瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

『「超」怖い話』(2)

 このシリーズについては Wikipedia「超」怖い話」項が詳しく、2015年5月31日を最後に更新されていないので幾つかのページが閲覧出来なくなっている「「超」怖い話 公式ホームページ」に更に詳しい情報があるので、ここでは竹書房文庫の再編集版3冊を元に、勁文社版との比較などをして置きたい。
竹書房文庫 HO-25 安藤君平『「超」怖い話†(クロス)』2005年10月6日 初版第1刷発行・定価552円・203頁

 カバー裏表紙の中央やや上に2本の濃い灰色の線(3.5cm)に挟まれた間(8.2cm)に明朝体横組みで以下の紹介文がある。

懐かしいと感じる方もいらっしゃるだろうが、いざページを開けばそ/の新鮮さにガーンとなり、2ページ目には転がるようにあなたはのめり/込んでいるだろう。1990年代に産声をあげ、さまざまな変化を遂げな/がら闇を生き続けてきた怪談『「超」怖い話』。その原点を生み出し/た安藤君平が、ついにここに帰ってきた。もはや幻となったシリーズ/第1巻収録の23本を完全再録、さらに本書のために書き下ろした新/作14本を加え、新たな傑作として21世紀に降臨する。もはや言うま/でもないが、すべて実話である。淡々と日常の出来事のように恐怖を/紡ぐ著者の語り口はとてもクールだ。だからこんなにも怖いのである。


 安藤氏は「シリーズ第1巻」にのみ参加していてケイブンシャブックス版は「安藤薫平編著」、勁文社文庫21版は「安藤君平編著」と編著者となっている。薫平も君平ももちろん同一人物で安藤尚彦(1963.5.30生)の筆名である。
 ケイブンシャブックス版には57話、勁文社文庫21版には53話収録されている。そして竹書房文庫版の37話のうち14話が新作で23話が勁文社版から「完全再録」されたもの、と云うことになるが、6~9頁「目 次」の最後、9頁6~7行めに小さく、

※本書の実話怪談は、勁文社より刊行された『「超」怖い話』(一九九一年刊)の安藤君平氏蜂巣敦氏担当/ 執筆稿に新たに安藤氏が書き下ろした新作十四編を加えて編集したものです。

とあるように、23話のうちに蜂巣敦の執筆分が含まれている。その内訳と新作を加えた事情については2~5頁「はじめに」に、本書の成立事情とともに説明されていた。2頁5行め~3頁5行め、

『「超」怖い話』が誕生したのは一九九一年のことである。
 早稲田のとある焼き肉屋さんで、樋口さんと焼き肉を食べながら、伝聞ではなく、/ソースの確かな怪異譚を集めた本を作ろうじゃないかと、盛り上がったことがすべ/てのはじまりだったと記憶する。
 体験者から直接話を聞く。もしくは話のソースが明らかなものを選ぶ。どこかで/聞いたような話はなるべく排除する。不思議なことは不思議なままとし、わかりや/すい説明などは一切いれない。
 そんな基本事項さえ守っていれば、あとは各人、何を書いても自由。【2】
 といった緩やかな取り決めのもと、樋口明雄さん、加藤一君と私の三人で『「超」/怖い話』の執筆は開始された。
 また、私の大学時代からの友人・蜂巣敦君にも特別にお願いして2本の怪異譚を/寄稿してもらった。
 その後、訳あって、私は、第一集をもって本シリーズの執筆から退いたが、‥‥

とあって、21話が安藤氏執筆分、2話が蜂巣氏執筆分であることが判明する。いや、この点についてはちょっと気になるところもあるので後述しよう。
 安藤氏が「本シリーズの執筆から退いた」事情については198~203頁「おわりに」の、199~200頁に説明がある。199頁9行めから200頁10行めまでを抜いて置こう。

‥‥、私は霊に関する仕事を行うと、体調が悪くなるという因果/な体質だった。夜は金縛りにあい、油断すると枕元に何ものかが立ったりした。
 単なる自己暗示によるものだったかも知れないが、しんどいものはしんどい。/『「超」怖い話』執筆時も体調を崩してしまっていた。
 これは続けないほうがいいな……。
 密かにそう思っていた。実際、語りたかった事は、一作目ですべて出し終えてい/たし、それゆえの満足感もあった。ムリに続編を作るモチベーションもわかなかっ/【199】た。
 実は、本を執筆するために怪異譚を集めるという作業自体にもなじめなかった。
 もともと本書に収録されている話は、ごく普通に暮らしている中、なんだか知ら/ない間に私の周りに集まってきたものばかりである。
 ふとしたはずみに日常に紛れ込んできて、それまで当たり前に見えていた情景を/いっぺんさせてしまう怪奇現象の数々。だからこそリアリティも生じるし、語るべ/き価値もあると思っていた。
 無理に数をそろえる気はさらさらなかった。
 つまるところ、当時の私は、怪談を収集し、執筆することを仕事にしたくもなか/ったし、趣味にもしたくなかったのだろう。


 私は「霊に関する仕事を行」ったことがないので自分が「因果な体質」かどうか分からない。いや、体質なのかどうか。周囲にもそんな「仕事」をしている人はいないので、それで祟りみたいな目に遭うとか云うことになるものだかどうか、――やはり常識的に考えて「自己暗示」なのだろうと思うばかりである。
 しかし、無理に売物にするために話を集めるのを拒む気分は、私も経験したことがあるので分かる気がする。いや、私の場合は売物にするのではなく、本人としては「研究」と云う心積もりの道楽だったのだけれども、それが続けられなくなったのである。少々長くなるから、詳しくは別の機会に述べることとしよう。
 そんな安藤氏が記念すべき、2行め「『「超」怖い話』第一集の編著作者」として、8行め「クレジット」された理由は、198頁に述べてある。6~8行め「当時はやりだった「○○怪談/愛好会」といった適当な著作者団体名を名乗るより、個人名をきっちり明記した方が/、読者にリアルな印象を与えられるだろうということで」4~5行め「特に私が主導的/な役割を果たした訳ではな」いのに、10~11行め「たまたま執筆本数がもっとも多かったからと記憶し/ている」とのこと。
 新作執筆と竹書房文庫版刊行の経緯については長くなったので次回に回そう。
 「おわりに」に続いて、1頁白紙があって横組みの「*初出について」に、1行分空けて「 」で括って23話の題を列挙し、また1行分空けて、25~29行め、

以上の23作品は、1991年に勁文社より刊行されました『「超」怖い話』/(安藤君平・編著)に収録されていた著者担当執筆原稿を改訂し再/録したものです。
なお、「あなたの子供になって、生まれたい……」「お札の霊験」の/2作品は蜂巣敦氏による寄稿です。

と説明する。蜂巣氏の「寄稿」を別記せずに「著者担当」分として扱ってから、改めてその旨断ると云う書き方が少々引っ掛かる。大したことではないかも知れないが、勁文社版を見た上で改めて検討することとしよう。しないかも知れないが。
 さらに1頁白紙があって「●著者紹介」、その裏に奥付。書名は奥付に拠る。(以下続稿)