についても検索すると「高橋元太郎」の誤入力扱いされてずらずらと検索結果が表示されてしまう。「高橋源太郎」に限定して検索すると明治・大正の書籍の著者がヒットする。もちろん高橋源一郎の息子ではないが、明治の高橋源太郎と大正の高橋源太郎が同一人物かどうか、俄に分からない。どうも別人らしい。とにかくどのような人物なのか、直ちに見当を付けるだけの手懸りがないのだけれども、八頁4行め「第一巻が出版されたのは確か私が小学校に入るか入らない前後であった」と回想しているから昭和3年度に満7歳と云う見当になろうか。そうすると大正10年(1921)か、大正11年(1922)生と云うことになる。大切に保管してきた資料は復刻版・続刊刊行後はどうなっただろうか。
 さて、背表紙及び扉に「八王子地方」の副題があるように、本書には「第九編 八王子地方=八王子市及び南多摩郡西部」を収録し、ほぼ現在の八王子市域に一致するが由木村は収録されていない。由木村の合併先として八王子と争った日野町(現・日野市)が収録されている。(以下続稿)